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第103話 ハウズディナの丘の戦い

どうも、ヌマサンです!

今回はハウズディナの丘での戦いとなります!

はたして、ハウズディナの丘ではどのような合戦が行われるのか。

それでは、第103話「ハウズディナの丘の戦い」をお楽しみください!

 カルロッタの元にも届いたハウズディナの丘方面の敗戦の一報。一体、何が起こったのか。


「ミルカ、先鋒部隊は7千で大丈夫かい?」


「ええ、大丈夫です!任せてください!」


 妙に自信たっぷりなミルカに一抹の不安を抱きながら、ローレンスは先鋒部隊を見送る。そして、自身もまた9千の兵を率いて少し後から進むこととした。


 先鋒として突き進むミルカ隊の進軍速度は速く、ローレンス隊を遥か後方へと置き去りにし、悍馬に任せて猛進していく。


 ローレンスがハウズディナの丘南に広がる平野へと入った頃には、ミルカ隊は丘の頂上へ到達。後続のローレンス隊の到着を待つことなく、ただちに城攻めを開始。


「今です!火矢を放ちなさい!」


 城を包囲するミルカ隊より火矢が放たれる。連日連夜にわたる猛攻の始まりである。この城攻めからハウズディナの砦を防衛するのは、幾度も帝国軍を退けてきたヴェルナー・タンデル指揮する6千5百。


 巷では、『守りの戦にてヴェルナーの右に出る者なし』などと言われているほど。そんな守備戦の名手と謳われるヴェルナーが守る砦は、まさしく金城鉄壁。ミルカ隊の猛攻を受けても、揺らぐこともなかった。


「えっ、ミルカが城攻めを始めた!?」


「ハッ、ミルカ様の独断ではありますが、城方から挑発行為があったとも聞き及んでおります……!」


「挑発行為があったとはいえ、軽率な行動は控えてほしかったんだけどね……」


 さらに、ミルカによる城攻めも難航していることを聞き、ローレンスは頭を悩ませるばかりであった。そんな時、矢唸りの音が幾重にも重なって聞こえ始める。


「申し上げます!て、敵襲にございます!」


「敵襲だって?」


 野営中、左右から敵が攻撃を仕掛けてきたとの報せに、急いで外へと繰り出すローレンス。見てみれば、報告通り左右から敵が押し寄せてきていた。


「朝駆け……といったところか。数は、こちらよりも多い……かな?」


 素早く状況の把握を済ませ、手際よく左右へ下知を下していく。その様はカルロッタが参謀として頼りにするだけはある、といったところ。


「ローレンス様!寄せ手の大将は東よりトラヴィス・ハワード、西よりはノーマン・ハワードです!」


「ノーマンは若僧、大したことはない。真の敵はトラヴィスの方だね」


 ローレンスは強敵をトラヴィスと見定め、自らはトラヴィスが攻めてくる東の防衛に向かった。


 一方、西から攻め寄せるノーマンはといえば。


「ノーマン将軍、初戦は我らの圧勝!このまま敵本陣になだれ込んでやりましょうぞ!」


「うむ、そうでござるな。しかし、敵はローレンス・オニール。侮ってはならぬでござるよ」


 戦況はノーマンの見立て通り、そう甘くはなかった。ローレンス麾下の精鋭が押し返し、完全に体勢を立て直していた。


「ノーマン将軍、俺に千ほどの兵を分けてもらえないか」


「……ハロルド殿、何か策があるのでござるか?」


 ノーマンに策を献じたのはハロルド・マクミラン。マルグリットのもとでライオギ平野周辺の貴族を調略にあたり、そこそこの成果を挙げていた。


 そんなハロルドであったが、ライオギ平野で行われた決戦には参加せず、トラヴィスの元へと配された。そのトラヴィスの命令で、ノーマンの下につけられ、今に至る。


 ハロルドはノーマンよりも6つ年上であり、「兄のように頼りになる」とまだ日も浅いのに、ノーマンからの信頼を勝ち取っていた。


「策というほどではないけど、今の敵の布陣を見るに東西に分断されている。これを南北のいずれかから攻め込めば、やすやすと背後を取れるかと思ったまでさ」


「なるほど……。とはいえ、中央へ進出したが最後、敵から挟撃をくらうことになるではござらぬか」


「それは百も承知。こうでもせねば、戦線は膠着状態になるのは必定」


「……承知したでござる。ハロルド殿、ここは頼りにさせてもらうでござるよ」


 こうして、激戦が続く中をハロルドは千余りの兵を率いて南へ。ノーマンは千余りの兵が抜けたことを埋めるように、攻勢を強めていた。無論、ノーマン自身前線に赴き、大剣を振るって敵兵を次々に討ち取っていく。


 その頃、反対側の東から攻め寄せるトラヴィスはといえば。兵士のなかには農民上がりのエルマーがついている。道の整備や砦作りに功績をあげたエルマーであるが、もとより武勇の将ではないために武功をあげるのは厳しかった。


 だが、人をまとめ上げるのには長けており、同郷の者らをまとめ上げて戦うことで活躍していた。


 それを見たトラヴィスはエルマーの才覚を認めつつ、自身は大軍を指揮し、ローレンス隊との交戦に熱を込めている。その中で、トラヴィスは長年愛用してきた大斧を振るって奮戦、ローレンスの采配を押し返しつつあった。


 歴戦の猛将の奮戦は若き参謀をジリジリと押し戻していく中、反対側からのノーマン勢の攻勢も強まりつつある中、南からの鬨の声が起こった。


「南から鬨の声だと?それは味方か、敵か?」


「偵察兵によれば、旗は我らロベルティ王国軍の旗が掲げられていたとのこと」


「ならばいい、帝国軍に攻めかかっているなら敵ではない。まずは、目の前の敵を屠ることを最優先するのだ」


「ハッ!」


 トラヴィスが側近からの報告を受け取り、再びローレンス勢のなかへと大斧を引っ提げて駈けいく。ローレンス麾下の精鋭たちもトラヴィスほどの大将首を獲ったならば、莫大な恩賞が出るだけでなく、一躍将軍になることも現実味を帯びてくる。


 兵士たちが野心の焔が燃え盛っているとも知らず、トラヴィスは目の前の敵を雑草でも薙ぎ払うかのように次々に討ち取っていく。


 そうして戦況がトラヴィス隊優位に進んでいるところへ、さらなる戦況の変化が訪れる。


 丘の頂上で砦を攻めていたミルカ隊が一斉に丘を駆け下り、麓にいるローレンス隊の援護に回ったものであった。ミルカ隊は砦攻めにより千近い兵を失っているが、それでもなお6千もの兵力を有している。


 先頭を切って駆け下ったミルカは猛将として名高く、昨年の一戦でも猛将トラヴィスを一騎打ちを退けたほどの実力者。そんな彼女に率いられた将兵は、すでにトラヴィスたちに勝ったつもりでいた。


 人間だれしも、一度勝った相手には二度でも三度でも勝てると思ってしまうものである。しかし、このわずかな油断が勝敗を分けた。


 必殺の気迫でローレンス隊を蹴散らし、ミルカ隊を迎撃せんとたちまち応戦を開始。


「ミルカ様、ローレンス隊はすでに壊滅した模様!ローレンス様は数百の兵と共に戦線を離脱したようでございます!」


「ローレンスがこんなに早く早く敗走するなんて……!ですが、今こそ私たちの実力を見せつける時!みんなで敵中を突破しますよ!」


 ローレンス隊がすでに敗戦したと聞き、ミルカも敵中突破をすべく前に進む勢いを増幅させる。そんな折であった。


「トラヴィス殿!ヴェルナー・タンデル、ただいま到着しました!」


 ミルカ隊が麓の軍勢とぶつかったのを見届け、今こそ背後を突く時だと悟り、砦に立て籠もった全軍をもってハウズディナの丘を駆け下り、ミルカ隊の背後から猛攻をかけた。


 こうしてハウズディナの丘でのロベルティ王国軍とフレーベル帝国軍の激闘が続く中、ハロルド隊はノーマンからの命令によって、戦場を離脱した参謀ローレンスを「逃がしてはならぬ」と追撃を開始していたのだ。


 ハロルドはノーマンから命令されたことで動き始めたわけだが、なにより手柄を欲しているのは、他ならぬハロルドなのであった。

第103話「ハウズディナの丘の戦い」はいかがでしたでしょうか?

今回はロベルティ王国軍優位に合戦が進んでいました。

さらに、敗走するローレンスをハロルドが追撃を開始。

はたして、どのような追撃戦となるのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

――次回「死ねば死に損生くれば生き得」

更新は3日後、5/25(木)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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