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第117話 窮すれば通ず

どうも、ヌマサンです!

今回はアマリアたちの籠城戦が始まります!

守るロベルティ王国と攻める帝国軍。

はたして、勝つのはどちらなのか……!

それでは、第117話「窮すれば通ず」をお楽しみください!

「勝つ!この戦い、何としても勝つよ!」


 底知れぬ不安と緊張に襲われる者たちにアマリアがかけた言葉がそれであった。しかし、アマリアがそういえば、そんな気がしてくる。そんな不思議な感覚があった。


「……負けると思っていたら、本当に負ける」


「だろうな。とはいえ、無策では本当に負けるぞ」


 ユリアもルイスもアマリアの言葉に賛同した。だが、籠城するにしても激しい攻防戦になることが予想される以上、何らかの手立てを講じなければ負けるというコリンの意見も一理ある。


「申し上げます!帝国軍が……!」


「来たようだね」


「ハッ、テルクスを四方から取り囲み、明日にも攻撃が始まるのではないかと」


「分かった。知らせてくれてありがとう」


 伝令兵が下がると、アマリアは少し考えるそぶりを見せた。一体、何を考えているのか、コリンも、アレーヌも、ユリアも、ルイスも。4人そろって静かに見守るのみ。そして、アマリアが何を思いついたか、口を開いた。


「まず、テルクスへ入るには西か、北東、南東のいずれかの門から入る。もしくは、高い城壁を乗り越えて侵入するしかない」


「……前はジェフリーが裏切って、西門を開けた」


「その通り。我が兄・ジェフリーが裏切ったことで、あっさり王宮まで陥落させられた。でも、今回は違う。まずは門や城壁を突破されないこと。そこが重要になる」


「今回も、門を守る将軍を決めておきたい」


 帝国軍が進んでくる西側、つまり西門にはユリア・フィロワ。北東の門にはコリン・ヒメネス、南東の門にはアレーヌ・メニコーニが守備についた。


「ルイス殿はボクと一緒に王宮に待機を」


「分かった。こんな体じゃ陣頭指揮は難しいからな」


 ロベルティ王国へ逃げてきて以来、寝たきり状態にあったルイスは、側近らに肩を借りてここまで来ているのだ。それでは本人も言うように陣頭指揮は困難を極める。


 アマリアもそのことは理解している。そのうえで、王宮に留まってもらう選択をしたのだ。


「……それじゃあ、さっそく西門に向かう」


「アタシも行くわ。南東の守りは任せておいて」


「オレも行った方が良さそうだな。アマリア、北東の敵はオレが撃滅しておくから、王宮でどっしり構えてろ」


 ユリア、アレーヌ、コリンの3名が退出。残されたアマリアとルイスは他愛もない話をしていたが、ルイスも王宮内の部屋に戻ることとなった。


「それじゃあ、オレは部屋に戻る。わざわざ部屋まで借りちまって悪いな」


「いや、ルイス殿を雑魚寝させるわけにもいきませんから。今日のところは部屋でゆっくり休んでください」


「……お言葉に甘えるとしよう」


 その日、帝国軍からの攻撃はなかった。ただ、10万という数でテルクスを包囲し、各所に陣を設営したのみ。兵士たちも陽が落ちると炊事を始め、数人ずつで固まって賑やかに騒いでいる。


 ――帝国の奴らはこんなところまで物見遊山でもしに来たのか。


 テルクスの守りについている兵士たちがそう思ってしまうような、そんな夜である。そして、攻撃は夜が明けても開始されることはなかった。


「帝国軍は攻めてこないな」


「そう思わせておいて不意打ちを……」


「かもしれないが、見てみろ。兵士たちの備えを」


「備え……ですか?」


 ルイスが王宮の最上階から指さす方。西側に陣取る兵士たちは武器を地に置き、鎧兜の紐を緩めている。


「ルイス殿の仰るように、とても攻めてくるとは思えません」


「とはいえ、無警戒でいろとは言わん」


 過度に警戒する必要はないが、無警戒でいろというわけでもない。どうせよと言うのか掴みづらい言葉であるが、その通りにすることの方が難易度が数段上だ。大将であるアマリアですらよく分からないことを、どう兵士たちに伝えれば良いのやら。


 そんな時。西の方角からテルクス中へ爆発音が響き渡る。


「何事だっ!?」


「まさか帝国軍が攻めて来たのか……!?」


 アマリアとルイスが帝国軍の攻撃と思った爆発音。その正体はすぐにも判明した。


「伝令!ユリア様が敵陣へ矢を放った模様!光魔紋の力も発動しておられたらしく、これほどな爆発になったようです!」


 攻めてこない帝国兵に対し、ユリアは帝国軍の陣営に向けて矢を放った。結果、帝国軍の陣営1つが吹き飛び、死傷者が大勢出た。


 それにより、帝国軍が攻め寄せることもなく、それからも帝国軍はテルクスを包囲する飲みに留め、積極的に攻勢に出ることもなく。ただ日が過ぎていくのみ。


 そんな帝国陣営でシリルとジェロームの間で意見が割れ、対立していたことが大きかった。


「シリル!包囲しているだけで投降してくると言っていたが、一向に降伏してくるそぶりはない!こうなれば、一刻も早く力攻めで陥落させるしかない」


「だが、それでは犠牲が計り知れない。それに……」


「もういい、オレの部隊だけでも城攻めをさせてもらおう」


「おい、ジェローム!待て!もうじき支度も整う!」


 シリルの言葉はジェロームには届かなかった。火攻めで多くの配下を失い、その配下たちの命を奪った敵を目の前に黙っていることはジェロームにはできなかった。


 散っていった部下たちを想うばかりに、ジェロームは冷静さを欠いてしまっていた。兵士を使える駒程度にしか捉えていないシリルとは、そうした点で対照的である。


「愛する将兵たちよ!これより、城攻めを行う!我らの同胞を卑劣な奇襲で虐殺し、焼き殺した蛮族を成敗するぞ!」


 城攻めと聞き、将兵たちは驚いていたが、何よりもジェロームの気迫に呑まれてしまった。そして、奇襲と森での火攻めによって友人や家族を失った者たちが咆哮する。


 ジェロームの言葉を受けて咆哮する者たち。怒りと悲しみ、憎しみを煽り立てられ、激情のままに城を攻め落とすと騒ぎ出す。


 そして、ジェロームの攻撃開始の合図により、ジェローム隊4万5千による城攻めが開始。攻撃を受けたのは東側にある南東の門と北東の門。


「来たわね。何としてもここは死守するわよ!」


「帝国の奴ら、目が血走っているな。何があったのか知らないが、ここは通さないぜ!」


 アレーヌ、コリンの両名の采配により、ロベルティ王国側は上手く守っていた。ひたすらに固く門を閉じ、近づく敵を弓矢でけん制し、それでもなお近づいてくるものには石や大木を城壁から投下し、帝国兵を打ち倒す。


 かかる金城鉄壁を前にしては、さしもの帝国軍も突破は至難の業。そして、憎悪を身に纏い前進する帝国兵の多くが戦死し、屍の山を築いていく。


 ジェロームの城攻めの合図に呼応し、積極的に城壁にしがみつき、よじ登ろうとする兵など1割にも満たない。その1割の大半が討たれれば、自然と寄せ手の士気も下がろうというもの。


 激戦となったのは最初の2,3日。その2,3日を凌げば、アレーヌもコリンも一息つくことができるほどの余裕も生じた。


「コリン様、今日も守り切れましたな」


「ああ、何とかな。でも、3日目ですでに初日ほどの勢いはない。初日は今日で陥落するんじゃないかと思うほどの気迫があったが……」


「……そのような気迫、今は感じられませんな」


 城壁の上。夕日を浴びながら側近と今日も乗り切れたと言葉をかわす。心中には今日の戦いを乗り越えたという達成感や安堵だけでなく、明日もこうして戦いを生き延びることはできているだろうかという一抹の不安もあった。


「みんな、よく守ったな。いずれ、援軍が来る。その日まで何が何でもここを守り抜こうぜ」


 コリンの想いが籠った言葉に、兵士たちは静かにうなずくのであった。

第117話「窮すれば通ず」はいかがでしたでしょうか?

今回はジェロームの独断で城攻めが開始。

とはいえ、攻撃を受けたのは南東と北東の門のみ。

西側に陣取るシリルは動かずじまいという形になったわけですが、このままアマリアたちがテルクスを死守することができるのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

次回も明日の9時に更新しますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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