表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランドレス戦記〜漆黒の女騎士は亡き主の意思を継ぎ戦う〜  作者: ヌマサン
第3章 新たなる王国
69/187

第69話 大義親を滅す

どうも、ヌマサンです!

今回はロベルティ王国周辺の状況の把握から始まります。

そして、そんな折に一大事件が勃発します……!

はたして、どんなことが起こるのか。

それでは、第69話「大義親を滅す」をお楽しみください!

 ロベルティ王国は一躍大国となった。現時点で有する兵力はゆうに14万を超える。とはいえ、国境を接しているフレーベル帝国は32万を超える兵力を有しているため、帝国にはまだまだ敵わない。


 だが、西のヴォードクラヌ王国は着々と領土を奪回しつつあり、兵力はすでに3万を超える。すなわち、ヴォードクラヌ王国の兵力を併せれば17万という数になる。


 さらに、現在南でフレーベル帝国を苦しめているヴァルダロス王国は9万という兵力を保有。帝国は現在、南北に26万の敵を抱えるという苦しい状況となっていた。


 ナターシャたちロベルティ王国はそんな中で、旧クレメンツ教国領の南に位置するダルトワ領へと次なる狙いを定めていた。ダルトワ領は、帝国三将の1人、カルロッタ・ダルトワの所領である。


 ダルトワ領は平野が大半を占めており、水源豊かで肥沃な土地柄から帝国最大の穀倉地帯となっている。さらに、ダルトワ領だけでも7~8万の兵を動員できる。


 だが、ここを奪取することが叶えば、帝国最大の穀倉地帯を抑えることができ、さらには西進すれば帝都フランユレールへとなだれ込むことも可能となる。


 すなわち、ダルトワ領こそフレーベル帝国とロベルティ王国の戦いにおいて、もっとも重要な地となる。


 そんなダルトワ領へと侵攻する前に、国家としての体制を整えるべくマリアナたちが苦心している折。驚愕の報せが舞い込んできた。


「申し上げます!アマリア様がルグラン邸へ4百の手勢を率いて攻め込みました!ルグラン邸は激しい炎に包まれております!」


 ルグラン邸とは、かのジェフリーの屋敷である。現在はジェフリーとアマリアの母、アリソン・ルグランとジェフリーの妻と息子が監禁されている。


 そこをジェフリーの妹であるアマリアが手勢を率いて攻撃したというのである。一体、何事かと謁見の間はどよめきに包まれた。


「マリアナ様、私が様子を見て参ります!」


「頼んだわよ、ナターシャ」


「はい……!」


 ナターシャはモレーノを始めとする百ほどの供回りを連れ、ルグラン邸へと急行。ルグラン邸は報告通り、業火に包まれていた。周りにいる民衆から話を聞く限り、アマリアの命令で弓兵が火矢を撃ち込んだのが出火の原因のようだった。


「ナターシャ様、どうやらアマリア殿は自らサーベルを片手に燃え盛る屋敷へと斬り込んでいったと……!」


「モレーノ!それは真ですか!?」


 モレーノはこくりと頷くのみ。あまりのことに、言葉が喉に詰まったかのようであった。対して、ナターシャは自ら魔剣ヴィントシュティレを手に、自らも業火に包まれているルグラン邸へと突入していった。モレーノも黒マントをなびかせながら、ナターシャの後を追っていった。


 モレーノは銀色の大鎧を身に纏っているが、ナターシャは鎧も身に着けていない。それを案じて、モレーノもいざという時には自らの身を盾とする覚悟で続いていったものである。


 その頃、アマリアは屋敷の奥で監禁されている母と兄嫁、甥っ子と対面していた。


「アマリア!?これはどういうこと!?」


 母からの言葉にアマリアは無言で返す。そして、ずかずかとアリソンの前へと進んでいくアマリア。アリソンが口を恐怖で震わせている間に、一刀両断。


 手にしたサーベルで左切り上げを放ち、アリソンの右わき腹から左肩にかけてを一息で斬ってしまったのである。さらに、恐怖で地面に座り込んでいたジェフリーの妻とまだ幼い息子をまとめて斬り捨てた。


 大上段からの斬撃で兄嫁と甥っ子を始末した後、アマリアが呆然としているところへ、ナターシャとモレーノがようやく追いつく。


「アマリア!これは一体どういうことですか!?」


 ナターシャが目にしたのは、呆然とサーベルを片手に立ち尽くすアマリア。その足元に血を流して倒れているアリソンと、ジェフリーの妻子の姿。


 すぐさまモレーノが息があるかを確かめに向かうが、すでに死亡していることを確認。モレーノが首を横に振る様を見て、すべてを察したナターシャはアマリアへと詰め寄る。


「お姉さま、愚兄ジェフリーは自らの父を殺め、クライヴ殿を殺しました。挙句、マリアナ様を玉座から追放し、自ら王を僭称する暴挙を行なったのです。このような身内の恥は、ボクの手で――」


 ナターシャはアマリアの頬を引っぱたいた。その手にこめられた衝撃で、アマリアはハッと我に返ったような心持がした。


「……アマリア。確かに、あなたの兄は取り返しのつかないことをしでかしました。ですが、あなたが殺した者たちは、あなたの実母と兄嫁に甥っ子です。この者たちが一体、何をしたというのですか……!」


 罪なき者を殺した。そのことについて、ナターシャは素直に湧き上がった感情をアマリアへとぶつける。アマリアも自分がしでかしたことを思い返したのか、瞳から雫がこぼれ落ちる。


「ナターシャ様、ここは危のうございます。ここは離れるべきでしょう」


 片眼の忠臣はナターシャとアマリアにルグラン邸からの脱出を提案。この場で撮るべき選択肢を示したモレーノにナターシャは従った。アマリアの手を引き、3人でルグラン邸を脱出したのである。


 その後、アマリアは女王マリアナに事の次第を説明すべく、ナターシャに連れられて王城の謁見の間へと連れられて行った。マリアナはアマリアの行なったことについては何も言及しなかった。


「アマリアには、時間が必要です。10日間、屋敷で謹慎することを命じます」


「……承りました」


 言葉短かにマリアナから謹慎の命令を受けたアマリアの声は涙声であった。その言葉の潤いに、すでに自らのしたことを反省していることは謁見の間にいる誰もが理解できた。


 かくして、ロベルティ王国が誇る若き女将軍アマリア・ルグランは王命により、10日間の謹慎処分となった。


 その後、業火に包まれていたルグラン邸は焼け落ち、崩れ落ちた屋敷跡からアリソンとジェフリーの妻子と思われる遺骨が回収され、丁重に埋葬された。これをもって、名家ルグラン家はアマリア以外、全員が死に絶えたのである。


 また、ルグラン邸にはジェフリーが生前に収集していた陶芸品や絵画を始め、少数しか出回っていない貴重なワインなども共に灰と化してしまっていた。このことには、多くの芸術家や画家、ワインコレクターが嘆いたという。


 ジェフリーはロベルティ王国で起こした事件を鑑みれば、一反逆者だが、芸術や美術を愛する者たちからは優れた目を持つ収集家として認識されており、そういった者からの献花が絶えなかったというのは、別の話である。


 ともあれ、その後は大きな事件が起こるような事はなく、身も凍えるような真冬にロベルティ王国は突入した。


 その中で、辛く長い1年は終わりを迎えた。二度目のクレメンツ教国への遠征、帝国からの従属破棄、ジェフリーの反逆による多くの貴族の死。


 思い返せば様々なことがあった一年であったが、ロベルティ王国にとっては大いなる躍進でもあった。『禍を転じて福と為す』ことができるか否か、それは今後にかかってくることとなろう。


 はたして、次なる年はどのようなことが起きるのか。未知数であるが、ナターシャたちロベルティ王国はさらなる躍進を遂げることができるのか。乞うご期待。

第69話「大義親を滅す」はいかがでしたでしょうか?

今回はヴォードクラヌ王国など周辺国の状況も明らかになりました。

さらに、アマリアが母と兄嫁、甥を殺すという事件をしでかしてました。

この大事件後、アマリアがどう動くのか、注目していてもらえればと思います……!

――次回「新たなる体制」

更新は3日後、2/12(日)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ