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第161話 ティナからの課題

どうも、ヌマサンです!

今回はアスカルがティナからの課題に挑戦します!

はたして、無事に課題クリアとなるか、楽しみにしていてもらえればと思います!

それでは、第161話「ティナからの課題」をお楽しみください!

「大丈夫。今のアスカルでも十分やれる程度の相手よ」


 ティナからそう言われ、4人の男を剣を使わずに無力化する課題を与えられたアスカル。いくらなんでも無茶だと言いたいところではあったが、逃げ出せる状況ではない。


 知らず知らずのうちに逃げ場を断たれている状況に陥っていたのだ。こうなれば、やるしかない。


「痛い目見せてやるっ!このクソガキ!」


 左から殴りかかってくる男の拳を真正面から受けるのではなく、前腕部を掴み、そのまま己の上半身を逸らしたうえで往なす。そして、相手の胴が膝蹴りを当てられる位置まで来たところで、鳩尾目がけて膝蹴りを叩きこむ。


 一撃で一人目を倒した次は反対側から回し蹴りが放たれると、これを間一髪、その場にしゃがんで回避。続けて、軸足である左足の脛を蹴り飛ばし転倒させる。そのまま気絶させようとしたところへ、そうはさせまいと背後から男二人が襲い掛かる。


 視界の隅にティナが映り、安全な場所へサッサと移動していることを確認して、そのまま二人の攻撃をかわして一度距離を取った。


 先ほどのような四方を囲まれる状況からは回避でき、残る3人と向かい合っている状況へ変化している。だが、短剣を持っていない男二人はじりじりと左右へ移動し、アスカルの死角へ回り込もうとしていた。


 その前にアスカルが誰か一人を倒そうとすることを相手も読んでいることを想定し、アスカルはあえて敵の想定している動きに合わせることを決断。向かって左の男へ殴りかかる。


 すると、アスカルが今にも殴りかかろうとしている男は笑みを浮かべていた。自分たちの思っている通りに人が動くと嬉しくなるもの。つまり、想定の範囲内であると自部で明かしているようなものだ。


 瞬時に背後の気配に気づいたアスカルは、攻撃を目の前の男に当てると見せかけ、中断。そのまま左へ飛びのいた。


「なっ!」


「ちょっ、あぶねぇ!」


 目の前で正面衝突が発生。頭部と頭部がぶつかる鈍い音が響き、2人とも地面に転がっている。それを踏み台のように乗り越え、短剣を持った男へと突き進む。短剣で斬れる間合いに入ったところで、アスカルの首を狙って横薙ぎに一閃。


 またもや伏せて回避することが頭に浮かんだが、速度を落とさず、そのまま突撃を敢行。短剣の柄が自分の首筋に来る辺りで止まり、右手を下から伸ばし、相手の短剣を持つ右手首を握ってしまう。


 振りほどこうとする相手の男の股関節を容赦なく蹴り上げ、あまりの激痛に意識が飛びそうになっているところを容赦なく組み伏せた。男の手にある短剣はすぐに取り上げ、自分の手元に収める。


「お疲れさま。さすがね、アスカル」


「いや、さすがに今度ばかりは死ぬかと思ったが、存外うまくいった」


 ティナから魔剣ヴィントシュティレを手渡された時点で、課題は合格を意味している。そう思い、アスカルはいつも佩いている位置に魔剣を戻す。すると、不思議なもので、いつもの日常が戻ってきたような心地がした。


「ここで騒ぎがあったと聞いたが……」


 アスカルとティナが話しているところへ巡回中の兵士数名が到着。アスカルが取り上げた短剣をティナが持っていたことで、あらぬ疑いがかかりそうになったが、アスカルの近衛兵という身分は大いに役立った。


「これは、近衛隊に所属しておられた方でしたか……!この者たちをお一人で倒してしまう手腕、まことお見事」


「いやいや、連れが絡まれていたのを助けただけですから。では、我々は先を急ぎますので、ここで失礼いたします」


「あっ、あの――」


 呼び止められてもかなわないとばかりに早足でアスカルとティナはその場を離れた。これ以上、面倒なことはごめんだという気持ちもあったが、それ以上に馬車の出発時刻が迫っていたのだ。


「アスカル、走れば間に合うわ」


「せっかく温泉で汗を流したのに、また走るのか……」


「と言っても、アスカルはさっきの戦いで運動したようなものじゃない。ほら、額にも汗が……」


 小走りで移動しながら、アスカルの額にハンカチを押し当て、汗を拭きとるティナ。突然の行為に驚きつつも、アスカルの心の中では恥ずかしさが大部分を占めていた。


「汗を拭いてくれたのは感謝する。だが、今は……」


「そうよね。とにかく走りましょう!」


 手早くハンカチを懐へしまい、ティナはアスカルよりも先に駆けだす。その速さは体力を回復させたことが大きいのか、アスカルとの距離を少しずつ広げていく。だが、それも癪だとアスカルも走るペースを上げて追いついた。


 そして、そのままの速度で走り続けた結果。何とか、フェルネの町行きの馬車へ乗車することが叶った。とはいえ、ティナもアスカルも汗だくになっている状況。


「ほら、アスカルも汗を拭かないと……」


「いや、そのハンカチはさっきオレの汗を拭きとったヤツだろう。オレの持っているハンカチを使え。そのハンカチは代わりにオレが使う」


 そう言って、ハンカチを交換し、馬車が揺れる中で汗を拭く2人。その姿は実に仲睦まじい若夫婦であった。乗客たちからは夫婦だと思われているとは露知らず、互いの汗を拭き、笑みを浮かべながらやり取りするアスカルとティナ。


 馬車の内では、そんな穏やかな時が流れている。時間の流れまでゆったりとしたものであったため、いつの間にか馬車がフェルネの町中で停まっていたのには、乗客皆が驚いていた。


「さっ、降りましょう」


「そうだな。えっと、忘れ物は……」


 席を立ちあがるなり、忘れ物はないかと指をさして確認するアスカル。忘れ物がないことに安心して馬車を降りると、ティナはすでに馬車から十歩ほど離れた距離にいた。様子からするに、「早く早く!」と呼んでいるように思えた。


「すまない。忘れ物がないか、確認をしていたんだ」


「大丈夫よ、ワタシだって確認してから降りたんだから」


「そうなのか?いつの間に……」


 アスカルより先に忘れ物がないかの確認を済ませていち早く下車していたティナの俊敏さ。その手際の良さを見習いたいと思う反面、自分にはそこまで素早く細かな確認作業は無理だと思ってしまう。


 見習ってできるようになりたいという気持ちと、どうせ自分には無理だという感情が融合している。その心地は何とも複雑で、言いようがない気持ち悪さがある。とはいえ、アスカルにはそんなことを考える暇は与えられなかった。


 なぜなら、ティナがグイグイ手を引っ張り宿のある方へと駆け出していたからだ。ティナの足の動きが速くなり、一定の間隔で耳に入ってくる地面を蹴って前に進んでいく足音も回数が多くなってきている。


 だが、ティナが速度を上げるにつれ、自然とアスカルの走る速度も早まっていく。そうして足音に意識を向けているうちに、宿泊する宿の前に到着していた。


「今回は迷わなかったわよ」


「ああ、本当に良かった。また迷ったら大変だからな」


「それこそ、また走り回らないといけなくなるものね。でも、ワタシだっていつもいつも道に迷うわけじゃないんだから」


「そうだな。まぁ、何はともあれ、受付を済ませて今日はゆっくり休もう」


 今度はアスカルがティナの前を行き、建物の中へ。速やかに受付を済ませ、その日は前夜のように同室で泊まる事態にはならず、別々の部屋に宿泊することもかなった。


 また同室で寝ることになったらどうしようかと考えていたアスカルも、この結果に心の底から安堵するのであった。

第161話「ティナからの課題」はいかがでしたでしょうか?

今回はアスカルが無事に4対1の勝負を制し、課題も無事にクリア。

なんとか定刻通りにフェルネの町まで戻ってくることができていました。

そして、旅の中で距離感も変わってきたアスカルとティナですが、これからの旅の中でもどう距離感が変わってくるのか、見守ってもらえればありがたいです!

次回も3日後、12/18(月)の9時に更新しますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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