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公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。  作者: 木山楽斗
第三章 ウルスド編

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自分が情けない(ウルスド視点)

「毎日、早起きして、一日中作業して……大変でした。今の生活にも苦労はありますけど、あの頃に比べると随分と豊というか、なんというか……」

「それは、そうでしょう。やはり、貴族ですからね」

「ええ、でも、私、こうやって土が恋しくなる程には、あの時に愛着があったのかなと、今になってそう思うんです」

「そうですか……それは、いいことだと思います。ルネリアお嬢様は貴族ではありますが、その時のことを忘れないでいてくれるというのは、平民の私からすると、嬉しいことです」

「そうなんですか?」

「ええ、そういうものなのです」


 ルネリアの昔を懐かしむようなその言葉に、俺は拳を握っていた。そこには、彼女の平民としての苦労が滲み出ていたからだ。

 ダルギスさんの言葉もそうである。平民としての思いが溢れている。

 俺は、そんな身分になりたかったと言った。だが、それを本当に理解していたのだろうか。

 そう自分に言い聞かせた時、答えはすぐに出た。それによって、俺は震える。自分が情けないと。


「……どうやら、わかったようね」

「え?」


 そんな俺に、誰かが呼びかけてきた。ゆっくりと振り返ると、そこにはクレーナがいる。

 どうして、彼女がここにいるのだろうか。その疑問はあった。

 だが、今はそんなことはどうでもいい。俺はもっと大事なことを彼女に言わなければならない。


「クレーナ、俺は自分が情けない。平民になれば、自由が手に入るなんて、そんな訳がないのに……」

「そう……そうね。まあ、今までのあなたはとても見っともなかったというか、貴族の傲慢というか、そんな感じだったわね。でも、今はいい顔になっているわ。少なくとも、高慢な貴族は卒業といった所かしら?」

「……ああ、そうなりたいと思っている」


 俺の言葉に、クレーナは笑ってくれていた。

 その笑顔を見て、俺は思う。彼女は、なんと優しいのだろうかと。


「ありがとう、クレーナ……俺は、お前のおかげで大事なことを理解できた」

「お礼なら、私ではなく……いえ、まあ、それはいいかしら? そんなことより、この程度で理解したなどとは思わないで欲しいものね。今から、あなたにもっと教えてあげるから、支度をしなさい」

「支度?」

「出かける支度よ」

「……わかった」


 俺はクレーナの言葉に、ゆっくりと頷いた。

 彼女が、何を考えているかはわからない。だが、俺はそれでいいと思った。

 今なら、確信できる。彼女は、俺に何か重要なことを教えてくれようとしているのだ。それなら、俺はそれに従うだけである。

 こうして、俺は身支度のために屋敷の中に向かうのだった。

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