表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
nobody   作者: 福郎 犬猫
1章 少女は世界を知る
21/86

剣士と魔術士と5

モンタグ村に着いた俺達は唖然とした


ベルトラン隊長と二人で馬を走らせて来たが、村に近づいたときあることに気づいた




山の集落があったところが焼け野原のようになっていた


「マティアスあれは以前来たときもそうだったのか」


「いえ、前はもっと普通の村でしたよ」




そう平和な村だったのだ


村に着くと、事態を確認するため村人を探す




だが誰もいない


村の方は何ともない様子だが、人だけがいない


なんなんだこれは




村を半周すると先に隊長が反対を確認し終えたようで待っていた




「どうだった、マティアス」


「いえ、誰もいませんでした。たしかに人の多い村じゃなかったですけど」


「こっちも同じだっよ、集落の方に行ってみよう」




急いで集落の方に向かう


集落の方は人どころか全てが焼けてしまっちょうど、家や畑などの痕跡は何もなかった


そう何もかもがなかった


魔物に化かされたように


「これって、どういうことなんですかね」


「わからないな、ただこれは人為的な火事だろうね」


隊長が驚くことを言った


「変だとは思わないかい、これだけの集落か全て燃えるほどの火だったんだ。山を超えて村の方にも被害が出てもおかしくないはずだよ」


隊長は考えながら話す


「それに山の方も集落があったところ以外は燃えている様子はない」


気が動転して、気づかなかったがこれは


魔術だ


「たしかにそれなら山火事よりも魔術のほうが自然ですね。集落に何か消したいものでもあったんですかね」




まさかと言って、隊長は村の方に急いで戻る


村に着くと山近くの家に入る




「マティアス、君も他の家を見てくれ」


指示に従い、他の家に入ると


やはり人はいない本当にもぬけの殻そのものだ




一通り見てわかったことは、この家には保存食などの食料や通貨などの貴重品がなかった


まさかと思い、隊長と合流した


「やられたな、先手を取れれるとは」


隊長が悔しそうにしている




焼け野原の集落、貴重品と食料だけない他は整えられた綺麗な家


恐らく村人たちは自分の意志で村を出たので


オルゲンさんがいて今更強盗に襲われるなんて考えにくい、ましてや争った形跡すらない




「どういうことですかね」


「方法はわからないが、この村の人々は私達が来ることを知ったようだ。それで姿を消すということは」




隊長がそこまで話して黙り込んだ




「恐らく上層部か調査隊の中に情報を流した者がいる」


否定したかったが、出来なかった


俺たちがバイルから戻ってきて一週間ほどしか経っていない


ましてや隊長がこの村に行くことを伝えたのは昨日の朝だ




「マティアス、君は急いで王都に戻ってこのことをガスパールに」


「隊長は」


「私は関所の方に行く、そこなら何か情報が入っているかもしれない」




俺は急いで王都に戻る


皆無事でいてくれ










ヴェストの酒場の前ではラウルさんが真剣に何かを考えている


いや違う、やはりこちらの方がなどと一人でブツブツと何かを小声で言っている




「あのラウルさん、どうかしたんですか」




ラウルさんが真剣な表情でこちらを見る




「フェリシアちゃん」


「はい」


「お兄ちゃんと兄さんどちらが良いと思う」


「はい」


はい


この人は何を言っているのだろか


「設定の話だよ。昨日の場所の中で話したろ今回はもしものために冒険者に装うからある程度だ設定を固めるって」


ヨランダさんはそう言っていたが、これは違うと思う


「で、フェリシアちゃんと俺は兄妹ってことにするのが一番良いと思うんだよね」


「そのまま仲間じゃだめなんですか」


「それだと不自然だ。考えてみて、俺たちが同じ冒険者だとそれはそれで不自然だ」


私とラウルさんの年齡たしか7つ離れていただろうか


恐らく彼はそのことを言っているのだろう


「普通に皆同郷だからでいいんじゃ」


「それは設定として弱い」


そこまで気にする人はいるのだろうか


「それで、俺とフェリシアちゃんは兄妹でテオはその幼馴染みだ。そしてヨランダさんはさすらいの美人女冒険者だ。俺達はそんな彼女に憧れて付いていくことになった」




彼が力説する


何がすごいって、彼の力の入りように比例するかのように私の頭の中には全然入ってこない




「それでさ俺達は兄妹なわけだから、名前にさん付けっておかしいだろ」


彼の中で兄妹の設定は確定のようだ


「やっぱり王道のお兄ちゃんかな、それともクールに兄さん、いや意表をついてお兄様なんてのもいいな」




今ここ場にテオとヨランダが居れば、彼のスネを思いっきり蹴ってくれるのだろうが、私にはまだそこまでのことは出来ないようだ




「でどう思う」


「じゃあ兄さんで」


「よし、練習だ。呼んでみて」


「えと、兄、さん」




彼はなぜか満足そうだった 


私はこの後のことが不安になってきた


願わくば、これが最後であって欲しい


そう思いながら、意気揚々と酒場の中に入る彼に着いていく




酒場の中はまだ昼過ぎということもあり、客入りは少なかった


昼食の店に比べると冒険者の割合が多かった


中にはこの時間かは深酒をしているような客さえいる




ラウルさんがカウンターに座るので私もその隣に座る


カウンターの店主がちらりとこちらを見る


「ミルク、2つ」


「はい、何だって」


「だからミルク2つだって」




店主が私達を軽く睨んで、しばらくしてからミルクの入っているグラスを2つ差し出す




ありがとうとラウルさんが一連の流れを気にしていないかのように返す


彼は周囲を見渡してから、ミルクを一口飲んだ


それから彼は別のテーブルに向かった




残された私は、ミルクがすぐに無くならないように少しずつ口に入れる


「お嬢ちゃんたちは冒険者なのかい」


店主が私に向かって言う


「はい」


「あの男はともかく、お嬢ちゃんはあまりそういう風には見えないが」


その言葉につい体が反応してしまう


「その兄が心配で付いてきただけなので」


「随分お兄さん思いじゃないか」


店主の目付きが鋭い気がする


何を言っていいか分からない様子の私に対して


店主は別の客に呼ばれてそちらに行ってしまった


気づけば私のグラスの中のミルクは無くなっていた




周囲を確認すると、ラウルさんが他の冒険者のテーブルに混ざっていた


場を盛り上げる彼に冒険者はすっかり気分を良くしているようだ


私は彼らの会話に耳をすませる




「いやぁ、あんたら強そうだね」


ラウルさんは冒険者をおだてるように言う


「そりゃあ、俺たちが何年冒険者やっていると思ってんだ、ここらでは結構名はしれてんだよ」


「へーそりゃ凄い、俺もあやかりたいもんだ。一攫千金だと思って、冒険者になったが全然何だよ」


「ほう、兄ちゃんも冒険者なのか」


「冒険証を手に入れたはいいものの、いい仕事にありつけないんだよ。何かないかな」


「腕に覚えはあるのか」


「こう見えて俺は村一番の剣士何だよ」


ラウルさんは周りにも聞こえるかのように大声で話す


「そうか、剣士なら闘技場に行けばいい」


「闘技場って」


「この街にあるんだよ、金がほしいならあそこが一番だ。まぁ、下手をすれば死ぬがな」


貿易商は闘技場についてあっさり話しだした


カジノの地下に闘技場はある。この街にいる人なら誰もが知っており、そこで行われる賭け試合がとても人気がある


剣闘士になるには、他の剣闘士になるか裕福な商人や貴族に取り入ればすぐになれるそうだ


「へー、あんたらも剣闘士なのか」


「当たり前よ」


冒険者が力強く言う


「闘技場で一番強いのはあんたらかい」


その時上機嫌な冒険者の様子が少し変わった気がする


「悔しいが、俺達じゃねえ」


「へー、誰なんだ」


更に男達の表情が険しくなる


「フォルカーとかっていう剣士だ」


「どんなやつなんだよ」


「領主お抱えの剣闘士だ。親切で忠告してやるが、この街で剣闘士になるならあいつには関わるな」


「なんで」


「噂では剣の国の出身だっていう。それにあいつは気に入ったやつとしか試合をしないが、相手をいたぶってから殺すんだ」


物騒なことを彼らは話す


事前に決めていた通り、やはり件の剣士には関わってはいけないようだ


「剣のね。そういやここに来る前に聞いたんだが、死んだ剣の王に子供がいるって」


「そんな噂はあるが、誰も知らねーよ。きっと何かの出任せだ」


「その剣士は違うのか」


「それはないな。その剣士は子供でもなければ、兄ちゃんよりずっと老けている」


ラウルさんはしばらく冒険者と話したあとに、私のところに戻ってくる


「じゃあ帰るか」


彼に従いこの店を出る


「どうなんですかね」


「これだけじゃわかんないな、あと2、3件周ろうか」


私達は先程のように情報を集めることにした。といっても私は何もしていないが、ラウルさんは男一人で入るよりやりやすいと言ってはくれているが




結局私達は他の情報を得ることは出来なかった


どの店でも剣の王の遺児の噂を知っている人は多くいたが、その誰もが詳細を知ることはなく与太話とでしか思っていないようだ


例の剣士のことも有名なようで皆同じことを言っていた




約束の時間になっていたので、私達はテオとラウルさんの部屋で他の二人を待つ


しばらくしてから二人も来たが、どうやら様子がおかしいようだ


特にヨランダさんは憔悴しているようで




「え、ヨランダさん、何かあったのか」


「うんそうなんだけど、何から話したらいいか」


いつも私達を引っ張ってくれる彼女のそんな様子にただならぬ者を感じる


二人に事情を聞くと


二人はフォルカーと接触してしまったようで、更に騎士であることを見抜かれたのだらしい


たしかに任務の成功に関わることではあるが、自分の責任とはいえヨランダさんがあのような状況になるのだろうか


私の疑問はすぐに解決する




テオがフォルカーと試合をすることになった


私とラウルさんは知っているそれがテオの死を意味していることを




「逃げようよ」


それはフォルカーからもこの街からもと言う意味だ


この任務の重要性は私にもわかるが、テオが死ぬことに比べれば些細な問題だ


ベルトラン隊長や他の騎士に相談すればいい解決策が見つかるかもしれない


「それは無理だ」


「どうして」


「俺はこの街を出られない、名前が割れているから正規の方法は無理だ。強引に突破しようとしてもこの人数でこの街の警備相手じゃな」


恐らく今一番冷静なのはテオだ


私はそのことに怒りすら覚える


だって自分の命に関わることなのに、彼はどこか他人事だとだ


「フォルカーと戦った人は、皆が死んでるんだよ」


「どういうこと」


ヨランダさんが私の言葉に反応する


ラウルさんが、私達の知り得た情報を説明する


ヨランダさんの顔色はみるみる悪くなっていく、一方テオの表情は変わらずいったて冷静だった




「お前らは、明日正規の方法でこの街を出ろ」


テオの言葉が信じられなかった


「だから死んじゃうんだって」


上手く言葉が出ない。彼が何を考えているかわからないから




「待てよ、別に試合に行かなきゃいい話だ。無視すりゃいいだろ」


「それはない、あいつはあの場で俺を殺すことも気絶させて連れ去ることも出来たはずだ」


「それで逃げられない理由にはならないでしょ」


「あいつには自信があるんだよ。俺に試合を出させることに」


「どういうこと」




フォルカーは今まで何人もの剣闘士を殺しているなら勝負を避ける者が出てきて試合自体が成立しないこともあるのではない


その証拠にフォルカーは自分で相手を探していた。それを一度は開放したということは相手が試合に出ることに絶対の自信があるのではないか


それで無理矢理に試合を成立させることで、彼は剣闘士を殺し続けているのではないか 


「それも全部憶測だろ」


「ラウルお前ならわかるだろ、今逃げるほうが危険があることくらい」


「なんだ、ずっと俺達を見張ってるとでもいうのかよ」


「俺はそう考えた方がいいと思う、それにあいつは王の子について何か知っている」


「そんなことのために命をかけるの」




テオは何も言わない、何も言ってくれない




そんなことではないことくらい、私にも分かる


でもテオの命とは比べられない




「だから試合になったら俺を助けてほしい」


「どういうこと」


彼のお願いにすぐ問いかけた


彼が闘技場の入ってから、殺されるまでの間に救出してほしいと言った


試合が始まってもしばらくは殺さないなら時間が少しはあること




「そんなことできるのかよ、策は」


「それは私が話すは」




今まで何も話さなかったヨランダさんが口を開く




ヨランダさんの作戦はこうだ


カジノにボヤ騒ぎを起こして中の人間逃がしてから、私が大規模な爆発を起こしてその隙に逃げると言うものだ


彼女の提案にしては、単純で不確かな内容だ




「上手く行ってもテオくんの命を保証出来るものでないけど、騒ぎさえ起こして人さえ集まれば相手も無理に動かないはずだと思う」


歯切れの悪い彼女の言葉に安心は出来なかった




それでも考え、行動しなければならない大切な人を失わないために

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ