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公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。  作者: 木山楽斗
第六章 アルーグ編

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変わらない表情に(アルーグ視点)

 屋敷の庭に出て来て思い出すのは、やはり彼女のことだった。

 彼女は、花が好きだった。庭の花を見て、笑っている彼女の姿は、今でもはっきりと思い出せる。


「花というものは、綺麗ですね」

「ああ、そうだな……」


 そんな庭に、俺は婚約者と来ていた。

 彼女が、そうしたいと言い出したのだ。その意図はわからないが、断る理由もなかったので従ったのである。


「私の趣味は、強いて言うなら植物鑑賞でしょうか。こうやって花を見ていると落ち着きます」

「……そうか」

「ただ、にわかなので花の名前はなんだと聞かれたら、すぐに答えられません。だから、聞かないでくださいね」

「……お前は、それで俺にミーハーだのなんだと言ってきたのか?」

「ええ」


 俺の言葉に対して、カーティアは淡々と返答してきた。それは、まったく悪いと思っていないかのような態度だ。

 いや、それはその無表情が与えてくる印象なのだろうか。もしかしたら、少しはにかみながら言っているつもりなのかもしれない。

 だが、俺はなんとなくそうではない気がしている。その無表情を見ていると、はにかんでいる所か、あざ笑っているかのように見えてきたからだ。


「それで、お前は植物鑑賞が趣味だから、庭に出てきたのか?」

「ええ、そうですね。まあ、客室にいつまでも籠っているのは、なんだか息苦しかったという理由もありますが」

「そうか。なるほど、そういうことだったのか」


 そこで、俺はあることに気づいた。

 俺は、このカーティアという人物を大人しい人物であると思っていた。それは恐らく、その表情が要因だろう。無表情であるため、活発な性格とはあまり思えなかったのだ。

 だが、彼女は俺が想定していた性格と真逆な性格だったようである。活発でひょうきん、彼女はそういう性格なのだろう。


「……俺は勝手な印象を押し付けていたということか」

「どうかされましたか?」

「いや、なんでもない」


 俺は、カーティアに勝手な印象を押し付けていた。彼女は、自分で表情を作るのが苦手と言っていたにも関わらず、無表情だから大人しいと思っていたのである。

 それは、俺に非があったといえるだろう。彼女の言葉を噛み砕き、考えていればわかっていたはずだ。

 どうやら、俺もまだまだ未熟であるようだ。こんなことでは、この公爵家を継ぐ者として、やっていけないだろう。


「……お気になさらず、全ての非は、私にありますから」

「何?」


 そこで、カーティアはゆっくりとそう呟いてきた。

 それに、俺は驚いていた。なぜなら、その時の彼女の表情はまったく変わっていないにも関わらず、俺にはそれが落ち込んでいるように見えたからだ。

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