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nobody   作者: 福郎 犬猫
1章 少女は世界を知る
23/86

剣士と魔術士と7

あいつらは一体何なんだ


俺はあまりの驚愕に立てずにいた

女のガキが放つ青白い光に吹き飛ばされた

あれは何なんだ


あの女は魔術師のようだが、あんな魔術見たことも聞いたこともない

あの女は俺に切られる寸前まで何も気づいていなかったはずだ

戦争で何人もの魔術師を手に掛けたが、魔法陣を構成せずに魔術師を使う人間を初めて見た

それにあれは本当に魔術なのか


それよりも男のガキの方だ

あいつもおかしい

弱いはずなのに弱かったはずなのに

女を守った時の動きはなんだ、まるで別人のようだった

今まで手を抜いていたというのか、それに何の意味がある


いつか自分は戦いの中で死ぬと思っていた

それで良かった。自分より強いやつに殺されるならなんの文句となかった


だが目の前の男は違う

俺よりもまだ弱く見える。簡単に殺せるはずだ

でも

この男はもう目だけではなく、完全に人を殺す顔をしていた

人を殺すと決めた顔だ、こいつは人を殺すことを何とも思っていない

今日初めて人を剣で傷つけたただのガキのはずが


初めてだった

戦場で思考を巡らせることが、今までは目に映る敵だと思った者を切るだけでよかった

今はこのあべこべの男に俺は戸惑っている


ここまで経って冷静さを取り戻し始めた

あの動きの理由はわからないが、速かっただけだ。目でさえ追えるなら、こいつを切れる


ガキがいつ来てもいいように、立ち上がって剣を構えた

だが一向にこない、こいつは剣を持った手を前に出して反対の手を見えないようにしていた


魔術だ

そう思っても奴のところには行かない

少しでも隙があれば俺は死ぬと理解していたからだ

多少の魔術なら捌けるはずだ


そうするとガキの周辺が霧に覆われた

次第にそれは広がっていき俺をも飲み込みだした


目で判断出来なかったが、気配は分かる

それに安堵するとガキがこちらに向けて走り出したようだった

この程度なら対応できると感覚を研ぎ澄ませて俺も構え続ける


途中から地を蹴る音が大きくなった

先程と比べても更に速さが増した

その瞬間に俺は気配を察知して、奴が来るであろう場所に剣を置く


ガキの姿を捉えた俺は勝利を確信した

視界に血しぶきが映る

勝った


手応えがなかった、切った感触がない

そう思った時に力が抜けて、その場で倒れ込んだ

血しぶきは俺の物だとそこで理解した


霧が晴れていく

俺はまだ生きているらしい、握っている剣を見ると折れていた 

切られたのでなく、力だけでへし折られていたようだった


霧の中からあいつが出てくる

様子がおかしい、胸を抑えて座り込んでいる

苦しそうに歪む顔の中にまだ俺に対する確固たる殺意があった


ガキは胸を抑えながら、苦しそうにしてそれでも俺のところにゆっくりと近づいてきた

俺の体は動かなかった、血を出しすぎたようだ


俺は死ぬのだろう

そう思ったとき、思考が巡る

こいつは結局何者だったのだろうか

自分より弱い剣士、だが得体のしれない剣士だ。そんな男に殺されるならそれも一興だ

俺は俺を殺そうとするこいつの顔を見続けた

最期に俺を殺した相手の顔を見ることが出来る、何て贅沢な死に方なのだろうか


ガキがすぐそばまで来ていよいよかと思ったとき


「そこまでだ、全員動くな」

その声が場内に響き渡る

騎士が乗り込んできたらしい

その悔しそうなそれとも絶望しているような顔を見て

確信した

どうやら俺は死に損なったらしい





私達の作戦はこうだ

朝にラウルくんがヴェストの街を出て、近くの村に待機している騎士と接触する

ベルトラン隊長たちの動き次第では、ガスパール隊長が動いてくれいるはずだ

次に私が日暮れと同時にこの街の中心にある悪趣味な城に火を放つ、この城は中に入ることは難しくともこの街の観光スポットなので近づくだけなら容易い

騒ぎを起こした後にフェリシアちゃんが、闘技場の観客席から魔術を放ち天井を崩す


作戦というにはお粗末すぎる内容に自分でも笑ってしまう

特に最後のフェリシアちゃんに関しては完全に彼女任せだ、観客席にはお金さえあれば入れる今回の資金は潤沢なのでそこまでは問題ない

そこからは時間稼ぎに徹する予定だが、どこまで持つかは彼女次第だ 

騎士団が来ることも、テオくんが作戦まで生きていることも全て希望的観測に基づくものだ

こんな作戦がそう上手く行かないことくらい自分でも分かる

でも縋るしかない。若く幼い彼らを無事に返すためには


作戦は上手く行ったのだ、ラウルくんが騎士団を連れてきた希望通りガスパール隊だった。そしてマティアス君もいることからベルトラン隊長が動いてくれいることが分かる


後はあの二人が無事かどうかだ

それをただ願い、ガスパール隊長と共に闘技場を目指す

闘技場に来て、光景に困惑する

横たわるフェリシアちゃん、血まみれで倒れているフォルカー、そしてフォルカーに向かってゆっくりと歩くテオくん


それを気にせず、ガスパール隊長が叫ぶ

「そこまでだ、全員動くな」


その言葉に誰も反応しなかった

テオくんはなおもフォルカーに近づいていく

私は彼に駆けつけて、静止する


「テオくん、もう大丈夫だから」

テオくんはやっと私達に気付いたようだ

その時のテオくんの顔は絶望に染まっていた


それに戸惑いながらも、動きを止めた彼を置いておいてフェリシアちゃんの元に行き安否を確認する

彼女は気を失っているだけのようだ

息もしており、目立った外傷もない

二人共無事だった、その安堵により体から力が抜けてしまいその場に座り込んでしまった


「お前の部下は優秀だな」

ガスパール隊長が私に声をかける

「ええ、自慢の部下ですから」 

その答えにガスパール隊長は軽く笑みをこぼし、部下に二人の治療とフォルカーの治療と拘束を命じた


フォルカーに関しては何とかなった、後はミッテランを残すのみだ


ガスパール隊長と共に外を出る

消火が済んだ居城の前に行くとミッテランが騎士と揉めているようだった 


「お前達、一体どういうつもりだ」

「如何なされたミッテラン殿」

ガスパール隊長がミッテランの前に出た

「お前達の仕業だろう、何を考えいる」 

「それにしても不幸中の幸いですな、この火事と地盤沈下が重なったといえ、非番の騎士がたまたまこの場にいるとは」

「それも全てお前らの仕業だろうが」

「何をいいます、彼女がいち早く事態に気づいて救助活動をしたことで死者はおろか怪我人すらほとんどいなかったのですよ」

ガスパール隊長が私を指差す

「私も驚きました。恋人と二人で観光に来ていたら、ミッテラン殿のご自宅が燃えているですもの」

「私もたまたま任務で近くの村に駐屯していたことで、彼女の恋人から助けを求められて何とか駆けつけることが出来ました」 

二人してあることないことを好き勝手に言ってもミッテランは強く出来ることが出来ない

騎士を街に入れてしまった時点で彼に打つ手はない

今まで彼が好き勝手に出来たのは、貴族の助力もあるがそれはあくまで騎士をこの街に入れなかったことにある

今回で被害調査という名目でこの街を調べる大義名分が出来た

この街の塀が瓦解した今、彼に成す術はない

ミッテランは悔しそうにしながらも私達に礼を言ってこの場を離れた。恐らく見られたくないものを隠しに行ったのだろう、私達の目的は別にあることも知らずに


もうすぐ夜が明ける、この苦しくも長い一日が終わり月が沈むことで明日が来たことを告げる





目が覚めたら、テオがいた

これは夢なのだろうか、椅子に座って寝ている彼を触ると温かく、彼が生きていることが分かる

それがたまらなく嬉しかった

バイルの時は彼を一人で行かせたことを後悔していた。だから今回こそさ彼の隣で戦いたかった

だからフォルカーを前にしても恐怖はなかった

最後の記憶はフォルカーに斬りかかられていることだ、きっと彼が助けてくれたのだろう

そのことに嬉しく感じると同時に悔しさが溢れ出る

私はまだ彼に並ぶことが出来ていない、自分からフォルカーの前に出ても結局彼に助けられてしまった


「泣いているのか」

テオの声が聞こえた、彼が心配そうな表情で私を見ている

「違うよ」

何が違うのか自分でもわからない、現に私の枕は濡れているのだから

でもこれを認めて、彼に慰められるわけにはいかない

ノックをしてヨランダさんが入ってきた

「二人共調子はどう」

「俺は大丈夫だ」

「私も」

「やだどうしたて、泣いてるのフェリシアちゃん」

「泣いていないです」

彼女は優しい顔で私を見ていた

「そっか、ごめんね」

といって彼女は立ち去った


しばらくテオと二人の時間が出来た

二人共何も話さなかった、話したいことはいっぱいあったはずなのに悔しさがそれを邪魔する


そんな私にテオが私の頭を撫でた

心地良かった

優しい彼の表情に私の瞼は重くなる、必死に抗おうとするが意識が遠のいていく


次に起きた時には、テオがいなかった

驚いて起きた私はこの部屋が昨日泊まった宿とは別の部屋ということに気付いた


部屋を出て少し歩くと人の話し声が聞こえて、その部屋を除くと

調査隊の皆がいた

テオ、マティアス、ヨランダさんにラウルさんそれを見てようやく作戦が上手く行ったことがわかった


フォルカーはやはりテオが撃破したそうだ。フォルカーの命は一時危なかったそうだが、一命を取り留めたようだ

今後は帝都に送られて、事情聴取をするらしい


ミッテランについては今は罪に問われることはないらしい。その代わり騎士の常駐をする方針のようで、今後は好き勝手ができないようにことを運ぶ


ヴェストの街については、不法なカジノや闘技場は閉鎖され取り壊すとが決まっているが、他のことについては特に手を加えないようだ

その理由を聞くと、今この街にいるのはガスパール隊だけなので一度王都に持ち帰って協議をするらしい


今回の結末を聞き終えると、日が沈み初めていた。私はそうとう長い時間眠りについたようだ。皆が言うには唯の気疲れと言われたが、本当にそうだろうか


夕食は5人、皆で一緒に食べることになった

ヨランダさんが大量のお酒を頼んで酔っ払ってマティアスに絡んでいた。

それに更にラウルさんも加わり、マティアスを心配するがそこに加わる勇気は私になかった


テオがいないことに気付くと彼は一人で離れた席にいて、私達を眺めていた


「どうしたの」

「今回は疲れたよんだよ」

彼は三人を見て言った

「今回も頑張ったもんね」

彼は笑っていたが、その表情はどこか悲しげな感じがした

「二度とあんなことはするな」

「あんなことって」

「自分の命を軽んじることだよ」

それを聞いた私に怒りの感情が広がる

「それ、テオが言うの。バイルの時も今回もいつも一人で行って」

テオは悪くない

バイルのときも今回も仕方がないことなのは分かる

「しんどいならしんどいって言ってよ。私ってそんなに頼りないの」

彼への怒りではない。彼にいつまでも頼りきりで、彼の本音を話してもらえる自分に対してだ

「そうだな、ごめん」

テオが謝った

テオはこれ以上このことについて話す気がないらしい

それが自分の頼りなさが浮き彫りになっているかのようで悲しかった


その後私達が話すことはなかった

テオは先に宿に行き、私はみんなといた


次の日馬車に乗って帰る

皆も私達の様子を察してか口数が少なかった


彼は悪くないのだ

上手くいかない自分に苛立って、テオに当たったんだ

王都について、二人になったら彼にちゃんと謝ろう


そう決意した私は王都に到着するのを待った

王都に付き場所が止まると違和感に気付いた

場所の周りを騎士が過言だ

その中でも最も若い人が隊長かのように騎士たちに指示をしてこう言った


「テオ・クレマン、お前に剣の残党に情報を密告した容疑がかかっている。直ちに拘束して、騎士団本部に連行する」

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