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第131話 燎原の勢い

どうも、ヌマサンです!

今回は久々に帝国最強と謳われる男が登場します!

はたして、どのような再登場となるのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

それでは、第131話「燎原の勢い」をお楽しみください!

 フレーベル帝国とクウォーク王国が従う旨を表明した、その日。ロベルティ王国はまさしくルノアース大陸の統一に王手をかけた。


「それで、ヴィクター・エリオットからは――」


「返事が届きました。どうやら、ヴァルダロス王国の反転攻勢が激しく、兵士たちも消耗しているとのこと。後詰なしにこれ以上の戦闘継続は不可能だと記されていました」


「明日にはクウォーク王国軍が東よりヴァルダロス王国へと攻め込みます。そこへ、我々も動きましょう」


「ここはナターシャに任せるわ……と言いたいのだけれど、ここは私も向かうことにします。大陸制覇の総仕上げですから」


 翌朝。日が昇った頃にロベルティ王国軍18万5千は旧帝都フランユレールを出立。フランユレールに集結していた旧帝国軍2万8千を加え、悠々と出ていく様は、まさしく大陸統一に王手をかけた、まさしく王者。


 ちなみに、ソフィア・フレーベルは一命を取り留めたものの、まだ戦場で陣頭指揮を執るなどもってのほか。そんな事情から、カルロッタ・ダルトワが総大将として出陣する運びとなった。


 つい数日前まで殺し合っていた両軍はいがみ合い、とても共に戦うことなど不可能に思える。しかし、士気は王国軍以上に旧帝国軍の方が高かった。


 それはなぜか。帝国最強と謳われるヴィクター・エリオットを救出し、ヴァルダロス王国を滅ぼすことが目的であるからだ。


 ヴィクターはまさにフレーベル帝国の英雄であり、軍に所属している者は一兵卒に至るまで尊敬しているほどだ。そんな人が憎きヴァルダロス王国に追い込まれているとあっては、いがみ合っている場合ではないということ。


 まさしく呉越同舟という言葉が相応しい、共通の敵・ヴァルダロス王国を撃ち滅ぼすべく、南へ、南へとロベルティ王国軍は進んでいった。


「ナターシャ、あれがヴィクター・エリオットの将軍旗だそうだよ」


「ええ、知っています。戦場で見かけたこともありますから」


 ナターシャにとって、今でもヴィクター・エリオットと兵刃を交えた日のことは昨日のことのように思い出せる。それも、武者震いというオマケ付きだ。


「ナターシャでも勝てなかったんだってね」


「そうですね。でも、勝つことは難しいですが、負けることもないですよ」


「負けない、ね」


 これまで数多の猛者を斬り伏せてきた漆黒の戦姫でも勝てない相手とは、一体どれほどの化け物なのか。未だ会ったことのないレティシアにとって、ヴィクターという存在は人外の化け物のように思えてならないのであった。


「ヴィクター・エリオットだ。久しいな、漆黒の戦姫」


「お久しぶりです。ヴィクター殿」


 両雄の対面に、空気も恐怖で震えているかのようであった。無論、周囲の者も斬り合いになるのではないかと、落ち着かない様子でもある。


「戦場であれば手合わせ願いたいところだが、今回はやめておこう」


「そうして頂けると助かります。まずは、ヴァルダロス王国を片付けなければなりませんから」


 ヴィクターの陣営にはナターシャやアマリアをはじめ、ロベルティ王国軍の者にも見知った顔があった。クライヴとも面識がある参謀ミハイル・オルロフ、アマリアと斬り合うも敗北した女将軍アナベル・バレードなどだ。


「紹介が遅れたな。ミハイルとアナベルは知っているだろうが、この2人とは初対面だろう」


 そう言って、ナターシャの前に呼び寄せられたのは2人の男女。男の方は黄土色の髪に、褐色肌といった外見的特徴が真っ先に目に飛び込んでくる。筋肉質な体つきをしているところから、武闘派の将軍といったところか。


 女の方は青髪をギブソンタックにしており、衣服は青と白の二色で統一されている。華奢な体型からは手足が細くて剣を振るえるようには見えないため、武将ではなく、文官ではないかと、ナターシャは推測した。


「ヴィクター殿、こちらの方々は?」


「ああ。俺の部下で、男の方がライナス、女の方がダリア・フレッチャーだ」


 ライナスという名を聞くまでは落ち着いていたナターシャだが、続くダリア・フレッチャーの名を聞くなり、腰の剣へ手をかけた。


「ふっ、漆黒の戦姫。そう警戒するな。まぁ、フレッチャーの名を覚えていたのは見事だ」


「忘れるはずがありません。2人とも私が斬ったわけですから」


「ここにいるダリアは漆黒の戦姫に討ち取られたポールとデニスの妹だ」


 そう、ナターシャに斬られたポールとデニス。中でも、デニスの方はクライヴを討った仇でもある。ゆえに、ナターシャはフレッチャーの家名を鮮明に記憶していた。


「ナターシャ将軍、お初にお目にかかります。ダリア・フレッチャーと申します」


「これはご丁寧に。私が漆黒の戦姫こと、ナターシャ・ランドレスです」


「デニス兄さまはナターシャ様のことを大層恨んでおりましたが、私は違います。戦場ですから、斬り合うこともあるでしょう。私にとって、家族を奪った憎い仇はナターシャ将軍ではなく、戦争なのです」


 ダリアの言葉は心の底から出たものであることは、ナターシャにも分かる。憎しみ合うのはやめよう、そんなことに意味はないと言うだけなら簡単だ。


 だが、仇を前にして同じことが言える人間が、はたして大陸全土にどれだけいるか。ナターシャはそう感じていた。そして、ダリアの言語態度に心の底から敬意を表したい。そう思えてくるほど、ダリアの行動は真似できるものではなかった。


「ダリア殿、お言葉痛み入ります。そう仰っていただけたこと、私はこの手を取ることで、感謝と敬意を表したいのです」


 ランドレス家とフレッチャー家。両家の者が、今ここに手を取った。そのことがいかに大きな意味を持つことか、周囲にいる者たちも感じ取っている。


 武力でルノアース大陸を統一し、平和をもたらす。これは、大陸を統一できるだけの武力さえあれば実現することが叶う。だが、真の平和をもたらすには、仇を前にして憎悪や敵意を捨てる必要があるのだ。


 この一件はロベルティ王国軍の兵士たちはもちろん、旧帝国軍の一兵卒にも深く感じ入るものがあった。そう、これが平和への第一歩なのだと。


 翌日からは、各々が憎しみの連鎖を断ち切り、王国の人がどうだの、帝国の人がどうだのと言い合うようなケンカが減り始め、心を一つにしようという動きが活発化していく。


「お呼びでしょうか、マリアナ様」


「ええ。ナターシャに感謝を言いたくて」


「私はマリアナ様に感謝されるようなことは何もしておりませんが……」


「いいえ、しているわ。あなたがダリアの手を取り、憎しみを捨てたことで」


 マリアナの元へと呼び出されたナターシャは、マリアナの言葉に謙遜するのみ。だが、それでもマリアナは称賛の言葉をかけ続けた。


「ですが、兵士たちの間でいがみ合うことが減ったのであれば、統率する将としての役割を少しは果たせたということにはなりますか」


「ええ、少しどころではないわ。こうした意識が少しずつ広まっていくことこそが、これからの世に求められることよ」


「これからの世、ですか。国や人種、生まれた地域の違いから生まれる格差や紛争、それを武力で抑えつけてきた世から、垣根を越えて手を取り合う、そんな平和な世へと移り変わっていく。私も見てみたいものです」


 まさしく、カルメロが願ってやまなかった平和な世の中。その世の中が実現できることこそ、ナターシャが戦い続ける理由。その願いを成就させるべく、ナターシャは次なる戦場に臨む――!

第131話「燎原の勢い」はいかがでしたでしょうか?

今回はヴィクターたちの再登場。

そして、ナターシャにとっては因縁の相手であるフレッチャー家のダリアが登場していました。

ですが、敵同士斬り合いになるわけではなく、平和のためにも憎悪を捨てることで合致。

ここからの話の中で、いよいよ平和が訪れるのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

次回も3日後、9/19(火)の9時に更新しますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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