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第159話 ヘキラトゥス山地を越えて

どうも、ヌマサンです!

今回はアスカルとティナが馬車でフェルネの町に向けて出発します!

一体、どんな旅路になるのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

それでは、第159話「ヘキラトゥス山地を越えて」をお楽しみください!

 アスカルとティナが模擬戦を行ってすぐ後に、2人は荷物をもって宿を発った。馬車が出る刻限が迫っているからであり、それに乗り遅れては明日まで馬車がないのだ。絶対に乗り遅れるわけにはいかなかった。


「アスカル!体力づくりの一環だと思って走って!」


「それはそうだが……まあ、今はとにかく走る!」


 走る意味だとか、理由だとかを考えているほど時間の余裕はない。そんな思考に力を割いている暇があれば、走る方へ体力を使った方が良い。


 その甲斐あってと言うべきか、アスカルとティナは無事に馬車に乗り込むことができた。乗り込むというより、駆け込んだという方が正しいか。ともあれ、馬車に乗ることはでき、ヘキラトゥス山地を越えるべく、馬車も動き出した。


「なんとか間に合ったが……」


「模擬戦が終わってすぐだし、さすがに疲れたわ……」


 全身から湯気が上っているのではないかと思うほど、2人の身体は走ったことで温まっている。正直なところ、大量の汗が服にしみて気色悪い感覚にも襲われており、一刻も早く温泉に入って汗を流したいと2人とも考えているのだった。


「これで、昼にはフェルネの町に到着できるな。その後は馬車を乗り換えてハウズディナの丘方面に行くんだったか」


「ええ、そのつもりよ。ただ、乗り換え先はワタシも行ったことがないから、また迷うかも……」


「そうだろうと思って、母さんから乗り換え案内の地図を書いてもらってきた」


「気が利くわね……!見せて見せて!」


 地図を広げ、期待のこもったまなざしを向けるアスカルとティナ。しかし、その期待は一瞬にして失望へと変わった。


「これは……」


「さっぱり分からないわね。セシリア様って、地図とか書くのは苦手だったかしら……?」


「いや、この地図は苦手とかそういう次元の話ではないと思うぞ……。くそっ、受け取った時に確認しておくべきだった……!」


 後悔するアスカルだったが、時すでに遅し。今さら気づいたところでどうしようもない。こうなれば、フェルネの町で聞き込みをしてでもハウズディナの丘方面の馬車を探すしかなくなった。


 着いてからまた忙しくなりそうだと思ったアスカルとティナの2人は、ひとまず交代で睡眠をとって休むことに。着いてからまた走り回るとなれば、体力を少しでも回復させておく必要がある。


「それじゃあ、先にティナから休め。ヘキラトゥス山地の頂上を過ぎた辺りで起こすから」


「分かったわ。交代したら、アスカルが休んで。フェルネの町に着いたら起こすから」


「分かった。そうしよう」


 ひとまず、交代で仮眠を取ることにした2人。先にティナから休むことになり、ティナはすぐにも目を閉じ、十数える間に寝息が聞こえ始めた。


 その睡眠へと至る速さにアスカルは驚きつつも、自分の隣で誰かが安心して眠ってくれている状況が、何とも言えない喜びの感情を湧き上がらせてくる。


 そうして馬車に揺られ続けてしばらく経ったころ。アスカルの右肩に軽い衝撃と共に、ふわりと良い香りが鼻をくすぐった。何かと思って、右を見ればティナがもたれかかってきていたのだ。


 自分がアスカルの肩に頭を置いて気持ちよく眠っているとは露知らず、母親の腕に抱かれて眠る赤子のように無防備な寝顔のままティナが眠っている。そして、スースーと定期的に聞こえてくる音に、アスカルまで睡魔に屈服させられそうであった。


 しかし、アスカルが睡魔に敗れるかに見えた頃に、ヘキラトゥス山地の頂上へ到達。これまで山道を登っていた馬車が下り始めたのだ。それを受けて、ハッとしたアスカルは気持ちよさそうに眠っているティナを優しく、揺り起こそうとしていた。


「ティナ、そろそろ交代の時間だぞ」


 そう言っているのだが、ティナは一向に起きる気配はない。かといって、無理やり叩き起こすのも気が引ける。そんな葛藤もあって、アスカルはティナを起こすことを早い段階で諦めていた。


 そうして下り坂も終盤に差し掛かった頃。アスカルが馬車の進行方向を覗きこむと、フェルネの町が見えてきた。もうすぐ到着する。さすがに起こさなくてはマズいと思い、再度ティナを起こしにかかる。


「ティナ、もうすぐフェルネの町だ。起きてくれ」


「……はにゃ?」


「お、おい。よだれが垂れてるぞ……!」


 うっすらと目を開けたのは良かったが、「はにゃ?」と言って口を開けた時に、よだれが垂れてしまっていた。アスカルは懐からハンカチを取り出し、ティナの口からこぼれる水滴を拭き取る。


 その時の感触が伝わったからなのか、ティナの目は一気に大きく見開かれた。せっかくの美少女が台無しになっていたのが、普段の様子へと戻り、アスカルは少し安心していたのだが、ティナは平静を装うことができずにいた。


「ふぇっ!?アスカル!?何して……!」


「何してって、ティナの口からこぼれたよだれをだな……」


「わ、ワタシほどの美少女がよだれを垂らして眠るわけないでしょ!」


「い、いや、美少女とか関係なく、よだれは人間誰しも垂らすものだろう。というか、自分で美少女って言ってしまうのか」


 ティナの取り乱す様は、アスカルにとっては初めて見る姿であった。だが、顔を真っ赤にしている様子から、自分がよだれを垂らして眠っている姿を見られたことに焦っているのだろう。


 そう推測したアスカルは、とにかく安心させようと声をかけようとしたが、ティナに先手を取られてしまう形に。


「あの、アスカル。交代の時刻に起きられなくてごめんなさい」


「えっ?ああ、それは構わないが……ティナは随分疲れてたんだな。もしかして、朝の模擬戦で結構体力を使ったということか?」


 それなら、あの後さらに走って馬車に駆け込んだわけだから、疲れていても仕方ない。自分自身の疲労具合も鑑みて、アスカルはそんなことを考えていたが、ティナからの返事はまったく異なっていた。


「そうじゃないの。実は昨晩、ほとんど眠れなくて……」


「枕が変わると寝られない感じか?」


「そうじゃなくて、アスカルと一緒に寝ていることを意識してしまって眠れなかったの……」


 消え入りそうな声で伝えられた言葉。予想していなかった言葉に、アスカルは仰天した。だが、どこかで安心してもいたのだ。まったく、異性と同じベッドで眠ることに抵抗がなかったわけではない、ということに。


「そうか。オレは普通に眠れたが、ティナはそうじゃなかったのか。なら、あんなに朝早くから剣の素振りをしていたのも頷ける」


「でも、交代するという約束を破ったのは事実だから、本当にごめんなさい。お詫びに何でもするから……」


「何でもする、か。二言はないな」


「に、二言はないわ」


「じゃあ、馬車を乗り換えたらハウズディナの丘に着くまで寝させてくれ」


 何でもすると言った手前、どんな要求をされるのかと、ティナは身構えていたのだが、思っていたよりも要求のレベルは低かった。


 要するに、「今までティナが寝たんだから、次はオレが寝る番だ」ということになる。その要望にティナは心の底からホッとした。「今晩も一緒に寝てくれ」とか、もっと過激な要望をされると思っていたためである。


 ともあれ、ティナはアスカルからの要望を聞き、乗り換えが済んだら実行に移すということで話は無事にまとまった。


 そして、フェルネの町に到着した後、2人はハウズディナの丘方面の馬車に乗り換えるべく、全力疾走。無事に乗り換えに成功したのだった。

第159話「ヘキラトゥス山地を越えて」はいかがでしたでしょうか?

今回は馬車で移動するところがメインの話でした!

ティナが寝ている様子だったり、その後起きて色々と言ってしまう辺りが印象的だったのではないでしょうか?

そして、次回はいよいよ温泉に向けて移動開始です!

次回も3日後、12/12(火)の9時に更新しますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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