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ただの偶然もしくは悪運
お前は幸運だ
そんなお前に恩恵を与えよう
神と名乗る男は上機嫌にそう言った
この男が本当に神であるかの確証はない
一つはっきりしていることは両親が死んで俺だけが生き残った
全てくずれてしまった瓦礫の上
瓦礫とともに思いや記憶まで崩れてしまったように俺には何も残らなかった
親の敵を取ることも、一人で生きることも何も出来ない
俺はただ呆然とその神とかいうものらしい男を見ていた
神の恩恵についての話を聞きながら別のことを考える
どうして二人は死ななければいけなかったのか
なぜ俺なんか庇って死んだんだ
そもそも何故二人は俺と居てくれたんだ
利用価値も才能もない俺に生きている意味はあるのか
俺にいったい何が出来るというのか
その答えはいつまでも見つかることはない
それでも逃げることだけはしなかった
それは俺が逃げていしまえば、二人がやってきたこと、これからやろうとしていたことが全て無駄になる気がしたからだ
それだけは避けなければいけない
少なくとも二人は俺なんかと違って、優しくて優秀で生きてさえいれば何か特別なことをを成し遂げたはずに違いないのだから
だからせめて
朝だよ