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公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。  作者: 木山楽斗
第六章 アルーグ編

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夢の中で(アルーグ視点)

 夢というものは、現実とは違うものだ。その空想の中では、様々なことができる。現実では起こりえないことも、夢の中では可能なのだ。

 だが、俺の夢にそんな部分は微塵もない。夢を見る時、俺は決まって過去の光景をそのまま思い出すのだ。


「アルーグ様、どうかされましたか?」

「いえ、なんでもありません」


 夢の中で俺は、最愛の女性と会話していた。

 最近思い出すのは、あの時のことばかりだ。彼女がいなくなってから、俺は彼女の夢ばかり見ていたのである。

 それは、未練がましいことだった。諦めて割り切るべきことをいつまでも引っ張っていた俺は、愚か者としか言いようがないだろう。


「アルーグ様は、照屋さんですね?」

「そんなことは……ないと思うのですが」

「でも、私といつも顔を合わせてくれませんよね?」

「それは……そうですが……」


 その時の思い出を、俺は思い出したくなかった。なぜなら、そんなことを思い出しても辛いだけだったからだ。

 断ち切りたいその未練は、俺の意思とは関係なく押し寄せてくる。それに、俺は複雑な思いを抱いていたのだ。


「……」

「……何?」


 しかし、その時の夢は突然切り替わった。あの思い出すのが辛い明るい日々から、つい昨日の場面に切り替わったのだ。

 俺の目の前には、婚約者がいる。無表情な婚約者は、俺をその鉄仮面で見てきていた。

 変わらないその表情を、俺はただ見つめ返す。すると、彼女の顔が歪む。夢の中だからか、彼女の鉄仮面に変化が起こったのだ。


「……お気になさらず、全ての非は、私にありますから」


 その歪んだ落ち込んだような表情で、彼女は俺にそう言ってきた。

 それは、つい昨日聞いた言葉だ。もしかしたら、彼女はその言葉を放った時、こんな顔をしていたのだろうか。その無表情の裏に、そんな感情が隠されていたのだろうか。


「……思えば、俺は何も知らない。あの無表情は、なんなんだ?」


 そこで、俺は疑問を覚えた。そもそも、カーティアの無表情とは、どういうものなのだろうか。

 生まれた時から、表情が乏しかったという可能性もある。だが、後天的なものであるというなら、そこには何か理由があるはずだ。

 俺は、それを知りたいと思った。あの時の彼女の様子や、今目の前にいる彼女がどうしてこんな表情をしているのか、その理由が知りたかったのである。


「だが……それは」


 しかし、そこには明確な問題が発生するだろう。

 そんな質問をするということは、彼女を傷つけることになるのではないだろうか。

 そう思ったため、俺は自らの考えを捨てようと考えた。だが、それもすぐに否定する。それが正しいことではないと思ったからだ。


「……後悔する訳にはいかん」


 俺は、ある女性のことを思い出した。彼女とのことに関して、俺は後悔してばかりだ。

 何も言わないでいることは、心に安寧を与えてくれる。だが、踏み込まなければ、後悔が残るのだ。

 故に、俺は踏み込むことにする。後悔しないためにも、俺は動くことを決めたのだ。

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