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第139話 仏も昔は凡夫なり

どうも、ヌマサンです!

今回はノーマンがトラヴィスに会いに来たところから始まります……!

一体、どんな話しになるのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

それでは、第139話「仏も昔は凡夫なり」をお楽しみください!

「ノーマン殿、こちらでお待ちください」


「分かったでござる」


 ひとまずノーマンを1階の応接室へと通し、アスカル自身は2階にある祖父・トラヴィスの部屋へと向かう。ノックして部屋へ入ろうとしたところで、アスカルがドアノブに手をかけるより早く、部屋の扉が開いた。


「おお、アスカル。来客があったようだが……」


「はい。ノーマン殿がジジイ……じゃなくて、じい様に用があると」


 アスカルがジジイと言うなり、トラヴィスは眉間に皴を寄せていた。慌てて訂正するも、時すでに遅し。アスカルはトラヴィスに側頭部を左右から挟まれ、握った拳でぐりぐりとめり込ませられる。


 トラヴィスを怒らせることの多かったアスカルにとって、子どもの頃から何度も何度もやられてきたお仕置きだ。


「アスカル、今何か言ったか?」


「い、いいえ、何も」


「ジジイと言った気がしたが、俺の気のせいってわけじゃねぇよなぁ?」


「う、嘘をつきました。言いました、言いましたから、もう二度と言いませんから離してください……!」


 いいえと答えた直後に、威力が強まったため、アスカルも観念した。だが、素直に謝れば、力も弱まり、離してもらえる。そんなトラヴィスのお仕置きだった。セシリアがしかることのできない時には、トラヴィスがこのようにしつけてきたのだ。


「まったく、二度と言いませんと言いながら、何回も言いやがって。まぁ、今はノーマンを待たせているし、これぐらいにしておいてやる」


 そう言いつつも、ジジイ呼ばわりされた怒りは収まらないのか、足音がいつも以上に大きい。だが、応接室から聞こえてくる声からは、微塵も怒りは感じられなかった。


「ただいま――って、誰か来ているのか?」


「あ、ああ。姉さん、今帰ったのか」


「まぁな。それで……」


「来ているのはノーマン殿だ。トラヴィスじい様の顔を身に寄ったんだと」


 ズボンスタイルの服装に身を包むミシェル。鞄を肩から提げたまま、応接室へ向かうべく、足を向ける。そして、アスカルがトラヴィスのことをジジイと呼ばず、『トラヴィスじい様』と呼んだことから、つい先ほど怒られたばかりなのだと察した。


 昔から、怒られた後だけアスカルはトラヴィスのことを『トラヴィスじい様』と呼ぶことは、姉であるミシェルにはお見通しである。


「私はノーマン殿にあいさつしてくる。アスカルはどうするんだ?」


「じゃあ、オレも」


「決まりだな」


 姉弟は揃って玄関から移動し、トラヴィスとノーマンの声がする応接室へ。聞こえてくる声は実に楽しげであり、かなり話が盛り上がっているのは一目瞭然であった。


「おじいさま、ノーマン殿。ミシェルです」


「おう、入れ入れ!アスカルもいるんだろう?二人まとめて入って来い」


「失礼します」


「し、失礼します……」


 ミシェルの態度は堂々としたものであり、図書館に努めている間に礼儀作法が一層洗練されたものとなっている。対して、アスカルは先ほど怒られたばかりであるためか、声も小さめであった。


「ノーマン殿、お久しぶりです」


「ミシェル、しばらく見ない間に大きくなったでござるな……!」


「そ、そんなことは」


「いやいや、図書館で働いていると聞いたが、前よりもさらに落ち着いた雰囲気が感じられるでござるよ」


 相変わらず褒められるのに弱い姉・ミシェル。アスカルもそんな姉を見ているうちに、少し普段の調子が戻ってくるような心地がした。


「そういえば、ティナやフォルトゥナートは元気ですか?」


「ああ、2人とも元気でござる。ティナは剣術に打ち込んでいて、今は旧帝都フランユレールの剣術道場に住み込みで働いているでござるよ。フォルトゥナートの方は馬術に興味があるらしく、サランジェ領にある学校に留学しているでござる」


 ティナとフォルトゥナート。2人ともノーマンの子どもで、ミシェルとアスカルから見てはとこにあたる関係である。


 姉のティナは19歳、弟のフォルトゥナートは16歳。ミシェルとティナは姉同士仲が良く、アスカルとフォルトゥナートは弟同士仲が良く、子どもの頃は良く遊んでいた。


「それにしても、フォルトゥナートが馬術に興味を示すとはな。やっぱり、ノーマン殿に似たのかも?」


「ハハハ、それはあるやもしれんでござる。お主たちが小さい頃は馬に乗せて走り回ったでござるからな」


 ノーマンにそう言われ、アスカルも10年以上も前のことが昨日のことのように思い出された。


「それじゃあ、ティナはシンシア様に似たのかもしれませんね」


「うむ、シンシアも休みの日には剣の素振りを欠かさなかったでござる。それを子どもの頃から見ていれば、自然と興味も湧くというものでござろう」


 そう、ティナとフォルトゥナートの母はシンシア・ハワード。旧姓はプリスコットであり、父はハウズディナの丘で戦死したアラン、母はマリナなのだ。


「ならば、2人の話が出たことで、2人の近況を報告しておくでござる」


「近況?すでに話したじゃないか」


「いやいや、まだすべて話したわけではないのでござるよ」


 訳ありそうな表情を浮かべるノーマン。まだ話していない近況とは何か、3人そろって、見守る状況が続く。


「実は、フォルトゥナートをラッセル殿の元に養嗣子として出すことになったのでござる」


「養嗣子だと?それも、ラッセル・プリスコットの元に?」


 トラヴィスには伝わった様子であったが、まだ若い二人には通じていない様子。それを察知したトラヴィスは説明を付け加える。


「ノーマンの妻であり、ティナとフォルトゥナートの母親でもあるシンシアはプリスコット家の出だ。それは分かるな?」


「はい。現在のプリスコット領の領主であるラッセル殿の姪にあたることも」


「そうだ。俺も疑問に思ったのは養嗣子、つまり跡取りとしてフォルトゥナートを迎えるという点だ。領主のラッセル殿には聡明で知られるノルベルト殿がいるにもかかわらず、な」


 そう、ラッセルには実子であるノルベルトがいる。それにもかかわらず、フォルトゥナートをわざわざ養嗣子に迎えたいと言ってきたのだ。


「拙者にも詳細を話すことは、まだできないとラッセル殿に頭を下げられたのでござる」


「まだ、話すことはできない……か。引っかかるな」


「どうにも、近日中に公表され、そのうち拙者の耳にも入ることだから、と」


「ラッセル殿はそう申したわけだな」


 ノーマンもトラヴィスも、一体どういうことなのか、ワケが分からず戸惑っている様子。ミシェルもフォルトゥナートを大叔父にあたるラッセルの元へ跡取りとして送り出すところまで理解できたが、トラヴィスとノーマンと同じ場所で躓いていた。


 しかし、アスカルだけは、先刻マリアナから「まだ言えないけれど、近日中に発表することだから、それまで楽しみに待っているといいわ」と言われたこと。そこへ、ラッセルの発言内容。


 まるで、点と点が繋がり一つの線となったような、そんな心地がした。もしかすると、ノルベルトがラッセルの跡を継いでプリスコット領主と慣れないことと、王位継承権の話は関係があるのではないか。


 まだ言えないとマリアナが言っていた内容だけに、アスカルは女王の発言を重く受け止め、自分の心のうちに秘めることとした。


 ここで王位継承権の話を出してしまっては、マリアナの想いを踏みにじる。ひいては、ロベルティ王家を軽んずる行為に当たるのではないかと、思い至ったからだ。


 マリアナからの発表内容。それを聞いて、答え合わせをしよう。自分の予想が正しいか否かを。


 そう思いながら、その後もノーマンやトラヴィス、ミシェルたちと会話を続けるアスカルなのであった。

第139話「仏も昔は凡夫なり」はいかがでしたでしょうか?

今回はアスカルが王位継承権の話について、色々と気づきがあった……というところまで。

はたして、今回の話の内容から推察できる内容が、マリアナの口から発表されるのか、引き続き見守ってもらえればと思います……!

次回も3日後、10/13(金)の9時に更新しますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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