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ランドレス戦記〜漆黒の女騎士は亡き主の意思を継ぎ戦う〜  作者: ヌマサン
第2章 帝国への従属
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第41話 帰心矢の如し

どうも、ヌマサンです!

今回はルイスたちヴォードクラヌ領の兵たちの視点の話になります!

はたして、ルイスたちはどんな形で進軍していくのか……!

それでは、第41話「帰心矢の如し」をお楽しみください!

「ルイス様。村の者より酒と食事が貢がれて参りましたが……」


「くれるというのだ、貰っておいてやれ」


「ハッ!」


 ルイスは兵士を去らせ、椅子に肩肘をつく姿勢でウトウトと眠りの世界へと誘われようとしていた。


 今現在、ルイスたちフレーベル帝国軍は2万4千という大軍で中央の平野部の街道をひたすらに南下していた。街道が埋め尽くされるほどの大軍を目にした途中の村々は恐れをなし、帝国軍が来るなり貢物を持ってくるといった状況であった。


 その頃山間の道で村々から激しい抵抗に遭っている3国の軍からすれば、羨ましいことこの上ないだろう。


 ともあれ、その帝国軍の大将であり、此度の遠征軍の総大将を務めるルイスは弱冠20歳の若武者である。しかし、率いている2万4千の大軍は規律が取れており、軍紀が隅々にまで行き届いている何よりの証拠であった。


 そんなフレーベル帝国軍2万4千は、元はヴォードクラヌ王国軍に所属していた者たちばかり。すなわち、現ヴォードクラヌ領から出兵してきた兵士なのである。彼らは遠征の総大将がルイスであるから、遠征にはそこそこ乗り気であるが、進んで戦をしたいわけでもない。


 難しいところだが、そんな彼らを上手く束ねられているのはルイスの才覚はもちろん、元はヴォードクラヌ王家の血筋であることが一番大きい。


 また、遠征軍の副官としては、かのホルヘ・ヒメネスの養子であるコリン・ヒメネス、先鋒としてはシムナリア丘陵地帯で戦死したブレント・メニコーニの娘にあたるアレーヌ・メニコーニが当たっていた。


 加えて、留守居役として本国に残っているのはブレントの父であり、アレーヌの祖父にあたるシルヴィオ・メニコーニが詰めている。


 そんなヴォードクラヌ領のことはさておき、遠征の途上にあるルイス一行は順調に進んでおり、合流地点には予定日通りに到着できそうな位置にあった。


「ルイス様、とりあえず予定通り到着できそうだぜ?」


「おう、そうか。それなら良し」


「それで、いつ戦になるんだ?オレはよ、早く敵さんを殺したくって仕方ねぇんだ」


「まぁ、そう逸るな。合流した後は、クレメンツ教国が要する聖堂騎士団とやり合うことになるんだからな。それまでは大人しくしていろ」


 ルイスは剣の手入れをしながら、適当にコリンの相手をしていた。怠け者のルイスとは違い、争いごとを好むコリンはめんどくさい相手であった。


 そんな性格が真反対の2人ではあったが、なぜか馬が合い、何かと親しく交流していた。


 コリンは手にした弓を肩に担ぎながら、ルイスの前を去り、馬に乗ってどこかへ駆けていってしまった。そして、コリンと入れ替わるようにアレーヌがツーサイドアップにした空色の髪を揺らしながらやって来た。


 ルイスとしてはアレーヌと話すよりも、コリンと話す方が気が楽で良かった。アレーヌはルイスよりも6つ年上ということもあり、昔から説教臭い姉のような存在であった。


「アレーヌ、何かあったか?説教とかでなければ、いくらでも話は聞くぞ」


「だったら、話を聞いてほしいんだけど」


 足を横に向けていたルイスはアレーヌが説教で来たわけでないと聞くなり、足の向きをアレーヌの方へと変えた。アレーヌはそんなルイスの態度に呆れつつ、物見に出していた者たちから集めた情報をルイスに伝えた。


「ほう、聖堂騎士団が動き出したか」


「この分では私たちが到着するよりも先に聖堂騎士団がウルムクーナ川南に到着することになるんじゃないかしら?」


「……だな。ならば、明日からは無理のない範囲で進軍速度を上げるぞ」


「そうね、でなければ聖堂騎士団をロベルティ王国軍のみで迎え撃つことになるものね」


 ルイスはアレーヌに明日からの行軍予定の変更点を伝えた。アレーヌはそれを各隊に伝達する役目を引き受け、コリンをロベルティ王国軍営に先に派遣することとした。


 なにせ、本人も戦いに餓えているのだから、戦場に向かわせるにはもってこいである。それに、自分の周りが少しでも静かになるのだと思えば、ルイスも心がおだやかになったような心地がした。


 そうして、翌日から進軍速度を速めた帝国軍であったが、コリンには6百の騎兵を与えて先行させた。たった6百では大した戦力にはならないだろうが、大量の帝国軍の旗を持っていかせた。


 到着するなり、帝国軍の旗だけでも並べておけば敵も少しは怯むだろう。そう考えたのだ。


「ルイス様」


「ほう、アーネストか。何事かあったのか?」


 アーネストはルイスに仕える暗殺者である。動きが素早いことや、情報収集力にも長けているため、裏方として様々な仕事をこなしている。


 そんなアーネストは此度の遠征において、シルヴィオ共々、領地に残してきたのだが、そんな彼がどうしてここにいるのか。そんな疑問がルイスの頭をよぎっていた。


「シルヴィオ様よりの伝言でございます」


「伝言か。して、シルヴィオはなんと?」


 黒装束に身を包んだアーネストを馬上より見下ろしながらルイスは問うた。それに、アーネストも間髪入れずに返答する。


「先日、レシテラに帝国からの使者が参られ、『南からの侵攻は負け戦に終わったゆえ、北側も速やかに兵を退くべし』とおっしゃっており、その使者も近いうちにルイス様の元にも到着するだろうと」


「ははは、わざわざそんなことを伝えに参ったのか。だが、アーネストよ、大儀であった。シルヴィオにも伝言しかと聞き届けたと伝えてくれ」


「ハッ、それでは失礼します」


 そう言い残した次の瞬間にはルイスの姿は消えていた。突然出て来たかと思えば、こつ然と姿を消す。そんなアーネストという男をルイスは面白いと思っていた。


 ともあれ、南側からの侵攻に帝国軍は失敗したとなれば、残る戦力がすべて北へ投入されることとなる。


 ならば、ルイスが取るべき行動はただ一つ。


「アレーヌ!」


「ここに!」


 左方に控えていたアレーヌがルイスへと駒を寄せる。ルイスはアレーヌの姿を見て、ニヤリと笑みを見せた後、指示を飛ばす。


「全軍!ウルムクーナ川へと急ぐのだ!そこで一戦交えた後、国元へ帰還できることとなった!早く故郷に帰りたい者はついて参れ!」


 大笑いしながら馬を飛ばし始めるルイス。そんな領主の姿を見た兵士たちも我も我もと駆けだす。さらには、次の戦いが終われば帰れるという言葉に、帰りたいと思っていた兵士たちの心に火をつける結果となった。


 こうして進軍速度が当初の倍近くになったルイスたち帝国軍2万4千は聖堂騎士団よりも早くウルムクーナ川へ到着することに成功。


 この予想以上に早い到着にロベルティ王国軍の大将であるナターシャも驚愕することとなる。


 それはともかく、これでロベルティ王国軍とフレーベル帝国軍、合わせて4万はウルムクーナ川北部に陣を構え、来たる2万4千の聖堂騎士団との戦いに備えた。


 ルイスはすでに布陣を終えていたナターシャから、どのような作戦を行なうつもりなのかを聞きだし、『大いに結構』と笑いながら頷いた。


 そこで、ルイスはトラヴィス隊だけでは荷が重いだろうとコリンにも3千の兵を与えて橋を渡らせ、トラヴィス隊の西に陣取らせた。


 ――こうして手ぐすねを引いて待ち構える帝国軍とロベルティ王国軍は、聖堂騎士団を破り、無事に国元へ帰ることができるのか……!

第41話「帰心矢の如し」はいかがでしたでしょうか?

早く帰れると思うと、なんだかやる気が湧いてくるということは経験したことがある方もいるかもしれないですね……!

そして、迫りくる聖堂騎士団を迎撃し、南下してきたルイスたちは勝利することができるのか!

次回は決戦の前夜の平和な話になります!

――次回「意外な一面」

更新は3日後、11/20(日)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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