表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。  作者: 木山楽斗
第六章 アルーグ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/143

愚かなる体裁(アルーグ視点)

「お前の事情は、よくわかった。詰まる所、お前は貴族の体裁を保つための表情が、怖くなったということなのだな?」

「ええ、多分そういうことなのだと思います。自分でも、よくわかっていませんが」

「そして、お前はそれを情けないことだと思っている。そういうことだな?」

「……え?」


 俺の新たなる質問に、カーティアはまた驚いていた。

 彼女の表情は、まったく変わっていない。しかし、今の俺にはなんとなくわかる。

 それを考えると少しおかしく思えた。自分達が被っている仮面というものが、どれだけ愚かなものかを理解したからだ。


「庭での会話の時、お前は少し落ち込んでいた。それは恐らく、その無表情に引け目を感じているからなのだろう?」

「それは……」

「だが、それはお前のせいではない。愚かなる貴族社会というものが、悪いのだ」


 俺は、はっきりとそのように思っていた。

 仮面を被り、人の顔色を窺う。それはなんとも愚かなことだ。お互いに本心でないと思いながらする会話に、一体どれ程の価値があるというのだろうか。

 無論、それは貴族の性だ。それが変えられるものではないということは、理解している。

 だが、少なくともその忌まわしき性の犠牲になった素直な女性が、そこに引け目を感じる必要があるとは到底思えない。それが、俺が出した結論だ。


「カーティア、お前は素直な性格なのだろう。俺にも、随分と好き勝手言ってくれる」

「素直……そうかもしれません」

「貴族として、それは不利なことなのかもしれない。だが、俺はそんなお前の性格を好ましく思う。虚構に塗れた人間よりも、お前のような素直な人間の方が、俺は好きだ」

「なっ……!」

「む?」


 俺の言葉に、カーティアはまたも驚いているような気がする。しかし、俺はそんなにおかしなことを言っただろうか。

 いや、彼女の今までの人生において、こんなことを言う奴はいなかったのかもしれない。それに驚いているというのは、そこまでおかしなことではないのだろうか。


「アルーグ様と出会って、時々思っていたのですが、あなたは少し鈍感な所がありますね?」

「鈍感? それは、どういうことだ?」

「いえ、こちらの話です。どうか、気にしないでください」


 カーティアは、俺に対して少し呆れているような気がした。鈍感、その言葉の意味することとは、一体なんなのだろうか。


「でも、あなたの言葉は嬉しかったです。ありがとうございます、アルーグ様」

「……いや、気にするな」


 そこで、カーティアは俺にお礼を言ってきた。

 お礼を言われるようなことをした覚えはない。だが、その時の彼女は笑っているように思えた。

 喜んでもらえているなら、それでいいのだろう。そう思いながら、俺は彼女との話を終えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ