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ランドレス戦記〜漆黒の女騎士は亡き主の意思を継ぎ戦う〜  作者: ヌマサン
第4章 帝国との激闘
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第77話 最後の奉公

どうも、ヌマサンです!

今回はコリンとアーネストの回になります!

はたして、2人はどんな決断をするのか、見守っていてもらえれば幸いです!

それでは、第77話「最後の奉公」をお楽しみください!

「……さすがにここまで来れば、追っても来ないだろう」


 ケリトデリ盆地の戦いから数日後。コリンたちはシムナリア丘陵地帯の東にある山の1つに身を潜めていた。


 敗走してしばらくは追撃も激しかったが、昨日あたりからは追撃の手もピタリとやんでいる。理由としては、追っ手がヴォードクラヌ王ルイスへと集中しているからに他ならない。


 ルイスが早々に討ち取れていれば、コリンにまで追っ手は回って来ただろうが、コリンに追っ手が来ないのを見れば、ルイスが無事なのが分かる。そちらの方が取る価値のある首だからだ。


 逃げる途中にシルヴィオが戦死したという一報が耳に入り、コリンとしては責任を感じてもいた。


 生きていたのなら合流して再起を図ることもできただろうが、討ち死にしてしまったのなら、それは叶わないこと。


「コリン様、これからどうなさるので?」


「オレか?オレは……逃げる。ロベルティ王国まで逃げれば身の安全も保障されるだろう。それに、ルイス様のところに戻っても、勝ち目などない。落ち目の国に尽くすほどの忠義の心は持ち合わせていないからな」


 そう、コリンはロベルティ王国へ逃げ延びることを考えていた。ロベルティ王国ならば、帝国にも対抗しうる軍事力がある。なにより、ロベルティ王国でまた登用されれば、帝国軍と再戦し、ケリトデリ盆地の戦いでの雪辱を果たすこともできる。


 そのように考えた上で、ルイスの元ではなく、ロベルティ王国へ向かうことを決断したのであった。


「そういうお前たちはどうする?家族の元にでも戻るのか?」


「へぇ、戻れるんならそうしてぇもんです」


「ま、大丈夫だと思うぞ。お前たち雑兵の命まで取ることは帝国もしないだろうからな。さすがにオレは捕まったら打ち首にされるだろうが、お前たちは大丈夫だ」


 コリンからもそう言われ、兵士たちは故郷に帰ることにするとコリンへ伝えた。


「コリン様はヒメネス家には戻らないので?」


「ああ。第一、戻りたくもない。所詮、オレはよそ者だからな」


 コリンは片田舎の貧乏貴族の3男だった。だが、3男でありながら水魔紋という紋章を持っていたことで、長男次男から疎まれていた。長男次男は持っていないのに、だ。田舎の貧乏貴族でも、家督の争いくらいはある。


 それゆえに、何度も兄たちから暗殺されかけたが、そのたびにコリンは知恵と武術でもって切り抜けてきた。そんな折である。


 ヴォードクラヌ王国でも影響力の大きいヒメネス家の当主。ホルヘ・ヒメネスがやって来たのは。


 ホルヘはコリンの生家に押しかけてくるなり、養子にもらい受けたいと当主であるコリンの父に申し出た。父は迷ったが、コリンを追い出したい兄たちからあることないことを吹き込まれ、厄介払いされる形で養子に出された。


 こうして跡取りのいないホルヘの養子としてヒメネス家に入ったコリンであったが、ヒメネス家でもよそ者扱いされることとなる。


 そして、ヒメネス家の当主であるホルヘがシムナリア丘陵地帯の戦いで戦死し、コリンがヒメネス家の当主となったわけだが、家中の者は誰一人として従わない。


 コリンは家中のまとまりに欠ける状態の中、ケリトデリ盆地の戦いに臨んでいたわけだが、今ここまで彼に突き従っている者の中にヒメネス家の者は1人としていない。


 ――ヒメネス家の者どもより、雑兵たちの方がオレによく尽くしてくれている。


 コリンは自らの人望の無さを呪うつもりはない。正直、ヒメネス家の者たちに忠節を尽くされる方が気持ち悪いくらいだ。


 ともあれ、実家を追われ、ヒメネス家にも安堵できる居場所はない。そんな彼にとって、家のことなどどうなろうが知ったことではなかった。ゆえに、冷静にロベルティ王国へ逃げるという選択肢を取ることができたとも言えよう。


「そうでやしたか。それで、コリン様はロベルティ王国へ」


「ああ、オレが今家に戻ったら、オレの首1つで命乞いと所領安堵を願い出ること間違いなしだ」


 ケラケラと笑いながらコリンは言うが、なかなか笑いながら言えることではない。そんな時、コリンの前に1人の男が姿を見せた。


「コリン・ヒメネス。久しいな」


「アーネストか。シルヴィオの爺さんへの伝言、ちゃんと伝えてくれたみたいだな」


「……結果は散々だったがな」


 アーネストはシルヴィオに伝言を伝えた後は行動を共にしていたが、すぐ隣にいたシルヴィオが討たれた際、帝国軍に降らず、持てる技のすべてを出して死地を切り抜けたものであった。


「お前はどうする?ルイス様の元へ……」


「戻らねぇよ。戻ったところでどうしようもない」


「そうか。オレは最後の奉公をするつもりだ」


「最後の奉公……ねえ?」


 コリンはアーネストの気持ちを察した。だが、それを確かめる前に、アーネストはこつ然と姿を消していた。


「あの野郎、いつも不意に出てきて、不意に消えるヤツだな。まぁ、もう会うこともないだろうがな」


 右、左と周囲の木々を見回した後、コリンは再び倒れた大木の幹に腰かけた。それからしばらく茜色に染まる空を見ながら、眠ることにした。もちろん、兵士たちにも寝るように伝え、見張りの順番を手早く決めた上での睡眠だ。


 コリンが山の中で眠りについた頃。アーネストは快進撃を続けるフレーベル帝国軍の本陣にいた。


「何奴!」


「……名乗るほどの者ではない」


「その殺気、オレを殺しにでも来たか」


「察しが良いようだが……」


 刹那、短剣を逆手に持ち突撃するアーネスト。狙うは帝国軍の総大将、ジェローム・コルテーゼ。


 ジェロームは愛用の大剣を手元に寄せる暇も無く、アーネストとの命の駆け引きに応じる。


 アーネストの短剣を用いた体術に、さすがのジェロームも手こずった。ジェロームは大剣で力任せに敵を倒すことが得意なのだ。その得意の大剣を使わずにアーネストほどの手練れを相手するのは骨が折れる。


 しかし、アーネストの動きを瞬く間に見切り、武器がないなりに素手で応戦する。だが、短剣を操るアーネストの方が終始有利であり、ジェロームも防戦一方となっていた。


「フン!」


「うぐっ……!」


 アーネストの短剣での斬撃を左腕で受け止め、空いている右で鳩尾を殴り飛ばしたのである。ジェロームの無茶苦茶な戦いに、アーネストは打ち負かされた。内臓を潰されるほどの一撃に、さすがのアーネストも立ち上がることはできなかった。


「オレの短剣を受けることにためらいはなかったのか……」


「ためらいはあった。だが、ああでもしなければ素早い貴様にオレの拳は当たらん」


 流血する左腕をチラリと見やりながら、ジェロームは無傷の右腕で後頭部をかいた。腕一本を犠牲にして、アーネストを倒そうなど、思いついても実行に移せるものなど天下広しといえど、そうはいない。


 そんなジェロームの肉を切らせて骨を切る一か八かの反撃にアーネストは敗れた。それこそが紛れもない事実であった。


「ルイス様……申し訳……ありません……!シャルル様、エルンスト様……!今、そちらに――」


 忠義な暗殺者、アーネストはここに散った。享年37。


 彼を倒したジェロームは腕の治療を施すよりも先にアーネストを丁重に弔うよう、部下たちに命じた。それと同時に、本陣の警備を強化する旨を伝達。さらに、参謀であるシリルにも身辺には気を付けるように使者を派した。


 そんな帝国軍の本陣で総大将が暗殺されかけるという事件がありながらも、フレーベル帝国軍の侵略は止まるところを知らず、瞬く間に王都レシテラにまで到達するのであった。

第77話「最後の奉公」はいかがでしたでしょうか?

今回はコリンの過去、ロベルティ王国へ逃げるという決断。

さらには、アーネストの最後の奉公。

はたして、北上してくる帝国軍を前に、ヴォードクラヌ王国の中心人物たちはどうなってしまうのか……!

――次回「命は天に在り」

更新は3日後、3/8(水)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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