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公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。  作者: 木山楽斗
第二章 イルフェア編

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価値観の違い(イルフェア視点)

「キルクス様は、お兄様に対して憧れとか、そういう感情を持っていますか?」

「憧れ……尊敬はしているが、それは憧れというべきものかは、怪しい所だな……」

「そうですか……でも、そういう対象というのは、なんというか近寄りがたいものではありませんか?」

「む……?」


 キルクス様は、私の言葉に対して少し不思議そうな顔をする。私は、そんなに変なことを言っただろうか。


「……確か、俺は以前、兄上のことをお前に話したはずだ。その内容を覚えているか? 兄上が、どんな人間だったかということだ」

「え? 確か、人を惹きつける……あ」

「そうだ。兄上は、近寄りがたい対象ではない。むしろ、その正反対なのだ」


 キルクス様の言葉で、私は気づいた。確かに、ガルディアス様の性質は、私の考えていた特別とは正反対のものである。

 そんな簡単なことに気付かなかったとは、私の視野も狭くなっていたようだ。なんというか、それが恥ずかしい。


「だが、お前が何を言いたいかは理解できてきた。つまり、お前は憧れを抱かれる近寄りがたい存在という訳か」

「えっと……」

「謙遜する必要はない。お前が優れた人間であるということは、俺も知っている。俺から見ても、そうだ」

「そう、ですか……」


 私は、少し落ち込んでいた。やはり、私はそういう存在なのかと。

 キルクス様から見てもそうなのだ。ということは、ルネリアから見てもそうなのだろう。


「ただ、そうだな……俺はお前が優れているからといって、近寄りがたい存在だとは思わない」

「え?」

「……俺はむしろ、近づきたいと思う。そうだな……これは、そうなりたいという対象ではなく、婚約者として見ているからだろうか」


 キルクス様は、言いながら少し目をそらした。その言葉が、少し恥ずかしかったのだろう。

 彼の言わんとしていることは理解できた。確かに、恋愛対象や婚約者としてみるならば、特別な存在というのは異なる意味を持つのかもしれない。

 そう考えて、少し恥ずかしくなってきた。目の前にいる彼のことを、かなり意識してしまったからだ。


「そして、俺は家族も同じだと思っている」

「え? どういうことですか?」

「他人と一つ屋根の下で暮らしている者とで、価値観が一致するはずはないということだ」


 キルクス様の言葉が、理解できない訳ではない。確かに、家族と他人では違うだろう。

 しかし、それを完全に受け入れることはできない。私の中にある長年の疑念が、それを許さないのだ。


「……ふむ。まあ、手っ取り早いのは本人に聞いてみることだな」

「本人に聞く、ですか?」

「ああ、それが早いということは、お前もわかっているだろう? 年齢などを言い訳にしてはならないぞ。腹を割って話すということに、大人も子供もない。お前は、自分の考えを妹に真っ直ぐ話すべきだ」

「それは……」


 キルクス様の指摘は、最もである。私のこの悩みを解決するには、ルネリアと話すことが一番なのだろう。

 ただ、怖かった。それで彼女から、明確に拒絶されたなら、私はどうすればいいのだろうか。

 しかし、それでは駄目なこともわかっている。結局の所、それを確かめなければ、前に進むことはできないのだから。

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