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第125話 一気呵成

どうも、ヌマサンです!

今回はいよいよリカルドの故郷、旧セミュラ王国が舞台となります。

はたして、リカルドは再び故郷の土を踏むことができるのか……!

それでは、第125話「一気呵成」をお楽しみください!

「ええい、ロベルティ王国軍は6万で南下してきているのだ!早く守りを固めるのだ!」


 ここは旧セミュラ王国の王城として機能していた城。今は帝国の武将が城代として守りに入っている。その城代は慌てふためいていた。


 それもそのはず。『漆黒の戦姫』と謳われるナターシャ・ランドレスが6万という大軍を率いて南下してきている。そう聞けば、大急ぎで籠城の支度をしなければ、いや、せずにはいられなかった。


 しかし、その6万という数はレシテラを発った時点での数。今ではルイスが参陣していると聞いたヴォードクラヌの旧臣や、領民たちも武装して駆けつけ、まもなく10万に届こうかという数に達していた。


 対する旧セミュラ王国の領内で集められる兵はわずか2千5百。さらには、城の防備も古く、ろくに整備もされていない古城。いや、防備だけ見れば、城というよりも砦という方がしっくりくる。


 そんな脆弱な防衛体制では、到底防げそうにない。城代は焦りに焦った。帝都フランユレールへ援軍要請の使者を出したが、それまで持ちこたえられるはずもない。とはいえ、ロベルティ王国へ下るのも癪に障る。


「た、大変です!」


「どうした!」


「兵士たちが城門を破って、続々とロベルティ王国軍に投降していきます!」


「ばっ、バカな……!」


 慌てて櫓から見てみれば、北側の門を破り、兵士たちが続々と逃げていく。所詮は領内で徴兵した寄せ集めの兵であり、仕方がないと言われればそれまでのこと。


 だが、兵士たちは単にロベルティ王国軍を恐れて投降していくわけではない。そのロベルティ王国軍の先鋒部隊が掲げている旗が原因なのであった。


「あれはセミュラ王国の旗……!?」


「確か、セミュラ王国の姫がロベルティ王国に嫁いでいたのでは……?」


「そういえば、生き残った王族もロベルティ王国に逃れていたはず。えっと、名は……」


「り、リカルドではありませんでしたか?」


 部下から教えられる形でリカルドの名を思い出した城代。そして、寄せ手の大将が他ならぬリカルド・セミュラである情報がもたらされる。


「ど、どうしましょう」


「もとより守り切れる城ではない。そこへ、城門を破り、兵士の大半は逃亡したのだ。もう無理だ、逃げるほかない」


 結局、城代を始めとして、セミュラ王国出身ではない者たちは闇夜に紛れて逃亡。帝都フランユレールへと逃れていった。


 これにより、進軍するだけでリカルドの故郷は奪還されることとなり、リカルドも領民たちと争わずに済み、安堵の表情を浮かべる。


「リカルド様!おかえりなさい!」


「リカルド様、万歳!セミュラ王国、万歳!」


 リカルドはわずかな手勢を率い、すでに破壊された北門より城へ入った。城へ入るまでの町中からそうであったが、目に映る風景すべてが懐かしいまま。そう、自身がロベルティ王国へ向かう前と何ら変わりないのだ。


「リカルド様……!」


「おおっ、爺さんも無事だったか」


「はいっ……!いつか、リカルド様がお戻りになる日を、領民みな、心待ちにしておりました……!」


 涙ぐむ老人の手を取り、領民たちの苦労を一人一人労っていく姿は、すでに良き領主であった。


 そんなリカルドの姿を伝え聞くなり、ナターシャの心は決まる。この地を治めるのはリカルドをおいて他にない、と。


「リカルド、ここの領主になるといい」


「だが、本当にいいのか?帝国領への侵攻で足掛かりになる地をオレなんかに任せても」


「もちろんです。それに、他の者が領主になって、領民たちが受け入れるとでも?」


「そ、それは……」


 仮にリカルド以外の者が領主となったとしても領民たちは納得しない。最前線となる地で、臣民の足並みが乱れれば帝国に付け入る隙を与えるだけ。であれば、リカルドを領主にすることで、盤石にすることが最善策となる。


「クレアも呼んで夫婦仲良く、この地を治めるといいでしょう。私からもマリアナ様に推薦しますよ」


「むうっ……」


「あくまで、リカルド。あなたにその気があれば、の話ですが」


「分かった。やりゃあいいんだろ、やりゃあ。任せとけ!」


 真っ直ぐ自身の眼を見る、決意を秘めた瞳。それだけでナターシャは納得することができた。そして、その言葉が聞きたかったと言わんばかりに、満足げな表情を浮かべる。


「では、マリアナ様に一筆したためるとしましょう。セミュラ領の領主にリカルド・セミュラが適任である、と」


「悪いな、恩に着る」


 その後、マリアナの元にナターシャからの推薦状が届けられた。


「なるほど、『セミュラ領の領主には、他ならぬリカルド・セミュラこそが適任』ね。それもそうだわ」


 マリアナの返答は決まっていた。即日、女王直筆の書状をしたため、戦場へと返信。それと同時に、ロベルティ王国セミュラ領誕生の御布令を出した。


 すなわち、リカルドはこの日より、セミュラ領主という肩書を得たのだ。そのことをリカルドと同じくらい、いや、それ以上に喜んだのはクレアであった。


 まだセミュラ領が最前線であること、クレア自身も商務大臣という重職であることから、迂闊に呼ぶわけにもいかず、戦が決着するまでは王都コーテソミルで待っていてくれとリカルドは手紙を出していた。


 そして、その手紙はマリアナの御布令と同日にクレアの元へ届けられる。だが、2人が再会することになるのは、まだ先の話。


「この戦、勝たねばならんな」


「もちろんです。まずは帝国を破らなければ始まりません」


 旧セミュラ王国領を掌握したナターシャたちロベルティ王国。すでに10万という数にまで膨れ上がった大軍勢で、さらなる南下を計画していた。


「レティシア、ここからの進路はどうしますか?」


「そうだね、帝国の食糧庫ともいえるシムナリア丘陵地帯と、その周辺部は押さえた。あとは、この先のオンルガム湿地帯を抜ければ良いだけだよ」


「湿地帯ですか……。大軍で進むには困難な地形ですね」


「まあ、オンルガム湿地帯を突っ切るのが最短ルートではあるけど、幸いなことに湿地を迂回するように街道が整備されているから、遠回りにはなるけど街道沿いに進もう」


 地図を広げながら、今後の進路について話し合うナターシャとレティシア。ある程度話がまとまった段階で、諸将を集めての評定へ移った。


 最短ルートであるオンルガム湿地帯を抜ければいいという案も飛び出したが、湿地帯を大軍で抜けることの困難さをルイスやレティシアが説明。そうなると、やはり街道沿いに迂回して進むのが良さそうだと、意見がまとまった。


 一度、帝都フランユレールへ赴いたことのあるナターシャ。それにはアマリアもクレアも同行していた。その時の光景を思い出すと、随分と昔の話のように感じられる。


「お姉さま、いよいよ帝都フランユレールですね」


「ええ。このオンルガム湿地帯を抜ければ、帝都フランユレールです。最後まで気を抜かず、攻め取ってしまうとしましょう」


 このままの勢いでもって、北から帝都フランユレールへ攻め込まんとするロベルティ王国軍。同じ頃、帝都フランユレールより東のダルトワ領でも新たな動きが起こりつつあった。


 マリアナからの命令により、タンデル領とハワード領で兵が集められ、支度が着実に進められていたのだ。はたして、理想に限りなく近い北と東の2方面からの帝都フランユレールへの同時侵攻が実現するのか否か。


 それはまだ、分からない――

第125話「一気呵成」はいかがでしたでしょうか?

今回はリカルドが故郷、セミュラ王国の地で領主となることに。

さらには、リカルドの故郷が戦火に巻き込まれずに済んだことにホッとした方もおられるかもしれませんね……!

ともあれ、ここからのロベルティ王国とフレーベル帝国の戦いがどうなるか、引き続き見守ってもらえますと嬉しいです!

次回も3日後、9/1(金)の9時に更新しますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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