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ランドレス戦記〜漆黒の女騎士は亡き主の意思を継ぎ戦う〜  作者: ヌマサン
第3章 新たなる王国
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第57話 青天の霹靂

どうも、ヌマサンです!

更新が遅れてしまい申し訳ありません……!

今回は平和な回かと思いきや、タイトル通りの青天の霹靂が。

はたして、何が起ころうというのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

それでは、第57話「青天の霹靂」をお楽しみください!

 季節は秋の暮れ。冬の足音も聞こえ始めた頃。


 ナターシャはといえば、レティシアたち旧クレメンツ教国に仕えていた者たちと共に、聖都コーテソミルの復興を始め、占領地の統治にいそしんでいた。


 対して、ロベルティ王国本国の方では幸せな出来事があった。ついに、クライヴとセシリアの間の子が生まれたのである。名は『ミシェル』と決まった。


 また、セシリアもクライヴとの婚約者ではなく、今ではクライヴの妻という扱いである。家名も『ハワード』から『ランドレス』と改めている。


 結婚式の方はクライヴの仕事が忙しいことや、クライヴの姉であるナターシャや、セシリアの父であるトラヴィス、叔父のローラン、従弟のノーマンといった親族が出征していることも重なり、延期となっている。


 結婚式が行われる前に第一子が誕生したわけであるが、その一報に女王マリアナも宰相セルジュもこの上なく喜び、心から祝福していた。そんな幸せな空気の中、クライヴは毎日職務に忙殺されるような日々を送っていた。


 よって、ミシェルの世話は母親であるセシリアがかかりきりであったが、クライヴの母であるシャノンも手伝っているため、子育ての方は目立った問題は起こっていなかった。


 嫁姑問題が大きな壁になりそうなものだが、セシリアとシャノンの2人に関して言えば問題はなかった。


 互いに武人肌であることもあり、なにかと馬が合う。セシリアの温泉の話や、シャノンの筋力トレーニングの話など、お互いに楽しそうに話しているという微笑ましい光景が広がる。


 険悪とは程遠い嫁姑の間柄であることには、遠征に出発する前のナターシャもホッとしていた。なにより、ランドレス家もハワード家も長きにわたり家族ぐるみの付き合いがあるため、互いにどんな人かを良く分かっていることが大きいといえよう。


 さらに、吉報は続く。セシリアが早くも2人目の命を授かったのだ。


 吉報に続く吉報。そんな幸せな日々がずっと続くと思っていたある日。雲一つない晴天である。そんな日に、王宮に傷だらけの兵士が駆け込んできた。その兵士は帝国領との西側の境を守る砦の兵士だという。


「一体、何があったの!?」


「申し訳ありません……!帝国軍に砦を急襲され、支えきれず陥落!」


「何っ!?帝国軍が!?」


 まさか帝国軍に攻められるとは思いも寄らぬことであった。このことには傍らで聞いていた宰相セルジュも顔面蒼白。マリアナも昏倒しそうになりながらも、なんとか踏みとどまったような状態である。


 伝令として駆け込んできた兵士も報告を終えるなり、力が抜けたのか、そのまま絶命してしまった。


 一体、帝国軍がどんな理由で攻めてきたのか、原因を究明する必要もあるが、それより先に王都テルクスの守りを固める方が先であった。


 報せを聞き、弾かれるようにクライヴが各所との調整に入る。曰く、王都の城門の守りは西門にはセルジュの嫡男ジェフリーを、北東の門にはクライヴの家臣であるモレーノ、南東の門にはモレーノの嫡子ダレンが配置された。


 その後も駆け込んでくる伝令たちの情報を照らし合わせれば、帝国軍の数は1万8千。騎兵が中心の部隊編成だという。騎兵が中心であれば、城攻めには向いていない。むしろ、野戦であれば圧倒的な機動力で敵を制圧してしまうことだろう。


「セルジュ、ここは籠城しかないのかしら」


「そうなるかと。こちらの王都に残る兵士は3千ほど。野戦など論外でしょう」


 王都テルクスを帝国軍が包囲し始めていた。その頃、玉座の間では貴族たちが慌てふためく中、マリアナとセルジュは冷静に現状と対策を論じていた。クライヴは各所との調整のため、玉座の間にはいない。


 しかし、次にクライヴが戻ってきた際に持ち込んだ情報は、さらなる絶望を叩きつけるに等しいものであった。


「マリアナ様!今すぐここをお逃げください!」


「クライヴ!それはどういうことだ!?」


 クライヴの言葉の真意が分からず、玉座の間に戻って来たばかりのクライヴにセルジュが詰め寄る。だが、逃げるように言った理由を聞けば、血の気も失せるものであった。


「ジェフリー殿が西門を開け、帝国軍が続々と王都内に侵入しつつあります……!先ほど、モレーノとダレンにも部隊を引き連れて戻ってくるように伝令しましたが、間に合うかどうか……!」


 兵士の配置はジェフリー率いる西門の守備隊は1千。残る北東と南東の門は7百5十ずつ。残る5百の兵で王宮を固めているわけだが、西門から入って来た数だけでも、1万ほどだと言われれば、いかに絶望的な状況かが伝わるだろう。


「たった5百で王宮が守れるものか……!」


「どうすればよいのやらのぅ……!」


 居合わせた貴族たちも慌てふためくばかりで何の役にも立たない。


「ですから、まだ敵に王宮を包囲される前にマリアナ様だけでも逃がすべきだと申したのです!」


 時間がないという焦燥感、このままいけば自分たちは全滅するという恐怖、これらの感情が津波のように押し寄せてくる中、クライヴは懸命に口から言葉を吐き出す。


 マリアナも民を置いて王族が逃げるわけにはいかないと言って聞かなかったが、慌てふためくばかりだった貴族たちからもマリアナだけでも逃げるよう言われれば、折れるしかなかった。


 そうして、王宮の地下通路を使ってマリアナを王都西にある山の麓へと脱出させた。それに同行する兵は百にも満たなかった。だが、指揮を執るのは猛将としても名高いセシリアであり、副将としてシャノンも同行した。


「フロイド、君は文官だ。今すぐ逃げた方がいい」


「いいえ、家族をおいて逃げるわけにはいきませんから」


「ヘレナ殿とディーン殿も……あっ」


 フロイドの子息であるディーンは1歳にも満たない子供である。その上、妻のヘレナは病に臥せっており、逃げることなど不可能だ。


「ならば、ディーン殿だけでも……!」


 クライヴが必死に頼むも、フロイドは首を横を振るのみ。生まれたばかりのクライヴの子、ミシェルはセシリアが身重でありながらも小脇に抱えて共に脱出している。


「そうか、フロイド殿がそこまで言うのであれば」


「クライヴ殿、そこまで気遣っていただけたこと、感謝いたします」


 フロイドは深々と頭を下げる。それから、文官の彼は戦闘に参加することはできないため、速やかに戦場を離脱し、王宮の近くにいる家族の元へと戻っていった。


「セルジュ殿は逃げなくてもよろしかったのですか?」


「これも愚息が敵を王都に引き入れたため。その責を追わずに自分だけ逃げ延びようなどとは思わないさ。ケジメはつけなければならない」


 セルジュは意を決したような声と共に、堅く決意したのだと伝わってくる表情をしていた。セルジュも宰相であり、戦場には出ないが、慣れない鎧を着こみ、家宝の短剣を身に帯びていた。


「クライヴ殿、王宮をどうやって守るおつもりか?」


 残る4百と少々の兵士だけで迫りくる1万の兵を防ぐか。それを問われたクライヴは、玉座の間がある王宮の中心部のみに守りを集中させるという案を出した。


 どうせ4百程度の兵士だけでは、広い王宮を守ることなど不可能。よって、人数的に 守り切れる広さのみに、守る場所を絞り、1日でも長く持ち応えることを主旨とした籠城戦という結論に達したのだ。


「よし、クライヴ殿の策しかない!他の防御は捨て置き、王宮中心部に立て籠もるぞ!」


 セルジュが賛同の意を表すれば、他の貴族たちも賛同の意に並び始めた。


「この戦は負け戦も良いところ。全員が死ぬことは明白。よって、売国奴ジェフリーの如き臆病者は、速やかに退去してください」


 クライヴの言葉に、何名かの貴族は退出していったが、大多数の者は覚悟を決め、最後の戦に臨まんとするのであった。

第57話「青天の霹靂」はいかがでしたでしょうか?

クライヴとセシリアの間にミシェルが生まれ、早くも2人目がという時に、帝国軍の侵攻が開始。

はたして、残った4百程度の兵でどこまで戦えるというのか……

――次回「釜中の豆」

更新は3日後、1/7(土)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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