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第111話 健全なる精神は健全なる身体に宿る

どうも、ヌマサンです!

今回はナターシャたちが無事に王都コーテソミルへと帰還したところから始まります。

帰還したナターシャたちが何をするのか、楽しみにしていてもらえればと思います!

それでは、第111話「健全なる精神は健全なる身体に宿る」をお楽しみください!

 ナターシャたちがダルトワ領から王都コーテソミルへと帰還。


 その一報にマリアナは大急ぎでナターシャとレティシアの両名を王宮へと呼び寄せた。


 王宮といっても、急いで作られた建物であるため、雨は凌げても隙間風はしのげないような建物である。だが、今のところは公務をする中で問題は生じていない。


 とはいえ、まだまだ補修、改修、増築しなければならない王宮にナターシャとレティシアはやって来た。


「マリアナ様、ただいま帰還しました」


「よく戻って来てくれたわね。遠征、ご苦労様でした」


「いえいえ、今回はマリアナ様の親征いただいたおかげで、何とか勝利することができました」


「でも、途中で帰ってしまったし、実際に兵を指揮して戦ったわけじゃないわ。あとで遠征してくれた皆も労う必要があるわね」


 ナターシャとマリアナのやり取りの中で、レティシアは改めてマリアナの王としての器を思い知らされていた。


 これでまだ13歳の少女。13歳でここまでの君主に成長したのなら、5年後、10年後はどれほど立派な女王になるというのか。


 ――先君パトリックにもこれほどの大器であれば。レティシアがうっかり、そんなことを考えてしまうほどにマリアナの振る舞いは見事なものであった。


 レティシアは今さら考えても仕方ないことだと切り捨て、目の前のことへと意識を戻す。


「そうだ、レティシア」


「はい」


「港湾都市ケルビアから使者が来てね。休暇も兼ねて、ナターシャと一緒に見に行って来たらどうかしら?」


「港湾都市の視察……ってことね。了解、ナターシャと行ってくる!」


 言い終えるなり、レティシアはナターシャの腕を引っ張って玉座の間を退出。すぐにも港湾都市へと向かおうとした。


「レティシア、待ちなさい」


「ナターシャ?どうかした?」


「港湾都市へ行くのなら、その前に行きたいところがあります」


「……?うん、分かった。それじゃあ、そこに寄ってからにしよっか」


 ナターシャはレティシアが納得したのを見届けてから、ある場所へと向かった。そのある場所とは――


「ここって、ランドレス邸?」


「そうです」


 そう、ナターシャが立ち寄ったのはランドレス邸であった。出発の前に、自宅に立ち寄りたかったのか。レティシアがそう思い、心の内で頷いていた。


「あっ、ナターシャ!」


「久しぶりですね、ミシェル」


 久方ぶりの姪っ子との再会に、戦場では『漆黒の戦姫』とまで呼ばれるナターシャの頬も緩む。そんなナターシャとミシェルの楽しげな様子を一歩下がった位置から見守るレティシア。


 そんな彼女の元にも、1人の少年がやって来る。


「しらないおばさん」


「お、おばっ……!?」


 可愛らしい駆け足でやって来た1歳児にかけられた言葉。それはもう深くレティシアの心に突き刺さった。


「アスカル、このお姉さんはレティシアだ」


「れてぃ……しあ?」


 ナターシャがアスカルに色々と話をしている間、放置されるレティシア。幼い子供から発された悪意の欠片もない『おばさん』という言葉は、彼女の心に深い傷を残したのであった。


「お姉さん、だいじょーぶ?」


 そんな時、ミシェルからかけられた言葉は傷薬のように、傷跡に染みた。しかし、お姉さんという言葉で、レティシアは少し元気が戻って来る心地に。


「ミシェル、ありがとね。人の痛みが分かる人になるんだよ」


「うん、がんばる!」


 穢れのない、無垢な笑顔にさらなる癒しと活力を与えられたレティシアは、本調子へと戻り、ナターシャにミシェルがイイ子だと絶賛し始める始末。


「よし、ミシェル。そして、アスカル。2人ともイイ子で留守番してるんだぞ?」


「「うん!」」


 こうして玄関先でクライヴの遺児2人と別れ、改めてナターシャとレティシアの両名は、フォーセット領にある港湾都市ケルビアへ向けて、駒を飛ばすのであった。


 ――その翌日。


 ナターシャとレティシアの2人は現在も工事中である港湾都市に到着。しかし、陽がすでに傾いていることもあり、宿を取ることが先決であった。


「あれ?ナターシャ?それに、レティシア殿まで……どうかしたの?」


「クレアでしたか。久しぶりですね」


「2人とも、ここへは視察で?」


「いえ、マリアナ様から使者が来たと聞いて、やって来ただけなのですが」


 クレアとの唐突な再会に驚きつつも、ナターシャたちは事情を説明する。すると、使者はクレアが出したものであることも併せて判明した。


「そう、港湾都市の完成目途が立ったのね」


「ええ、3年後に完成する予定よ。5年後には色々な人でにぎわう、そんな都市になっていてほしいわね」


「そうですね。この地で暮らす民が幸せであることを願います」


「そのためにも、アタシたちが頑張らなくちゃ!」


「レティシア殿の言うとおりね。臣民が団結して、みなが笑顔でいられる楽園にしたい」


 再会早々、3人は今後の国の発展に胸を躍らせ、今後の展望などを楽しく語り合った。その日は、クレアの宿舎に泊めてもらうことにもなり、現場監督などにもあって、直接話をする機会まであった。


「あなたが『漆黒の戦姫』?」


「ええ、そうですが……」


 酒を片手に話し込んでいるところ、後ろからナターシャに話しかける者がいた。亜麻色の髪をサイドアップにしている可憐な少女である。


「私、アメリア!アメリア・フォーセット!一度、会ってみたかったから、会えて嬉しい」


「そ、それはどうも……」


 会えて嬉しいと言われて、嬉しくない人間はいない。ナターシャもその中の1人であった。会えたことを嬉しいと言ってもらえたことを喜んでいたが、その前の彼女の名で引っかかる部分があった。


「先ほど、アメリア殿は『フォーセット』と名乗っておられましたが……」


「そう、現領主のクリスティーヌ・フォーセットの娘だよ。私が生まれた頃はまだお母……母上は女王じゃなかったけど」


「クリスティーヌ殿のご息女でしたか。お初にお目にかかります、私はナターシャ・ランドレス。こちらはレティシア・クローチェ、そして……」


「クレア・カスタルド殿。何度も話をしたから知ってる」


 アメリアはナターシャの言葉を遮る形となったが、ナターシャとしてはすでにクレアとアメリアが知己であったことに驚きを隠せないでいた。


「クレアがアメリア殿と知り合いだったとはビックリだね!」


「ええ、私も今知って驚きました」


 話を聞いてみれば、クレアは商務大臣として、港湾都市計画の責任者として何度もフォーセット領へ足を運んでいた。


 そして、アメリアの方は母であるクリスティーヌに代わって、何度も港湾都市ケルビアへと視察を行なっているため、何度もクレアと顔を合わせ、会談していたとのこと。


 そうした事情を知り、クレアが今はロベルティ王国の家臣として活躍していることをナターシャは嬉しく思ったのである。


 ともあれ、そこからはアメリアを加えた4人で同じテーブルを囲み、港湾都市ケルビアの今後についてという話題を中心に話しつつ、実に様々なことを語り明かす。


 その中で、ナターシャに興味津々のアメリアは、これまでのナターシャの武勇伝を聞きたがるなど、年相応の少女らしい一面を見せた。


 自身の武勇伝など、ナターシャは語ろうとしなかったが、彼女に代わって間近に接してきたクレアがアメリア、そしてレティシアにもナターシャの武勇伝を始め、思い出話を口にしていた。


 戦場での姿、日常生活におけるナターシャの一面など、直に彼女を見てきたクレアだからこそ語れる内容であったため、レティシアもアメリアも随分話に食いついていく。


 ナターシャは自身の話を興味津々に聞いてくれるレティシアとアメリアに感謝したが、それ以上に恥ずかしいという想いでいっぱいになるのであった。

第111話「健全なる精神は健全なる身体に宿る」はいかがでしたでしょうか?

今回は王都に帰還したナターシャとレティシアがランドレス邸によってから、港湾都市ケルビアに向かうという話でした。

おばさんと言われてショックを受けるレティシアに、クスッと笑った方も多かったのではないでしょうか?

次回の更新は……と言いたいところ、申し訳ありませんが、しばらく休載とさせていただきます。

ストックができ次第、連載再開とさせていただきます!

連載の再開を楽しみにお待ちいただければ幸いです。

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