剣士と魔術士と4
村に着く
もう日が暮れているので、ここで夜を明かして明日の明け方にここを立つ
村に着くと宿で2部屋だけ取れたので男女で別れる
ラウルが何とかして俺とフェリシアが同じ部屋になるようヨランダに言えと耳打ちされたので、素直に鳩尾に肘を入れた
宿で簡単な食事を取り、明日に備えて早く寝る
ラウルも流石に今夜は抜け出せないようだ
まだ日が昇り初めた頃に集合する
「ラウルくんがテオくんを起こしたの」
「はい、ヨランダさんの役に立てるよう必死に起こしました」
本当は自分で起きたが何でもいい
フェリシアの様子は昨日よりは幾分かマシのようだった
村から徒歩でヴェストを目指す
日が昇りきるまでに到着する予定だ
静かな誰もいない道を歩いていく
特に話すこともないので、誰も話さないが
1時間もしない内にラウルが疲れた、休憩しようなどとうるさいので静かな時間はあまりなかった
「フェリシアちゃん、疲れてない」
「はい、大丈夫です。歩くのには慣れているので」
フェリシアは元気な様子で話す
適度に体を動かすことで、気が紛れているようだった
それから更に歩いていて一度休憩を取ることにした
ここでわかったことだが、この中で体力が一番おるのはフェリシアだ
彼女は幼少から家畜の世話で野原を走り回っていたことが理由だろう
「ずっと机に齧りついてるからそうなるんだよ」
そういう彼女にはもう緊張の色はなかった
そうして休憩を取りながらも歩き続けることで予定より少し早い時間にヴェストに着いた
ヴェストは事前情報では港町と聞いていたが
街の半分は海に面しており、陸にはしっかりとした壁がそびえ立っておりまともな出入り口は一つしかないようだ
更に街の中心部には王城には数段劣るものの城のような屋敷があった
ただの街というよりは小さな国のようだった
街に入ること自体はそう難しくなく、門番に各自、冒険証を見せればすんなりと入れた
冒険証が無ければ入るだけで相当苦労しそうだ
街の中に入って大通りを歩く、街の中の様子は多少他の街よりも傭兵のような風貌の者は多いが、商人も多いのでそこまでの悪印象はない
何も知らなければ、栄えている港町にしか見えない
ただ巨大な壁と中央の城が似合わず、違和感を醸し出している
昼食のために店を探すことになった
出来るだけ客の多い店を探す
店を見つけると一つのテーブルを確保できた
そこは港町だけあって、魚介類を全面に押し出しているようで冒険者や観光客が多い
注文するものは、調理時間や食べるのに時間がかかるものを優先して選ぶ
店には申し訳ないが、長居しても不自然でないものを選ぶ
料理を待つ間、周囲の客の話し声に耳を済ませると聞こえてくるのは傭兵仕事のことや商人の取引の話などが主で、酒を飲んで騒いでいるやつに関しては賭けで派手に負けたようだ
しばらくして、料理が運ばれた魚介のパエリアだ。それぞれ小皿に取り分けて、口を運ぶと
美味い
魚介の出汁が聞いている米、新鮮で大ぶりな魚介など繁盛している理由がうかがえる味だった
他も同じようで目を大きく見開いたり、ガツガツかき込むなどそれぞれの反応をする
「ねぇ、この店帰るときにも寄りましょうよ」
ヨランダは完全に任務のことが抜けたようだ
彼女を見ると自覚したようで顔を赤らめて俯いていた
それにラウルは上機嫌に顔を覗き込もうとしていたので机の下で他の客に気づかれないようにスネを狙って蹴ったら今度はラウルが俯いた
彼の名誉のために言うが一応声をあげないようにはしていた
「当店の名物は気に入っていただけましたか」
ウェイターが水を入れにテーブルに近づいた
「うん、すっごくうまいね。びっくりしちゃったよ」
「それは良かったです」
「ねー店員さんこの街ってなんか面白いものないの。俺たち今日来たばっかでさ、飯が美味いことはわかったけど」
いつもより明るい口調で尋ねると店員は少し考えて
「そうですね、やっぱり街の中心にある領主の家なんかは立ち止まって見る人もいますよ。あとは港に行けば貿易商の品で何かあるかもしれないよ」
「へー、他には」
「あとは君が大人になっから、教えましょう」
店員が立ち去るのでちぇーと声を出す
店員と話している間気になってはいたが、3人が俺をずっと見ていた
「あなたテオくんよね」
「他の誰かに見えるのか」
「お腹痛いのテオ」
「お前らな、何をしに来たか思い出せ」
俺の反応に3人は安心したようだった
「でどう思う」
「特に変わった様子はなさそうね」
「大人になってからってどう意味ですか」
「それはね、男だけの秘密だよな。テオ」
もう一度ラウルのスネを蹴る
「普通にカジノのことだろ」
「でもそれは」
「多分それくらいこの街では当たり前のことなのかもね」
恐らくだが、この街いる者のほとんどはカジノの存在を知っている可能性がありそうだ
「そうなると、普通に俺たちも入れるかもしれないな」
ラウルが復活した。タフなやつだ
まだ情報を集める必要はありそうだが、カジノで調べる必要があるかもしれない
あまり近づかないほうがいいのだろうが、こうも人が多いとあたりをつけるのは大変だ
昼食を終えた俺達は二手に別れて調べることにした
俺とヨランダ、フェリシアとラウルに分かれる
不安だ
この組み合わせしかないのだから仕方が無い。女だけだと変なやつに絡まれるかもしれないし、子供だけだと相手にされない可能性がある
仕方がないこだと言い聞かせて、ヨランダを見ると彼女も同じようだ
「大丈夫ですよ、言ったじゃないですかこのラウルがチャッチャッと解決しますから」
呑気に笑いながらを言う
人から話を聞き出すのは彼が一番上手いので今はそれに頼るしかない
「気をつけろよ」
「テオも頑張ってね」
フェリシアが気合を入れて言う
空回りしないことを祈って健闘を祈ることにした
「でどこから当たる」
「とりあえず港の方を目指しましょうか。酒場も気になるけど、そこはラウルの領分だし」
俺達は港に向かって歩く
港に近くなると冒険者や傭兵などが少なくなり、その分商人や漁師が増える
港では大きな船が1隻とりわけ目立っていた
近くの人に尋ねると命の国からの買付から戻って来たらしく
見たことのない調度品や野菜や果物などが運ばれている。貴重な調度品は一度領主の趣味の悪い家にに運び込まれるようだ
確かに珍しいものは見れたが、特に役に立ちそうな情報が得られたわけではない
二人で港を歩きながら、考え込んでいると
柄の悪い声が聞こえてくる
「テメー何してんだ、この野郎」
よく聞くような怒声が聞こえて人だかりか出来ていた
「申し訳ありません」
男が地に頭をつけて謝罪していた
「いつまで借りてる気だ、さっさと返せ」
どうやら借金取りの男のようだ
頭を下げている男は商人のようで、身なりもそう悪くはないようだ
「利子はお返ししているじゃないですか」
「なに言ってやがる。元金はいっさい減ってねーだろーが」
「今日勝ったら、お返しししますから」
「馬鹿みてーなこと言うな、今すぐ闘技場に立てせるぞ」
男はギャンブルで大負けしたようだ。しかしギャンブルで作った借金をギャンブルで返そうとするとは
借金取りも無茶なことを言っているので、少し同情できなくもないが
「テオくん、行くわよ」
「は」
ヨランダが群衆をかき分けて前に出る
「あなたいい加減にしなさい、利子を返しているならそんな無茶な取り立てしなくてもいいじゃない」
「ねーちゃん、なんのつもりだ」
全くだ
「こんな人の往来があるところでこんなことされてたらいい迷惑なのよ」
男はヨランダをじっと見た
「ねーちゃん、別嬪じゃねーか。こいつの代わりに金でも作ってくれるのか」
男が下品に笑いながら、ヨランダに近づく
「別嬪なんて言われたの久しぶりだわ。でもそれだけは絶対嫌なの」
なら黙っていろと借金取りが殴りかかる
彼女は最低限の動きでそれを避けて、足元を蹴り抜き、借金取りは派手に転んだ
借金取りは起き上がりざまにナイフを抜いたので、俺も剣を抜いて借金取りのナイフを弾いた
そこまでされると男も何も出来ないのようなので、走って逃げていった
俺達もこれ以上目立って、顔でも覚えられてはいけないので急いで路地の方を目指した
ギャンブル男は礼のようなものを言っていたが、それを無視して
しばらく走り続けて路地に人がいないことを確認して止まる
「おい、何してんだよ」
「ごめんなさい、ああいうの見ちゃうとつい」
ついじゃない
助けられたギャンブル男もろくなやつじなさそうだったのでそらに追求しようしたとき
「兄ちゃん、さっきは格好良かったねえ」
背後にその声があった
先程周囲の気配は確認したつもりだ
オルティノのときといい、この国はどうなっているんだ
「うん、悪くない。悪くはないが。特別良くもない」
剣を提げている男がいた
わけの分からないことを言われた
「さっきのと立ち姿でなんとなくわかるがよ。兄ちゃん剣以外もある程度は扱えるんだろ」
「な」
少なくとも王都に来て以来、人前では剣以外の武器を扱ってはいないのに、なぜそれを
「兄ちゃん、悪い意味で完成されてんだよな」
男は俺の反応を気にせず話し続ける
「若いのにもったいないね」
「騎士の姉ちゃんもそう思わないか」
こいつヨランダの正体にも気づいていたのか
ただ一つ俺がわかっていることは、この男は俺よりずっと強い
間違いなく、ガスパールやオルゲンに並ぶ程だ
俺が測りきれていないだけでそれ以上かもしれない
「そう警戒しなくても、何もしやしねーよ」
男は再度俺を見た
「まあ、他のやつよりか幾分かましか」
よし決めたと男は言い
「兄ちゃん、明日の夜暇だろ。おれと闘技場で一戦やろう」
これに了承するしかなかった
断ったところで殺されるか、ヨランダの正体を領主にバラされるだけだ
今回何よりも重要なのは、フェリシアが五体満足で任務を終えることだ
男はフォルカーと名乗り、俺の名前を聞いたのでテオと答えた
男の話ではカジノの地下に闘技場があるそうで地下へと続く階段の前で名乗れば入れるよう領主に言うそうだ
あの男が例の剣士で間違いないだろう
一番会っては行けないやつにまさか初日目をつけられるとは
一か八か男に問いかける
「剣の王の遺児について知っているか」
男は口を釣り上げて、笑った
「来れば教えてやるよ」
男が去ったあと
俺とヨランダはその場で崩れ落ちた
強者の放つ異様な雰囲気に当てられたからだ
「どうするの」
「言う通りにするしかないだろ」
「次こそ殺されるわよ」
それには同意見だ
「仕方がないだろう、少なくとも明日の夜まで何か考えるさ」
「私のせいよね、なにを言っても謝罪になるとは思えないけど」
「いや、関係ないどちらにしろ目をつけられただろう」
それは本心だ、少ない動きだけで相手の正体に気づくようなやつだ
どちらにしろ、目を付けられたのがこれで良かった
「行こう、俺が死ななくてもいいよう何か考えてくれ」




