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第149話 ミシェルの初恋

どうも、ヌマサンです!

今回はミシェルの初恋から始まります……!

ミシェルのオリヴィエへの恋心がどうなるのか、見守ってもらえればと思います!

それでは、第149話「ミシェルの初恋」をお楽しみください!

 ミシェルの初恋。お相手はアルベルトとシュテフィの息子であるオリヴィエ。白みがかった黄色の髪に真紅の瞳を持ち、身長も高く、爽やかな印象を受ける好青年だ。


 そこで、ミシェルの初恋を応援したいセシリアは、クロエに頼み、色々とオリヴィエの好みを暴こうと試みていた。


「おっとりした女性が苦手なら、逆に好みのタイプなどはいるの?」


「真面目な人……ですかね。仕事をテキパキこなせる人に、なぜだか惹かれます」


 そのオリヴィエの一言に、ミシェルは顔に火でも付いたかのように真っ赤になっていた。もちろん、オリヴィエの言葉は別にミシェルのことを言ったわけではない。


 だが、仕事がデキる女性だと自他ともに認めるミシェルにとって、自分に対して言われたような心地がしたのだ。そんなうぶで可愛らしい反応を見て、セシリアはニヤニヤとしている。


「母さん、年をとると若者の色恋沙汰をニヤニヤしながら見守る趣味でも芽生えるのか?」


「何よ、アスカル。あなたは姉のうぶな反応を見て何とも思わないの?」


「別に」


 別に、と言いつつも、アスカルがうぶな姉を気にしていることも、母親は見抜いていた。とはいえ、アスカルが気にしているのは、心配という意味合いが強いのだが、それも含めて、見抜いていたのである。


「それじゃあ、ズバリ、ミシェルさんを見て、オリヴィエはどう思う?」


 何を思ったか、クロエはとんでもないことを口走った。ここで、オリヴィエが何を言うかによって、ミシェルは傷つくかもしれないし、逆に喜ぶかもしれない。


 確かに、秘めたる恋心として放置するよりは、当たって砕けた方が後々悩まなくて済むかもしれない。だが、さすがにこのやり方はマズいのではないか。そう思ったセシリアとアスカルは青ざめたが、止めに入ることはせず、平常心で見守り続けていた。


「……非常に魅力的だと思います。主に落ち着いた雰囲気や、品のある仕草ですけど」


「……ッ!?」


 ただでさえ、赤く染まっているミシェルの顔が、さらに赤みを増してしまった。あまりの赤さに、かえって体調を気遣いたくなるような、そんな赤さである。


「きょ、きょうしゅくです――」


 消え入りそうな声のミシェル。アスカルもセシリアも、その日初めて見た。アスカルとしては普段言いあっている姉の姿からは想像もつかない様子に、ある意味で来いというものは恐ろしいと感じてしまっていた。


「それじゃあ、クロエ。アタシたち、そろそろ出発しないと」


「あっ、もうこんな時間!ちょっと待っててください!渡したいものがあるので……」


 小走りで厨房へと戻っていくクロエ。渡したいものとは一体何なのか。そのことについて考えながら、セシリアはミシェルとアスカルに出発の時間だと告げ、帰り支度を開始。


「あの、ミシェル……さん」


「はっ、はい……!?」


「どうか、お元気で」


「お、お気遣いありがとうございます。オリヴィエ……殿も、お体を大切になさってください」


 何度も咬みそうになりながら、今かけられる精一杯の言葉を紡ぐミシェル。対するオリヴィエも、どこか恥ずかしそうではありながらも、ミシェルと比べて遥かに余裕そうな対応を取っていた。


「セシリア様!これを!」


「これは……」


「前にアスカル君にも試食してもらった焼き菓子です。先ほど飲んでいただいた茶葉も少しですけど入れさせていただきました」


「ありがたく受け取っておくわね。クロエ、今日も一日頑張って」


 クロエが厨房から急いで持ってきた焼き菓子と茶葉の入った箱を受け取り、ランドレス家ご一行は再び帰路につく。


 馬を曳いて町の通りを進んでいく3人を、クロエとオリヴィエは姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。


「母さん、そういえば温泉に連れていってくれるって話だったと思うんだが――」


「……あっ」


「やっぱり忘れてたか。まぁ、別に温泉くらい、そのうち行けばいいしな」


「待って、アスカル。今、温泉くらいって言った……?」


 そういえば、帰りに温泉へ行く話ではなかったかと、パレイルの町を出た直後に思い出したアスカル。そのことについて話していく中で、見事に地雷を踏んでしまった。


 温泉が大好きなセシリアにとって、温泉のことを『温泉くらい』と軽く見られたことが、何よりも許し難い発言だったのだ。


 それからは馬上で説教まじりに温泉の良さや、ダフリーク温泉をはじめとする温泉ごとの効能などについての話がなされ、それはその日の宿に到着するまで続いた。


 アスカルはそれだけでヘトヘトになっていたが、セシリアはお構いなしに温泉の話をし続けるのだ。残るミシェルはといえばセシリアの言葉を右から左に流しつつ、オリヴィエのことをずっと夢想していた。


 自分が興味のない温泉の話をされ続けている間、姉は幸せそうに意中の相手を思い浮かべているのか。


 どこへ矛先を向ければよいのか分からない感情と葛藤しつつ、その日は何とか休むことができたアスカルなのであった。


 だが、説教は再び朝を迎えても続き、アスカルやミシェルにとって、温泉がいかに母親にとって大事なものであるのか。説教という姿勢から教え込まれる形となった。


 パレイルを発った日の夜にとった宿はウルムクーナ川の北岸。一行はまず、舟でウルムクーナ川を渡るところから一日が始まった。


「母さんたちも、クレメンツ教国との戦いの中でウルムクーナ川を越えて進んだらしいな」


「えっ、ええ、そうね。ロベルティ王国軍も少しずつ、少しずつ南に進軍して、ようやく辿り着いたのが聖都コーテソミルだったんだよ。今ではロベルティ王国の王都になっているけどね」


「王都を移すって前代未聞だったことも、歴史の授業でも習ったけど」


「そうよ、王都を移転させるなんて、お金もかかるし、何もかもを一からやり直さないといけなくなるから誰もやらなかったんだって」


 国家予算は無限ではない。これは、いついかなる時代でも変わらない摂理だ。そんな限りある予算で、王都を移転させるなどよくやったものだと、アスカルは授業を聞きながら思っていたのだ。


 王都をテルクスからコーテソミルへと移して、20年以上の月日が流れていた。今では当たり前のようにロベルティ王国の王都はコーテソミルである、と認識されている。


 そんなことは年齢が一桁の子どもでも一般常識として通っているのだから、教育の偉大さ、そして時の流れというものはスゴイと、セシリアに改めて思い知らせていた。


 しかし、話題を温泉から王都コーテソミルのことへと切り替えられたことに、セシリアはまるで気づいていない。しかも、息子によって意図的に、だ。


「アスカル、上手くいったな」


「まぁな。姉さんも母さんも一つのことしか考えられないから、こうやって話題をすり替えれば何とかなるんだ。正直、昨日の時点でやっておけば良かったのだが……」


「待て。今、私も一つのことしか考えられないと言ったか」


「い、いや?そんなこと言ったか?」


 せっかくセシリアの説教を鎮めたアスカルであったが、お次はミシェルからの説教に見舞われることとなった。


 まさしく、一難去ってまた一難という状況であるが、アスカルはその日、話題をすり替えることもできず、ミシェルに説教され続ける羽目に。


 そして、また一日を終え、いよいよ王都コーテソミルの隣町で一夜を明かす。いよいよ、明日には王都コーテソミルへ到着できる。そんな場所まで一行は戻って来たのであった。

第149話「ミシェルの初恋」はいかがでしたでしょうか?

今回はオリヴィエの好みの女性のタイプが明らかになっていました。

ミシェルが見事に当てはまる女性像だったわけですが、そこでアタック――するには至っていませんでした。

そして、次回でいよいよランドレス家一行が王都まで帰ってきます!

次回も3日後、11/12(日)の9時に更新しますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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