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第167話 ヌティス城下町へ

どうも、ヌマサンです!

新年あけましておめでとうございます。

今回はいよいよアスカルとティナがヌティス城下町へ到着します!

ヌティス城下町やヌティス城での二人の様子を見て、楽しんでもらえれば幸いです!

それでは、第167話「ヌティス城下町へ」をお楽しみください!

 朝から風呂で体を清めたアスカルとティナは、宿屋へ戻って出発の準備に取り掛かっていた。呑気に風呂屋へ行っていたが、別に時間に余裕があるわけではない。


「アスカル!準備はできてる?」


「ああ。今できたところだ。待たせてすまない」


 ティナは首をゆっくり横に振った後、スタスタと早足で歩き始める。アスカルも時間がないことは重々承知している。ゆえに、後に続くように歩き出す。


 受付で部屋の鍵を返却し、建物の外へ出たら、後はまたしても馬車の乗り場まで全力疾走。ここまでの旅路で何度も行ってきている行動であり、完全にアスカルも慣れてきていた。


 道は迷うほどでもなく、ほとんど一本道と言っても良かった。そのため、道に迷って時間を無駄にするようなこともなく、無事に馬車へ乗車。定刻通りに出発することができたのだった。


「いよいよ今日の昼過ぎにはヌティス城下町入りか」


「その予定よ。アスカルは何年も来てないってセシリア様から聞いているけど……」


「そうだな。2年か3年は来ていない。色々と忙しかったから仕方ないといえば仕方ない……というのは言い訳か」


「言い訳にしか聞こえないわ。本当に訪れるつもりがあれば、いくらでも予定を調整するだろうし」


 手厳しいティナの言葉に、思わず苦笑いするアスカル。だが、その指摘は間違ってはいない。むしろ、正論だ。忙しいことを言い訳にヌティスまで足を運ばなかったことくらい、アスカル自身よく分かっている。


「それにしても、王都コーテソミルへ来る途中に寄った時はどんな様子だったのか、聞いてもいいか?」


「ええ、もちろん」


 ヌティスへ着くまでの間、アスカルはティナからヌティス城下町のことや、領内の統治の状況など、話題は多岐にわたった。どれもアスカルは知らないことばかりであったため、疑問点も多く、自然と質問も増えて楽しい会話となっていく。


「そうだ、フォルトゥナートの話はしてなかったわね」


「フォルトゥナートのことか。馬術に興味があってサランジェ領にある学校に留学している話や、ラッセル殿の養嗣子になったという話はノーマン殿から聞いているが」


 サランジェ領にある学校に留学しているというところまでは、ニヤニヤしていたティナだったが、ラッセルの養嗣子になったことをアスカルが口にした途端、目を皿のようにしていた。


「えっ、ラッセル殿の養嗣子になった話も知っているの!?」


「そりゃあ、前に王都でノーマン殿と会った時に聞いたからな。その時に、ティナが剣術に打ち込んでいて、今は旧帝都フランユレールの剣術道場に住み込みで働いているって話も聞いたんだ」


「そうだったの……。知らないだろうと思って、驚かせるつもりだったのに」


「そりゃあ、残念だったな」


 別に勝負をしていたわけでもないのに、勝ち誇ったように笑みを浮かべるアスカル。負けて悔しいと言わんばかりに引きつった表情のティナ。だが、その雰囲気が長く続くようなことはなく、また楽し気な会話が再開されていく。


 そうして楽しい時間はあっという間に過ぎ、予定通りにヌティス城下町へ到着。碧霄の下、城下に降り立った二人は実家ともいえるヌティス城へと赴いた。予定では明日のつもりだったが、いざ来てみると今日にでも会いたくなってしまったのだ。


「緊急の予定がない限り、ワタシの両親やトラヴィス大叔父様もいると思うわ」


「そうか。とりあえず、行った方が早そうだし、行ってみるか」


 城下をゆっくり見て回りたいという気持ちを持ちつつ、まずはヌティス城で家族で対面することを優先した。


「まだ会うつもりはなかったけど、不意に会いたくなるのが家族ってものよね」


「そういうものなんだろうか。家族というのは」


「アスカルは違うの?」


「いや、違わないな。改めて考えてみると、オレもそうかもしれない」


 そんな包み隠さず本音を口にするアスカルに、思わず笑みをこぼすティナ。二人とも、王都コーテソミルで再会した時よりも自然体で接することができているのだが、両人ともそのことに気づいていないのが不思議なものである。


 そうして、ヌティス城の城門前まで来たアスカルとティナは、門番に取次ぎを依頼した。


「ティナ・ハワードよ。通してもらって構わないかしら」


「ハッ、これはティナ様お帰りなさいませ。して、そちらの御仁は……」


「アスカル・ランドレス。クライヴ・ランドレスとセシリア・ハワードの息子よ」


「はっ、大変失礼いたしました!ささ、お通りください。おい、開門だ!開門!」


 領主であるノーマンの娘ということで、ティナは顔パスといっても良かった。だが、アスカルはここ数年、戻ってきていないこともあり、そうはいかなかったのだ。


「領主の一族なのに、顔も名前も憶えられてないなんて……!」


「そんなに笑わなくてもいいだろう。そりゃあ、数年間顔も出してないんだ。こうなることくらい、オレも覚悟している」


 嘘である。アスカルの母・セシリアは領主の従姉であることから、領主の一族として歓待されると思っていた。


 そこへ、顔も名前もほとんど覚えられていないという事実が突きつけられてしまったのだ。ティナ相手には何でもないと取り繕っているが、内心かなり傷ついている。


「おお、ティナ様。お戻りを心よりお待ち申し上げておりました。ささ、アスカル殿もこちらへ……」


 王城へと足を踏み入れると、アスカルとティナは城に仕えている者たちからの出迎えを受けることになった。


 その代表者である老人は、スッと背筋が伸びていることもあり、タキシード姿がこれでもかというほど似合っている。そんな老人……いや、老紳士は先ほどの門番とは違い、アスカルのことを認識していた。


「良かったわね、アスカル。ちゃんと顔と名前、憶えられていたみたいで」


「そう何度も言うな。まったく……」


 ティナからしつこくいじられているアスカルだが、その表情は穏やかであり、起こった様子はない。むしろ、自然と口角も上がり、晴れやかな表情をしている。


 そして、二人は老紳士の後ろをついていく形で領主の執務室へと向かった。執務室へと向かう間、領主であるノーマンはトラヴィスと領内のことについて話し合っているのだと、老紳士の口から語られている。


 老紳士が執務室のドアをノックしようと、拳を軽く握り、胸の前辺りまで掲げたところで、ティナは彼の動きを制止させた。


「ありがとう、ここまででいいわ。あなたは職務に戻ってくれて構わないわ」


「ハッ、承知しました。それでは、私めはこれにて失礼いたします」


 そう言って、その場を立ち去る老紳士の姿が廊下の向こうへ小さくなっていく中、ティナは執務室の扉を二度叩いた。


「ティナ・ハワードです。アスカル・ランドレスと共に、ただいま戻りました」


「二人とも入っていいぞ」


 扉を挟んだ向こうから聞こえてくる、聞きなれた声。ティナは数日ぶりに聞く父親の声に喜びを禁じ得ない様子。そこで、アスカルはティナに代わってドアを開けるような無粋な真似はせず、黙ってティナの左後ろに控えていた。


 数秒の内に、ティナは扉を開ける。父と大叔父の姿を両の目で捉えると、改めて喜びがティナの心へと押し寄せる。一方で、アスカルはさしたる感動はなく、ティナの後に続く形で入室。


 武骨な笑みを浮かべるトラヴィスと、若者二人を包み込む温かな笑みを浮かべるノーマン。ヌティス城の執務室にて、家族は久しぶりに再会したのであった。

第167話「ヌティス城下町へ」はいかがでしたでしょうか?

今回はいよいよヌティス城下町へ到着し、ノーマンやトラヴィスが久しぶりに登場!

次回は久しぶりの家族の再会がメインの回になるので、お楽しみに!

次回も3日後、1/6(土)の9時に更新しますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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