第18話 帝国軍との第一戦
どうも、ヌマサンです!
今回はいよいよ帝国軍との戦いが始まる回になります!
はたして、ナターシャたちはどのようにして帝国軍と戦うのか……!
それでは、第18話「帝国軍との第一戦」をお楽しみください!
――帝国軍8千が攻めてきた!
その第一報を受け、王都テルクスは厳戒態勢となり、大急ぎで防備が固められていた。
慌てて籠城支度をする中でも、敵に関する情報は時間が経つごとに集まっており、帝国軍8千を率いているのはポール・フレッチャーという若い将軍であること、そのポールなる将軍は帝国三将の1人、スティーブ・エリオットの配下であるといった情報であった。
正直、ナターシャは帝国軍8千と聞いた時、率いてきたのはヴィクター・エリオットといった帝国三将だとばかり思っていた。しかし、実際に率いてきたのは帝国三将の配下の武将であったことで、ホッと胸を撫でおろしていた。
「姉さん、帝国軍8千をどうやって撃退するつもりだい?」
「私にもそれは分かりません。ですが、敵将を討ち取ることさえできれば、残る8千など烏合の衆と化すことは間違いありません」
「つまり、敵中に分け入って敵将ポールの首を取ると?」
「……でなければ、戦が長期化するのは避けられないでしょう」
クライヴは確かにそうだとナターシャの意見に納得していた。だが、敵は8千いるのに対し、城内の兵は3千弱といったところ。城内の兵すべてを押し出したとしても、大将首を上げるのは極めて難しい。
「お姉さま、敵が王都を包囲し始めました……!」
ところへアマリアからの報告であった。ナターシャはすぐさまクレアを呼び、自らの手勢一千百を西門へ集めるように手配した。
「姉さん、まさかとは思うけど、たった千の兵で打って出るつもりかい?」
「もちろんです。敵は包囲し始めたところです。このまま何もしなければ、次々に増援が到着し、十重二十重に包囲されてしまいます。であれば、なんとしても今のうちに敵を崩す必要があります」
ナターシャの言葉にアマリアは目の色を輝かせながら、西門へと走っていった。対して、クライヴは最後まで反対した。よって、クライヴは西門へ残し、それ以外の者たちだけで進むこととなった。
「ナターシャ様」
「モレーノ。それにダレンも来ていましたか」
「はい。クレアから敵陣へ突撃すると聞いたものですから」
モレーノも武将として、敵陣へ斬り込むことに積極的であり、うずうずしているという様子であった。ダレンはモレーノに比べれば遠慮がちであったが、クライヴのように突撃を渋っている様子ではなかった。
このナターシャ隊出撃の動きはすぐにマリアナたち王宮にいる者たちの耳にも入った。
「さすがに打って出るのはマズいだろう。無謀な突撃はやめるよう、ナターシャ殿を説得するのだ」
宰相セルジュは息子のジェフリーを使いとして、西門へ向かわせたが、すでに西門は開かれ、ナターシャたちの姿はなかった。
「クライヴ。そなたの姉はもう出撃したのか」
「これはジェフリー殿。姉はたった今出撃しました。それはもう、ジェフリー殿と入れ替わるように……」
クライヴの言うようにナターシャが出撃した直後、ジェフリーがやって来たのである。まさしく入れ替わりという言葉がふさわしい。
勢いよく西門を飛び出していったナターシャたちは西門前に陣取るポール本隊2千と対峙していた。なぜ、2千しかいないかと言われれば、包囲する上で他の城門の方へも兵力を割いているからに他ならない。
ともあれ、両軍がにらみ合う中、帝国軍側から1人の大将が進み出る。風に青髪を揺らしながら陣頭に進み出た青年こそ、此度の寄せ手の大将ポール・フレッチャーであった。
「ナターシャ様、あれが敵将ポールのようです」
「クレア、私も陣頭に出ます。その間の指揮は任せましたよ」
突然指揮を任され驚くクレア。彼女が驚いている間に、ナターシャは愛馬の黒馬に跨り、陣頭へ躍り出ていた。
「あなたが此度の帝国軍の総大将ですか」
「ああ、そうだ。この俺がポール・フレッチャーだ。我が主君、スティーブ様よりこの地を平定するように申しつけられてきた。お前たちのような小国の雑魚、蹴散らすまでもない。速やかに降参すれば、手荒な真似はしないでおいてやる」
ポールの言葉を囃し立てるように「そうだそうだ、投降しろ!」「ポール様!もっと言ってやれ!」「早く王国の雑魚どもを皆殺しにさせてくれ!」といった有象無象の声がナターシャの耳に入って来た。
「その物言い。どうやらすでに勝ったつもりのようですが、それはいささか早すぎるのでは?」
「何?まさか貴様は、あの程度の弱兵で俺たち無敵の帝国軍に勝てるとでも思ってるのか?」
嘲笑と共にナターシャにかけられた声。その声にナターシャも心の中ではすでに堪忍袋の緒が切れていた。
「私も先日ヴィクター・エリオットとかいう帝国最強の戦士と戦いましたが、千五百の帝国兵を討ち取り、我々は無傷でここに帰ってくることができたのです。それを思えば、帝国三将ですらあのザマだったのです。開戦すれば、ここがあなた方の墓場になるでしょう」
この陣頭に立つ両者。お互いに表情は引きつり、互いの言葉で怒っているのは身に纏う雰囲気からも明らかであった。
「何を……!フッ、どうせ城内の者どもは亀のように引きこもる準備をしているのだろう?お前たちもそやつらを見習って甲羅にこもる亀のように縮こまっておれば良いものを!」
「フフッ、城内の者たちは8千の棺を用意しているのです。もちろん、あなた方が入る棺を……ですが」
ナターシャから浴びせられる屈辱的な言葉にポールは歯ぎしりをしていた。それもそのはず、先ほどから次々に浴びせられる言葉の数々。すなわち、この論戦はナターシャの方が優位であった。
「おい、先ほどそなたらはヴィクター様の部隊と戦ったと言っていたが、どうせ秘境にも飛び道具で戦うのみで、物陰で震えておっただけであろう?なぁ?」
ポールは味方を顧みながらナターシャへと言い返す。ポールの言葉に、帝国軍の兵士たちの間にドッと笑いが巻き起こる。
「私はこの剣でもって、ヴィクターの大剣と打ち合いましたが、結局勝負がつきませんでした。次に会った時は決着をつけたいと伝言を頼んでも構いませんか?ああ、死んでしまっては伝言も伝えることもできませんね」
負けじと言い返すナターシャ。彼女の言葉を聞いたクレアやアマリアたちは笑いながら、口々に帝国軍を罵った。
「フン、仮にヴィクター様がお前を仕留めきれなかったとすれば、どうせその色香で惑わしたのだろう?これだから女はずるいよなぁ?いざとなれば、胸を揺らせば助けてもらえるんだからな!」
半分笑いながらポールはナターシャの胸へと視線を落とす。ナターシャの分厚い黒の鎧は胸部が体のラインに沿っているため、胸部のふくらみが誰にでも分かるような造りとなっているのだ。
だが、ポールがその言葉を口にした途端、ナターシャの身に纏う気配が殺気へと変わった。
「なんだ、やる気か?剣に手をかけたということはそういうことで良いんだよな?」
「ええ、今にして思えば最初からこうしていれば良かったのでしょう。どうせ勝つのは私なのですから」
ナターシャが剣を鞘から引き抜くと、ポールもそれに優るとも劣らぬ速度で鞘から抜剣。両者、剣を片手ににらみ合っていた。
「よし、この際だ。俺とお前とで一騎打ちってことにしようぜ。勝敗がつくまでは配下の者には手出しはさせねぇ。それでいいな?」
「こちらも同じく、一騎打ちが終わるまでは手出しはさせません」
互いに兵士たちを制しながら、改めて距離をとった。馬を寄せての斬り合いであるが、最初から近いのでは一騎打ちとしては不足である。
ともあれ、一騎打ちをすべく一度距離をとった両者であったが、草木が風になびいた刹那。一気に馬を駆けさせ、互いの間合いに入ったところで即座に一騎打ちを始めるのであった。
第18話「帝国軍との第一戦」はいかがでしたでしょうか?
今回はナターシャとポールが一騎打ちをするというところで終わりでした!
もちろん、次回は一騎打ちから始まるので、次回で一騎打ちの結末を見届けてもらえればと思います!
――次回「罵倒の末の一騎打ち」
更新は3日後、9/12(月)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!