第93話 港湾都市計画
どうも、ヌマサンです!
更新が大幅に遅れてしまい、申し訳ありません。
今回はマリアナとセリアが対面することになります。
はたして、どんなやり取りがなされるか、楽しみにしていてもらえればと思います……!
それでは、第93話「港湾都市計画」をお楽しみください!
冬の足音が聞こえ始めた王国北部ルグラン領よりナターシャが帰還。ナターシャは帰還するなり王城へ赴いた。
「マリアナ様、ただいま戻りました」
「ナターシャ、戻ったのね。北方の様子はどうだったの?」
「はい、ルイス殿が逃げ込まれて以来、ヴォードクラヌ王国の旧臣たちが集まっており、彼らの対応に忙しくしているようです」
「そうだったのね……。私も一度、北へ赴いてみることにするわ」
ナターシャの口から北の情勢を聞き、マリアナも自ら北方の情勢を視察することを決め、豪雪となる冬を避け、雪解け後の春に向かうということまでその場で即決。
その決断力こそマリアナの長所であり、英明な君主としての素質を秘めていた。ナターシャはその姿に亡きカルメロの姿を重ねつつ、玉座の間を退出した。
また、去り際にアマリアの養女となったセリアのことを報告。さすがのマリアナもセリアがジェフリーの娘であることを聞き驚いていた。そんなセリアを側付きとすることをあっさりと了承。
セリアのいるルグラン領へ早馬を向かわせ、セリアを王都コーテソミルへ向かわせるよう、領主でありセリアの養母であるアマリアに求めた。これにより、セリアはナターシャの帰還から半月後に王都コーテソミルへと到着したのであった。
「あなたがセリアね。私はこのロベルティ王国の女王、マリアナ・ロベルティよ。これからよろしくね」
「うん!よろしく!セリアはセリアだよ!」
礼儀作法の礼一つもなっていないセリアであったが、明るく愛嬌を振りまく姿に、憤る者はいなかった。さらに、マリアナもセリアを見て嫌な気はしなかった。
王族であり、幼い頃から女王として国の頂点に君臨しているマリアナは、周囲の者たちから堅苦しい態度で接されることばかり。それに飽きていたからこそ、セリアの態度は新鮮に感じ、嫌な気も起きなかったのであろう。
そんなマリアナにとって同年代のセリアと気兼ねなく話せることに喜びを覚えていた矢先、商務大臣であるクレアがマリアナを尋ねてきた。
商務大臣は経済や産業の発展、港での交易に関することを取りしきる役職である。そんな彼女がやって来たとなれば、経済絡みの話だとマリアナは予想した。
「マリアナ様、お時間よろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ」
マリアナはセリアに静かにしているよう頼み、セリアが必死に静かにすることに務めているのを横目に、クレアとの話を始めた。
「まずは、これを見ていただきたいのですが……」
「……港湾都市計画、ですか」
「はい、フォーセット領主のクリスティーヌ様から打診をいただいたのです」
「クリスティーヌ殿から?」
海沿いの国であるフォーセット領は貿易が盛んである。だが、元からある港町は老朽化が進み、整備の必要があった。そのため、王国そのものを巻き込んで大規模に改修してしまおうと考えたのだ。
クレアとしても、そのことは分かっている。クリスティーヌはイケメンイケメンとうるさく色気の多い女領主であるが、治世に優れた手腕を発揮し、領内の民衆からの支持されている。
だが、クリスティーヌからは港湾都市の貿易で得た税収のうち、半分を国に収めるという条件を持ちかけられた。この条件は悪くないとクレアも確信。国にとっても大きな利益となるとふみ、港湾都市計画を進めるよう打診しにやって来たのだ。
「よし、クレアが利益が出ると考えたのなら、実行あるのみよ。クレアの計算能力の高さは私もよく理解しているもの」
「そ、そこまで信頼していただけているとは……!」
マリアナの部下を信じ、部下の裁量に任せるやり方は危ういようにも見えるが、周りにいる者たちが忠臣ばかりであるため、絶大な効果を発揮する。クレアは港湾都市計画を進めるべく、早々と準備に取り掛かった。
「セリア、まずは港湾都市が築かれるケルビアへと向かうわよ」
「けるびあ……?分かった!行こう!」
セリアの側付きとしての初仕事である。それは、マリアナと共に港湾都市の計画予定地であるケルビアへ視察に赴くことに決定した。
視察へ行くと決めた翌日には、マリアナはお忍びでフォーセット領ケルビアの地へと出発。護衛には近衛兵たちが800名ほど同行し、近衛兵長であるセシリアも同行することとなった。
近衛兵長に率いられた八百の近衛兵と共に一週間ほどかけて、ケルビアの地へと到着。北にはフォーセット領の中心都市であるレミアムへ続き、南北へ伸びる街道からは続々と建設資材が運び込まれている。
さらには、資材を指定の場所に動かし、監督の指示の下で港湾都市の建設に向けて動いていく。その活気のある様に、マリアナも感心したように声を上げる。傍らでニコニコしているセリアもよく分かっていなさそうだが、とにかく楽しそうではある。
「マリアナ様、絶好の視察日和ですね」
「そうね、天気のいいうちに視察してしまうとしましょう」
銀色の大鎧を身に纏い、真紅の大斧を担いだセシリアを伴い、マリアナは港湾都市の視察を開始した。セリアは自由奔放に移動しているが、本人も意識しているのかしていないのか、マリアナの視界に入る距離を保っている。
セリアがはしゃいでいるのを横目に、マリアナは視察を進めていく。視察する中で、髪を揺らす潮風や鼻をくすぐる潮の香りを堪能。セシリアとその都度感想を交換し合う。そんなおだやかな空気の中、湾口都市の建設予定地の外周部を見て回る。
「マリアナ様から見て港湾都市はどう思われますか?」
「……そうね、海上貿易にはもってこいだと思うわ。波も穏やかだし、船を停泊させるには問題ないんじゃないかしら」
「アタシは建築やら潮の流れやらは分かりませんが、今からここで人が賑わうのが目に浮かぶようです」
「セシリア。私にも都市計画とか、潮の流れとかは分からないわ。学者じゃないもの」
マリアナは分かっているのに自分は分かっていない、とでも言いたげなセシリアの言葉にマリアナもクスリと笑みをこぼす。
実際、マリアナも港町について何か専門的な知識を有しているわけではないし、漁師のように潮の流れが他と比べてどうなのかなど分かるわけはない。あくまで、書物で少し読んだことがある程度のもの。
ともあれ、すでに港湾都市を建設する人や資材で賑わっているケルビアの地。港湾都市が完成した暁には、一体どれだけの商人が船に乗ってやってくるのか。その商人のもつ商品目当てにどれだけの人が集まり、通りが賑わうのか。
まだまだ分からないことだらけだが、多くの人々の活気に満ち、安心して商売やら観光やらを楽しめるような光景が目を閉じれば浮かんでくる。
そのような都市が完成することを心待ちにしながら、クリスティーヌが発案し、クレアが責任者として進めていく計画を女王として見守らねばならない。
夕陽に煌めく東の海を街道沿いの高台から眺めるマリアナ一行は、十分に眼下の絶景を堪能した後、王都コーテソミルへの帰還の途についた。
王都コーテソミルもまだまだ復興の半ばである。王国の象徴とも呼べる王都コーテソミルの復興とも同時並行に進めていく。金も人手も資材もいることが山積みとなっているが、優秀な家臣たちと一緒なら乗り越えていける。
マリアナはそのような希望を抱き、さらなる国民の幸せのために何ができるかを思案しつつ、騎乗して一週間近い道のりをゆっくりと南下していくのであった。
第93話「港湾都市計画」はいかがでしたでしょうか?
今回はクレア発案で港湾都市計画が開始。
そして、マリアナがセリアとセシリアを伴って視察も行っていました。
国内でも様々な動きがありましたが、今後もどうなっていくのかを見守ってもらえればと思います……!
――次回「戦姫の養子」
更新は明後日、4/25(火)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!




