苦悩の魔王
俺は魔王
親父の冥王と魔界の派閥争いをしてる
紹介があっさりしてるってツッコミ入るけど、ごめんな。
俺はとある大陸の魔界で魔族の王様やってる。
ただ、厄介なことがあってな。次期魔王の椅子のための色々なゴタゴタが俺の水面下で起きている。
魔界にとっての一大イベントの、族話会の会長を決める会議がある。
人間の世界でいうと選挙とか政治の話し合いのイメージを持ってくれたらわかりやすいな。
魔王と冥王、同じような存在だろうって
確かに名前はいかにも強そう、闇のトップかもしれないな。
けど、魔王は魔界の王様
冥王はすべての闇の頂点っていう違いがこの世界にあるんだ。
地位は圧倒的に冥王が上。
まあ、普通に考えれば魔王が冥王に逆らえば死ぬ。
というか、冥王からすれば魔王はまじで格下扱い
冥王というか、親父にとって俺はお飾り。
俺が持っている魔族の支持基盤や利権が欲しくて仕方がないんだろうな。
けどな・・・魔王の俺からすると、親父(冥王)はマジでうざい。
幼いときから、やれ大陸を支配しろだの、暗黒魔法覚えろだのムカつくことばかり教え込まれた。
俺は、幼いときから魔族で一番カッコよくなりたかったんだ。
それなのに、遥かに面倒くさい大陸支配だの、暗黒魔道士の入門編やれだの・・・
闇の都合のいいように俺を育ててきたとか思ってるだろうけどな。
いくら、親父が冥王とはいえだ。俺が魔族の一員とはいえだ。
何に手を出すのが良くて、何に手を出してはいけないかは知ってるつもりだ。
それに、魔王らしくないが俺はそこまで権力にこだわりはない。
強く在りたいのは本音だがな。
魔界でどんな権力があろうとも、人間やドラゴンとタイマン張れなきゃ張り合いがないだろうが。
人間やドラゴンとタイマン張って、デカい戦いをしてこそ魔王の醍醐味だと俺は思っている
魔王の椅子は、本音言うなら他の魔族なりにゆずってもいい。
だがな。俺の思いを受け継ぐことのできる奴じゃなきゃだめだ。
人間やドラゴンといかに闘うか、でかつて魔族は飯を食うことができた。
けど1000年前にある大戦が起きて事情がガラッと変わった。
魔族の戦いの信念が、如何に戦うかから如何に他の魔族を魔力支配するかにだ。
魔力支配に使われるのは、俺達魔族だけじゃない人間やドラゴンの間でも忌み嫌われる暗黒魔法だ。
暗黒魔法といえば、魔族だろうって思うやつはたくさんいるだろう。
俺の部下もその一人だ。
ましてや魔王ともなれば・・・と
だけどな、親父(冥王)とのいざこざが幼少期から絶え間なく続いていて
暗黒魔法=冥王の十八番=親父という図式ができてるんだよな・・・・
もとい暗黒魔法に対しての苦手意識よりも、
暗黒魔道士って存在が苦手なんだよ。
暗黒魔道士は暗黒魔法のエキスパート
人間や魔族の中でも悪行を背負うことを条件に成り立つ魔法使いの一種だ。
暗黒魔道士によくある、自分はいかにも強い力もってますってオーラが嫌いでな。
親父を彷彿とさせる。
戦いは素手か百歩譲って武器を使って闘う、闘っている実感があることが大事なんだ。
魔力というか呪文で闘うことに意味はあるが、意義は俺が望んでいるものとは違う。
話がそれたな
そんなある日のことだ。
いつもの通り、ひねくれた魔族を人間の王国の国境のどこぞで
きっちりカタにハメ終わって休憩してたときだった。
重たい扉が開いた。
「魔王様、そろそろ 昔約束していたあの仕事をさせてください」
「あれは、だめだ。下手打ったら人間が黙ってないだろうが」
「そこをなんとか」
「だめだ、絶対にあれには手を出すなよ」
何の話かわからないって。
軽く説明すると、ユートピアっていう人間と魔族の世界の間の理想郷の
発電所に当たる場所の管理の話だ。
普通なら俺達魔族にとって、やりたくて仕方がないんだ。
この世界の限界を超える魔力も自在に操れるだけのパワーを持っているし、
ユートピアに暮らしてる魔法使いや戦士をちょっと操るなりそそのかせば
難しい「仕事」だってやってくれるしな。
親父はもともとユートピアを狙ってたんだ。
時の塔の時間を操るためにな。
時の塔についてはいずれ説明する
けど、流石に俺達魔族全員で親父を止めてた。
時はすべての源だ。
いくら、俺や親父が魔族で最強とはいえどもだ。
人間だけならまだいい、ドラゴンと団結されると厄介なことになるから
時の塔とユートピアだけは手を出すなと部下の魔族に厳しく命じた。
けど、親父はそれを破った。
バカ親父が・・・やらかしたんだよ。
とある国の大臣を我が物にしやがった。
俺の計画になかったことを勝手にやりやがったんだよ。
あの大臣は暗黒魔道士のトップだ。
人間の世界の暗黒魔道士は、その大臣のことなら何でも聞くんだそうだ。
魔界らしくないが、俺は正直暗黒魔道士は嫌いだ。
親父の影響で存在自体が大の苦手だし、魔法は都合のいい呪文だけで十分だろうしな。
あとは、人間を騙す事自体は飯の種だがやりすぎだけはしないようにしてる。
あと、そいつが持っている呪文にユートピアのコントロールの鍵になるものがある。
それを好き勝手に他のやつに奪われたら、俺の思惑がパー。
今まで、俺の魔法で大臣にユートピアと時の塔に関する全ての呪文を使わせないように
うまくコントロールというかそそのかしてきた。
そいつが水の泡になるなら、俺の魔力が無駄になる。
俺の魔力だけが無駄になるならまだいい。
目的のためには手段を選ばない親父だ。
暗黒魔道士たちを使っておそらくろくでもないをするに決まってる。
暗黒魔道士と人間や魔族と蜜月関係なことは、俺にとって頭を抱える問題なんだ。
暗黒魔道士は欲望を満たすためなら、なんでもする。
この俺の背筋が凍るような呪文を使ったり、禁忌の召喚術だって使うんだ。
俺達魔族にとって、意志をコントロールすることは魔力の哲学なんだ。
その哲学というかまあ、美学というのかな。を
好き勝手な欲望のために、行き過ぎるところまでコントロールするのはいかがなものかと思うんだよ。
行き過ぎれば、かつて俺の師匠だったとある魔族のように身を滅ぼすことになるしな。
たしかに俺の親父はろくでもないのは知ってる。
けど、親は親だ。
さすがに、行き過ぎだけは止めないとって使命感は抱くよ。
でもな、子の心親知らずっていうのはまさにこれなんだなって思う。
そのころ、親父は・・・・・
「冥王様、今お話良いですか」
「あの国の大臣のことか」
「そうです、思った通り食らいつきましたよ。例の話と魔石にね」
「そうか、いいことだ。ものはきちんと渡したな。」
「わたしました。これで言いなりが増えればバンザイです。あとは、ユートピアと時の塔ですね。あの2つはやっかいです」
「たしかに、やっかいだ。だが、例の呪文をあいつから奪ばって、あの大臣がもってる呪文と連結させれば労せずものにできるぞ」
「名案ですね。冥王様」
「そうか。さっそくあれにとりかかるぞ。準備を進めてくれ」
「わかりました、あいつに事を運ぶように指示を出します。」
部下とゴソゴソなんかやってたみたいで
俺は親父に意見した。
「親父、どうしてだ。どうしてあれを進めなきゃいけないんだ。今だって、十分力があるだろうが」
「息子よ、今がチャンスなときに何を怖気づくことがあるのだ」
「親父、いくら人間とはいえ昔のそれじゃないんだ。」
「人間ごときが 笑わせるな。息子よ」
「親父!ちょっとまってくれ。言いたいことはわかるけど慎重に進めないと、リスクがでかすぎるぜ」
「これ以上意見するなら、息子のお前でも許さん。アブソルトに幽閉がいいか?」
「わかった。言う通りにする。だから、アブソルトだけは勘弁してくれ。」
「わかればよい。お前はいつもどおりにすればいい」
意見できるわけねえよな。俺の親父、冥王は闇の頂点だ。
いくら俺が魔王でも、頂点には勝てねえ。
全てにおいてだ。
けど、俺なりの思惑
それは、人間とドラゴンと俺達魔族が適度な距離を保ちつつ
逆らう存在をうまくコントロールすることでギリギリ平和な世界を
つくること。
1000年前のあの戦いからどういうわけか暗黒魔道士が急に戦力を増してるんだ。
いくら俺達が魔界で強くても、互角以上に強い存在が要るのなら
その存在を超える力を持たなきゃ負ける。
俺達が負ければ、俺達なりに世界のバランスがくずれるから
負けるわけにはいかねんだ。
暗黒魔道士は魔族と違い、桁違いの魔力を持っている存在もいる。
加えて、冥王こと親父のバックアップがあるから・・・
果てない戦いのフラグしかない。
魔界イコールかっこいい。もしくは、絶対的な力と思うやつは今すぐあらためたほうが良いぜ。
魔界には魔界のやり方があるからな。
親父は、おそらく絶対的な力のためにえげつないことだって指パッチンでやりたいところだろう。
人を殺しても眉一つ動かさないしな。
あのドラゴンの頂点の、デスドラゴンにも一歩も引かないんだ。
そこまでして、親父が絶対的な力を求める理由を知りたかった。
俺は、部下のノーライフキングに相談してみた。
けどな・・・、返って来た言葉に俺は怒髪天を衝くことになる。
「そういえば、俺の親父。人間と戦争するみたいだぜ。というか、親父はなんで力に対してあそこまでこだわるんだ。」
「冥王様の理想のためでしょう。絶対的な魔力の頂点に立ち続けるため。
それより、魔王様・・・・実は大変なことが起きてまして・・・」
「どうしたんだ。何があった」
「最悪のことが起きたんです。冥王様が私が管理していた呪文を盗んだんです」
「なんだと!お、親父はどこいった!?」
「それが・・・・」
「どこなんだ」
「人間の王国の大臣のところに出向きました」
「あの・・・野郎 そうか、そういうことか。大臣って・・・あの暗黒魔道士だろ」
「そうです。厄介な相手です。どうしますか」
「親父があいつをどうする気なんだろうな」
「一つだけ言えることは、私達にとって良くない知らせでしょう」
「くそが・・・。俺も今すぐ人間の世界にいく。留守は任せた」
「承知しました。どうかお気をつけて」
「ありがとうな。それじゃ行ってくる。親父を止めないと・・・」
このへんで一旦話を区切るぜ。
聞いてくれてありがとうな。
またどこかで会うかもしれないけど、そのときは伝説の剣でお手合わせ願おうか