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ランドレス戦記〜漆黒の女騎士は亡き主の意思を継ぎ戦う〜  作者: ヌマサン
第4章 帝国との激闘
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第85話 任重くして道遠し

どうも、ヌマサンです!

今回は膠着した戦況を打破すべく、ロベルティ王国側に動きがあります……!

はたして、どのような動きが起こるのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

それでは、第85話「任重くして道遠し」をお楽しみください!

「レティシア、敵は本陣を南へ下げたみたいだけど、ここからどうしましょうか?」


「そうだね……ここは積極的に攻めるべきかな」


「ですが、敵は5万を超える大軍。正面から決戦を挑むとなると、こちらの被害も甚大になりますよ」


「だったら、敵の本拠地を不意に襲ってしまうんだよ」


 レティシアがナターシャに提示した策はシンプルなものだった。ダルトワ領において中心地であるヌティス城を少数精鋭で奇襲するという内容であった。


「なるほど、敵の本隊を迂回しての奇襲ですか……」


「ですが、この事が敵に知られれば全滅の憂き目にあうことは必定でしょう」


 なんとも危険度の高い中入り戦法だが、下手に真正面からぶつかるよりは効果がありそうだとナターシャも判断した。残る問題は誰が兵を率いて敵の本拠地であるヌティス城へと向かうかという一点だった。


 しかし、危険すぎる役回りであることが誰の目から見ても明らかであるため、進んで行くと申し出る者は出ず、皆がだんまりを決め込んでいた。


「じゃあ、オレに行かせてくれ」


 そんな首脳陣を見回して声を上げた若者が1人。真紅の髪に藤色の瞳をしている新参者、リカルド・セミュラであった。


「リカルドですか。本当に行くつもりですか?」


「ああ。誰も行かねぇんなら、漢として行くしかねぇだろ」


「ですが、なかなかの危険が伴います。下手をすれば死ぬことも……」


「分かってるよ。そんなことを言うくらいだったら、全軍を挙げて助けに来てくれ。それに、このままにらみ合ってても埒が明かねぇだろ」


 ナターシャとレティシアがリカルドに危険が高い作戦であることから、止めにかかるが、リカルドは退かなかった。そんなリカルドの覚悟を受けて、2人は任せることを決断。


「じゃあ、リカルドは騎兵1万を率いて敵の本営を東から迂回。そのまま南へ進んで、ヌティス城へ奇襲。軽く町に火をつけたらそれ以上の戦果は望まず、すぐに撤退するのです」


「分かってるって、任せとけ!」


 リカルドはニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、1万の大軍を率いて出陣。初めて戦場で手柄を得る好機を得たリカルドは兵士たちを励ましながら、カルロッタ率いる帝国軍の本営を無事に東から迂回して南下。


 ――しかし、ここでナターシャやレティシアも危惧していた事態が発生する。


「カルロッタ様!敵勢およそ1万がヌティス城へ向け、猛進しております!」


「……そう、かなりマズいことになったわね」


「ヌティス城にはユルゲン殿のご息女であるジュリア殿が1万1千で詰めているわけだし、落とされることはないと思うけど……」


「ヌティス城が奇襲を受けたとなれば、兵の士気にも関わるわ」


 カルロッタはローレンスと示し合わせ、カルロッタ本隊1万3千とローレンス隊9千がリカルド隊を追うように南下を開始したのだった。


「ユルゲン様、ここは私たちで守り抜くことになりますね」


「いかにも。残る3万でナターシャ率いる4万8千を釘付けにせねば」


 留守を任されたのはカルロッタの実妹であるミルカを大将とし、副将には戦慣れしたユルゲンが務めていた。


 さらに、ユルゲンはヌティス城にて留守居役を務めている娘のジュリアにも兵の半数を北上させ、カルロッタ率いる大軍と南北から挟み撃ちにするように書状をしたためた。


 そうしてユルゲンとミルカの両名が留守を守っている時。ナターシャ率いる大軍は動いた。


「申し上げます!敵はフェルネ砦を焼き払い、全軍を挙げて南下してまいります!」


「ぜ、全軍を挙げて……ですか?」


「これはマズいな。すぐにでも陣形を整えて、迎え撃たねば……!」


 ナターシャ率いる4万8千の迅速な動きはレティシアが仕組んだもの。リカルドを中入りさせ、敵の目がそちらに向けられている間に一気に敵の本営を潰してしまおうという策なのである。


 リカルドにも知らせていない作戦であるが、だからこその効果を示していた。かくして、ライオギ平野での戦端が開かれた。


 トラヴィスもこの頃には気力も回復しており、元より預かっていた先鋒部隊1万を率いて、ユルゲン隊9千と激突。残るミルカ隊2万1千はユルゲン隊の東に布陣し、次鋒であるマルグリット率いる1万5千を迎え撃った。


 真っ先に戦端を開いたトラヴィス隊とユルゲン隊は数的に拮抗しているうえに、互いに戦の経験が豊富である名将ということもあって、両軍一進一退の攻防を繰り広げていた。


「兄者、敵の勢いが凄まじい!ノーマンも負傷したから、後方へ下げざるを得なくなった……!」


「そうか、ノーマンもまだまだ若いな。血気にはやるだけでは戦には勝てん。ローラン、ここは一旦下がって……」


 そんな折、ユルゲン自らが最前線で大剣を振り回し、次々と大将首を挙げているという知らせが入った。これを聞き、ノーマンが負傷した身でありながら、前線に戻りたがっているとも。


「ローラン、頼めるか」


「おう!任せとけ!」


 数多いる人馬がぶつかり合う白兵戦の中、頭にハチガネを巻き、緑色の鎧を身に纏っている中年の将軍がロベルティ王国兵を薙ぎ伏せながら縦横無尽に暴れ回っていた。


 そんなユルゲンの前に、鎧も付けず灰色の軍服に水色の羽織を身に着けた壮年男性が立ちはだかる。両者ともに敵兵の首を大剣で跳ね飛ばしながら進んできた万夫不当の猛者であることは確か。


 戦場で出会った2人の猛者は互いに名乗り合った後、馬を寄せて大剣をぶつけ合う。ローランは風を、ユルゲンは冷気をそれぞれ得物に纏わせる。


 翡翠の風と水色の冷気は幾度となく衝突を繰り返すも、ぶつかっては互いを弾き返し、また衝突する。そのような凄まじい一騎打ちも、100合近い打ち合いの末、ローランは敗れた。


 ローランも致命傷を負うことはなかったが、所々に切り傷を受けていた。しかし、それはユルゲンとて同じこと。


 正しくは痛み分けという形であったが、ユルゲンが一騎打ちで勝利したことで帝国兵は闘志を燃え上がらせ、トラヴィス隊に死をも恐れぬ猛攻を仕掛けていた。それをトラヴィス隊で食い止めるのがやっとという状態。


 それを受け、ナターシャは家臣のモレーノに6千の兵を与えて、トラヴィス隊への加勢へ向かわせた。この6千の加勢をもって何とかユルゲン隊の前進を食い止めることに成功したのであった。


「ナターシャ、思っている以上に苦戦してるね……」


「そのようですね。特にユルゲン隊には手を焼いています。ですが、マルグリットの方はミルカを圧倒しているようです」


 マルグリットは騎馬民族であるサランジェ族の長。騎兵を用いての戦であれば、ミルカなど足元にも及ばなかった。数で優るミルカ隊を機動力と展開力をもって圧倒、ミルカ隊はすでに後退を始めていた。


「ナターシャ様、ここはマルグリット隊に加勢し、ミルカ隊を退け、我々の本隊でユルゲン隊の退路を遮断。一気に包囲殲滅を加え、ユルゲンの首を挙げておくのが良いんじゃない?」


「そうですね。トラヴィス将軍でも手こずるほどな将軍、生かしておいてはダルトワ領侵攻も満足に進まないでしょう」


 ナターシャも名将トラヴィス相手に押し返すの奮戦ぶり、一騎打ちでローランを破るほどだというユルゲンに警戒感を露わにしていた。


 こうしてライオギ平野での戦いが混乱を極める中、ヌティス城への奇襲を実行するべく高い機動力を誇る騎兵のみでひたすらに南下を続けていた。


 そんなリカルドの前に、南北から帝国軍が押し寄せる――!

第85話「任重くして道遠し」はいかがでしたでしょうか?

今回はリカルドがヌティス城へと奇襲へ向かっていました。

そして、ナターシャたちの方も援護するような形で戦端を開いたわけですが、思っているような戦果は挙げられていませんでした。

さらに、リカルドにも敵が迫りつつあるわけですが、リカルドたちがどう切り抜けるのか――

――次回「抜け駆けの功名」

更新は3日後、4/1(土)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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