第53話 一挙両得
どうも、ヌマサンです!
今回はアマリアとフェルナンドの作戦から始まります……!
はたして、クレメンツ教国の命運やいかに……!?
それでは、第53話「一挙両得」をお楽しみください!
「何事じゃ!?」
「教皇様、敵が大門より内側に現れました!」
「だ、大門の内側じゃと!?」
その日、教皇パトリックは外の喚声に叩き起こされた。さらに、起床と同時に知らされた報せに全身を稲妻が駆け巡るかのような衝撃を覚えていた。
大門の外側ならいざ知らず、内側ともなれば大聖堂の目と鼻の先。敵の数にもよるが、大勢で押し寄せてきたのなら時間がない。
「おい、今すぐ司教を、ナンシーを呼ぶのだ!」
「ハッ!」
駆けこんできた聖堂騎士に司教を呼びに行かせた教皇は驚くべきことに逃げ支度を始めた。
そして、教皇に呼び出されて教皇の私室へとやって来た司教ナンシーが見たのは、荷物をまとめて逃げようとしている父の姿であったのだ。
「ちょっと、なんで逃げ支度をしてるのよ!」
「もはや敵はそこまで来ておる!もはやこれまでじゃ!神は我らを見放されたのじゃよ!」
部屋の中をぐるぐると回りながら手指を慌ただしくするパトリック。ナンシーはあきれた様子であったが、万が一のことを考えて逃がす方が良いと判断した。司教として、娘としての決断なのであった。
「ナンシー、後の事は任せたぞ!決して死んではならんぞ……!」
「うん、分かってる」
敵が侵入した大門とは大聖堂を挟んで正反対の位置にある門から教皇パトリックは逃亡した。護衛として聖堂騎士10名ほどがついていった。この程度の供回りなら目立つこともないと考えての決断であった。そして、ナンシー自身は真っ白な鎧を身に纏い、敵のいる大門へ。
その頃、大門はフェルナンドの手により、内側から開かれていた。たちまち、大門からロベルティ王国軍がなだれ込む。
80名の勇士と共に敵中へ遮二無二斬り込んでいくアマリアの猛勇に聖堂騎士はバタバタと斬り伏せられる。アマリアが敵の注意を引いているうちに、フェルナンドはやすやすと大門を開けることができたのである。
ともあれ、大門で始まった最後の戦も序盤は互角の戦いとなっていたが、次第にロベルティ王国軍の勢いに押され、昼前には大聖堂はごうごうと燃え盛る津波に呑み込まれていた。
窓という窓から炎が内側へと突き破ってくる。それにより、大聖堂の側にいた者たち敵味方問わず火だるまとなる。だが、燃え盛る大聖堂はクレメンツ教国の象徴とも言える建物。
その光景を見た者たちは愕然とし、その中にはこの世の終わりかのような表情を浮かべる者もいたほど。とりわけ、教会関係者は神に救いを求めて火の中へと飛び込んでいく者まで出始めていた。
そのような有り様なのであるから、クレメンツ教国側の指揮は乱れに乱れ、聖堂騎士も大半が討ち死に、残る者も武器を捨てて捕虜となる道を選んだ。
こうして、アマリアとフェルナンドの活躍で大門が開かれてから6時間も経たずして、大聖堂は灰燼に帰した。教皇パトリックも司教ナンシーも遺体は見つからず、行方不明。
レティシアからもここで2人を逃がしてはならないと励まされ、ナターシャは草の根分けても探し出すよう、全軍に通達。夕方には教皇パトリックの首がナターシャの前に献上された。
教皇パトリックを討ち取ったのは他でもないユリアであった。話を聞いてみれば、大聖堂の裏から出てきたのを偶然見つけ、部下を引き連れて後を追い、鹿や猪でも仕留めるかのように弓で仕留めたと白状した。
「ユリア、シドロフ王ビクトルに続いて、教皇パトリックまでも射殺するとは、著しい戦果ですね。ご苦労様でした」
「……これくらいしか貢献できることないから。残っている司教?とかいうのも見つけ次第、弓で仕留める」
「頼みましたよ、ユリア」
ユリアは再び愛用の弓を引っ提げて司教ナンシーを討ち取るべく、出撃していくのであった。
「それにしても、終わってみればあっけないものですね……」
「まあ、戦争なんてそういうもんだし。でも、本番はここからだよ」
「そうですね。まずはこの、聖都コーテソミルを復興させなければなりません。なるべく元の姿に近い形で。そして、人々がまた平和に楽しく暮らせるように」
レティシアはナターシャの思いつめたような表情を見て、気を張り過ぎていると注意した。確かに戦が続いたこともあり、ナターシャは気を張り詰めている面がある。
「まずは、兵士たちを休めるとしましょう」
「それじゃあ、アタシはまだやることがあるから」
「やることですか?」
「うん。南にいるヴェルナーのところに行かないと」
ヴェルナーという名にはナターシャも聞き覚えがあった。10万近い帝国軍を幾度となく撃退してきた名将と名高い武者である。
「アタシとヴェルナーは幼なじみなんだよ。父親同士が仲良くてね」
「なるほど、幼馴染ですか。では、ヴェルナー殿にもよろしく伝えておいてください」
「うん、アタシと一緒にロベルティ王国へ仕えるように説得するつもりだから、そう伝えとくよ」
ニコリと笑うレティシアの表情は今まで見た中で最も明るく、弾けるようなモノを感じた。それだけレティシアはヴェルナーに会えることが嬉しいのだとナターシャも感じ取れるほどに。
「ナターシャ殿、戦の方は終わったな」
「これはトラヴィス殿。教皇は討ち取りましたが、まだ司教ナンシーが行方が分からぬ状況ですから」
「まずは、マリアナ様にこのことを書状にしたためて本国へ送ってはどうか」
「そうですね。レティシア殿やマルグリット殿、フェルナンド殿の処遇についても相談する必要がありますから、そうするとしましょう。後は帝国にもクライヴ経由で報告させることとします」
ナターシャはトラヴィスと談笑し、その後についての軍事的な対応を相談。その後、ナターシャは書状をしたためるべく、本営へと戻った。
トラヴィスは弟のローランと共に軍の采配を振るい、捕虜の対応や今後の軍の配備、撤退する部隊はどこか、色々なことを諸将らを集めて話し合った。
もちろん、遠征軍の総帥はナターシャであるから、ナターシャには話し合った内容をまとめ、報告を行ない、決断を仰いだ。
「分かりました。トラヴィス殿、色々とやっていただいたようで感謝申し上げます」
「いや、なに。俺にはこういったことしかできないからな。気にせんでくれ」
こうしてロベルティ王国、シドロフ王国、フォーセット王国、プリスコット王国の4カ国によるクレメンツ教国への遠征は一旦の終結となった。
その後は聖都コーテソミルの復興にあたり、10日ほどシドロフ王国とフォーセット王国、プリスコット王国の3カ国の兵士たちに行なわせた。その10日間の間に休息を取ったロベルティ王国兵が復興を引き継ぎ、3カ国の軍を本国へと引き上げさせた。
また、ロベルティ王国軍の中でもトラヴィス率いる南方守備軍1万を本国へと先に帰還させることとした。
すなわち、トラヴィスだけでなく、弟のローラン、その息子であるノーマンが帰路についたこととなる。ロベルティ王国軍で残ったのは主だったものではナターシャとアマリア、クレア、ユリアの4名。
他にも、マルグリット率いるサランジェ族の戦士たちも聖都コーテソミルの復興に進んで協力してもらえることとなり、復興計画は思いのほか順調に進んでいた。
さらには、レティシアの配下であるサイモンやクラウスが元聖堂騎士たちを説得し、復興作業を手伝わせることも了解を得ていた。
こうして聖堂騎士たちが手伝うのを見た聖都コーテソミルの住民たちも復興に協力し始めるといった好循環が起こり始めていた。
――そんな時であった。レティシアがヴェルナーを連れて聖都コーテソミルへと戻って来たのは。
第53話「一挙両得」はいかがでしたでしょうか?
ついに聖都コーテソミルが陥落ということで一件落着。
ナターシャたちも事後処理に追われていたわけですが、ここからどうなっていくのやら……
――次回「獅子身中の虫」
更新は3日後、12/26(月)の9時になりますので、お楽しみに!




