表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/95

7

あれから数時間後。12月25日の13時少し前。

何時も喫茶店と指定された店・ハニー&バニーへと到着した。

バンド仲間が集まるとなると俺の部屋かこの店に集合となる。理由は少し外れた場所なせいか、固定客しか居ないのと知り合いが働いてるからだ。

それでも流石にクリスマス本番の今日も外食産業は忙しそうである。外から店内を覗くと8割程席が埋まっていた。


「太郎ちゃん!」


甲高いベルが響くと同時にドアが開くとウェイトレスの制服をきた少女が顔を出して来た。

彼女がその知り合い。

西内由紀恵。高校2年生で、俺の母方の従兄弟である。

「いらっしゃい太郎ちゃん。雷華さんなら来てるよ!」

「そうか。今日は忙しそうだね。」

「そうなんだよ〜!昨日もそうだったんだけど、今日も大入袋が出そうなんだ。頑張んなくちゃ!」

コッチだよーと店内案内した先に、個室の様なちょっとした仕切りがある席へと通される。何時もの席だ。

中に入ると携帯を弄りながら雷華が「お疲れ」と短く挨拶をしてきたので、そのままオウム返しで返事をする。

「忙しい時にメールして悪かったな。」

「いや…家の仕事を手伝っていただけ。問題ない。」

「やっぱり年賀状か?」

「昨日が元旦配達締切日だから、もう落ち着いた。」

名前から察する通り、雷華の実家は写真屋、写真館である。

俺と同様、写真入り年賀葉書でこの時期は忙しいのだ。

多分、文房具屋も昨日とは打って変わって落ち着いてるだろう。

「俺はもう注文してるから、太郎はどうする?」

「昼食って来たからなぁ。コーヒーでいいかな。」

理由は12時前に謎の生物から腹の虫が鳴いたから。

今朝の8時、昼の12時と中々正確な体内時計の持ち主だ。

恐らく15時と19時にも鳴らすのだろう。もうほぼ時計と言っても良いだろうな。

流石にうるさいので、インスタントラーメンをかきこんでから来ているからコーヒーで充分だ。

様子を見に来た由紀恵を捕まえてコーヒーを注文すると雷華から口を開いた。

「今回はどうした?」

「いや、ちょっとしたのを拾ってさ。」


謎の生物を拾ったこの数日の事を雷華に説明を始めた。


雪と共に降って来た事。見た事がない風貌な事。

突然言語を獲得し、良く話し良く食べる事。

伝わり難い所は雷華の電子メモ帳で書いて説明をする。

俺が一通り話し終える迄、黙って聞いてくれた。


「それは…。地球上の生命体?」


実はそれを疑っていたんだけど、そもそも宇宙人ってこんなフランクな生き物なのだろうか?

「太郎は嘘つく人じゃないから疑ってないけど、その生き物、連れて来てる?」

「ああ。さっきラーメン食べてたから今寝てるけど。」

連れ出そうとした時に丁度良い入れ物が無く、俺の着ているシャツの胸ポケットに入れていたら、喫茶店到着寸前でスヤスヤと小さな寝息をたてているのに気がついた。

そっと掌に包み込んで雷華の前で広げてみる。

「これなんだけど。」

「これは…何なんだろう…?流石に俺も分からない。」

言葉を失う雷華の前で、堂々と人の掌の上でコロンと寝返りを打つ。呑気な物だ。


「お待たせしましたー!ホットコーヒーとクリスマス限定・チョコレートノエルですー!」


元気良く入って来た由紀恵の声で、慌てて奴を掌で覆い隠す。

手際よく配膳を済ませ「ごゆっくり〜」と手を振り戻っていった。どうやらバレなかった様だ。

冷静に考えたら、生体を店内に持ち込む自体が問題だよな。

安心したら、握った手が汗をかいた様…ううん?汗か?

ゆっくり握りしめた手を広げると、涎全開で奴はチョコレートノエルをロックオンしていた。

ハニー&バニーは普通の喫茶店ですが、ウエイトレスの制服が可愛いと制服マニアには有名な喫茶店です。

メイド喫茶やコンカフェと間違えられる事が多々ありますが、違います。店員さんに迷惑行為をしますと奥から筋肉隆々のコーヒーマイスターor奇天烈なオーナーが出て来ます。気を付けましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ