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第157話 ヘキラトゥス山地北にある街へ!

どうも、ヌマサンです!

今回からはアスカルとティナの旧帝都フランユレールを目指す旅が始まります!

一体、どんな旅路になるのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

それでは、第157話「ヘキラトゥス山地北にある街へ!」をお楽しみください!

 夕陽を浴びながら王都コーテソミルを発ったアスカルとティナの2人。旧帝都フランユレールを目指し、まずは馬車で南へと進んでいく。


「アスカル、見て」


「ん?何を見るんだ……?」


 とにかくティナが指さす方へと視線を向けるアスカル。彼の視界に飛び込んできたのは、夕陽の色に染まる広大な王都コーテソミルでだったのだ。


 王都コーテソミルで暮らしていると王都から見る夕陽など、「もう夕方か」くらいの感想しか抱くことがなかった。ゆえに、夕日に染まる王都など今まで見ることもなかったのだが、それだけに受けた衝撃も大きい。


「おおっ……!」


「こんなに夕陽に照らされる王都が綺麗だなんて、ワタシ知らなかったわ」


「いや、オレも知らなかった。思い返せば、こうやって町の外から夕陽を見ようとすら思ったことがなかったからな」


「日常生活を送っていると、どうしてこんな身近にある景色の良さに気づかないのかしら……」


 馬車の中から見る夕陽と、王都コーテソミル。気づけば、旅人や行商人たちはこんな景色を当たり前のように見たりするのだろうかと、アスカルは夢想していた。


「そうだ、ティナ。エツィオとの戦いで見せた剣技は実に見事だったが、剣術道場で習ったのか?」


「ええ。元は帝国の将軍だったって人から習ったの」


「帝国ってフレーベル帝国のことか?」


「そうよ……って、この大陸で帝国なんてフレーベル帝国しかないじゃない……!」


 アスカルとしては笑わせようとしたわけではないのだが、突如として大声で笑い始めるティナ。子どもの頃からティナの笑いのツボがよく分からなかったことを思い出しつつ、アスカルは他の乗客に騒がせて申し訳ないと頭を下げる羽目になっていた。


「ごめんなさい……!アスカルがおかしなことを言うものだから……!」


「いや、謝るならオレじゃなくて、他の乗客にしてくれ」


 乗合馬車の乗客が皆良い人であったことが幸いし、アスカルとティナは怒られるようなことはなかった。そうして、日が暮れて夜空に満月と無数の星々が輝く夜に、アスカルとティナはヘキラトゥス山地北にある街・サルアナへ到着。


「ここがサルアナの街か」


「さすがに夜だし、暗いわね。ひとまず、宿の場所は行きにも泊まったから場所は分かるわ」


「それじゃあ、案内を頼む」


 辺りを見渡しても、民家からはすでに灯りが消えている。そんな月明かりくらいしか頼れる灯りがない中、町の通りを進んでいくティナ。何とも頼もしい姿にアスカルが安心したのも束の間だった。


「ごめん、迷っちゃった……」


「そうか、迷ったか……って、ええ!?迷った!?」


 まさかの一言に、さすがのアスカルも平静を装うことはできなかった。ティナは照れくさそうに笑いながら舌先を見せているが、まったくごまかせるような状況ではない。


「ティナ、いったん来た道を戻るぞ。話はそれからだ」


「でも、私たちどっちから来たんだっけ……?」


「あれ?そういえば……」


 何度も角を曲がっているうちに、どの方角から来たのかも分からなくなっていた。そして、アスカルもただティナの後ろをついてきただけ。2人そろって現在位置と、目的地までの距離と方角が分からないという状況なのだ。


「確か、この時間の月が出ている方角は南南東。馬車の進行方向は南で……」


 アスカルが思い出しているのは馬車から降りた時の状況や、現在時刻の月がある位置などの情報である。


「月の位置から考えて、こっちだろうな」


「す、スゴイ。月から方角とか分かるんだ?」


「ダレン近衛兵長の受け売りだ。偵察兵として動いていた時に身についた知識だと言われたが……今はその話はいいな」


 とにもかくにもおおよその方角はつかめた。アスカルは月を目印に移動を開始。時間が経てば月も動くため、あまりのんびりしてはいられない。


「よし、走るぞ」


「えっ、ちょっ……!?」


 ティナの手を引き、走り出すアスカル。だが、今のティナはアスカルに頼るほかなかった。最初は大丈夫かと心配であったが、しばらく走っているうちに広い通りに出た。


「あっ、この通りは……!」


「ティナ、見覚えあるのか?」


「え、ええ。あの鍛冶屋の隣が行きに宿泊した宿屋よ!」


「よし、行ってみよう。見たところ、まだ灯りはついているようだ」


 思いがけず、ティナにとって見覚えのある通りへ出た。ひとまず、ティナの言うとおり、鍛冶屋の隣の建物まで移動してみると、宿屋の看板が下がっていた。


「この宿屋であっているか?」


 合っていると言うまでもなく、コクリと首を小さく縦に振るティナ。そんな彼女の様子を見て、アスカルは宿屋へ入ることに決める。


 受付には小太りの中年男性がおり、アスカルは部屋に空きがあるかどうかの確認をする。さすがにこの時間では空きはないかと思われた矢先、一人部屋なら一つ空きがあると言われる。


「一人部屋か……。それなら、ティナが泊まれ。オレは他の宿屋に空きがないか確認してみる」


「いや、兄ちゃん。サルアナで宿屋はここだけだ」


「なっ、ここだけ……!?」


 それでは、アスカルは今晩、どこで明かせばいいのやら。そう思い困っていると、ティナから思いも寄らぬ言葉が飛び出した。


「その一人部屋は2人で寝泊まりすることもできないほどに狭いの?」


「……まぁ、狭苦しいが、不可能とまでは言えない。それなら、見てみるか?説明するよりも見た方が早いと思うぞ」


 つまり、2人で寝泊まりするのに問題ない広さであれば一緒の部屋で寝ても良いと言っているようなもの。これには、さすがのアスカルも驚いたが、ティナは受付の中年男性と階段を上がっていっている状況であり、今更止めることなどできなかった。


 2人の後を追って2階までやって来たアスカル。部屋は階段を上がってすぐ左手にあった。その部屋の扉を開け、ティナが中をのぞいている状況であった。


「アスカル、これなら大丈夫じゃない?」


「……まぁ、大丈夫だとは思う。だが、男女同室というのはさすがに――」


「じゃあ、この1人部屋に泊まるわ。料金は2人分支払います」


 さすがに男女同室はよろしくないのではと言いかけたアスカルだったが、時すでに遅し。ティナは泊まることに決め、料金の支払いを済ませてしまっていたのだ。


「……アスカル?ポカンとしてるけど、どうかしたの?」


「いや、なんでもない。ティナが気にしてないなら、オレから言うことはない」


 男女が同じ屋根の下、ましてや同じ部屋で寝る。ティナがあまりに警戒していなさすぎることにアスカルは不安すら覚えた。


 だが、今更指摘したところでどうしようもない。キャンセルしたところでキャンセル料はかかるし、ここ以外に宿屋はないのだ。凍える寒さの中、路上で夜を過ごすことになる。そんな一歩間違えれば死ぬという状況よりはいい。


「ベッドは一つしかないわけだけど、どっちが窓際で寝る?」


 入り口から真正面にある窓。その窓際にベッドは寄せられていた。朝日が入ってまぶしいのは窓際だろうが、正直アスカルとしてはどちらでもいいというのが本心である。


「オレは寝られればそれでいい」


「じゃあ、ワタシが窓際で寝るわね。アスカルはこっちよ」


 そう言って、ベッドに腰を下ろし、荷物を窓際に移動させていくティナ。アスカルは今夜を無事に過ごせることを祈りつつ、このことが知り合いに漏れ、後々余計なトラブルに発展しないことを願うばかりであった。

第157話「ヘキラトゥス山地北にある街へ!」はいかがでしたでしょうか?

今回はアスカルとティナの旅が始まり、サルアナの街に到着していました!

ただ、到着早々に宿屋までの道に迷ったり、アスカルがティナと同室で一泊することになったりと、ハプニング続出でした……!

一体、ここからの旅路はどうなるのか……!?

次回も3日後、12/6(水)の9時に更新しますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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