疲れているから(イルフェア視点)
「おはようございます、イルフェアお姉様」
「おはよう、オルティナ」
朝食堂に向かう道中、私は妹のオルティナと出会った。
いつも元気な彼女は、今日も変わらず元気に挨拶してくれる。それは私にとって、とても嬉しいことだった。
ただ、少し気になることがある。オルティナが来た方向は、彼女の部屋がある方向ではないのだ。
「オルティナ、あなたは今日もルネリアの部屋で寝たの?」
「あ、はい。そうですよ。ルネリアと一緒に寝たんです」
「そう……でも、それならルネリアはどうしたの?」
オルティナがルネリアの部屋にお邪魔するのは、よくあることである。ただそういった時、彼女は妹とともに部屋から出て来るはずだ。
それなのに、今日は一人である。ルネリアに何かあったのだろうか。少し心配である。
「それがルネリアは、アルーグお兄様に呼び出されていて……」
「アルーグお兄様に?」
「ええ、なんだかよくわかりませんけど、私がいたらできないような話をするみたいです」
オルティナの言葉に、私は驚くことになった。
体調不良などではないということは安心できるが、オルティナに聞かせられないアルーグお兄様からの呼び出しとなると、色々と考えてしまう。
ルネリアの出自は、特別である。そのことで何か問題でも起こったのだろうか。これは後で私も、アルーグお兄様から話を聞かなければならないかもしれない。
「アルーグお兄様はずるいですよね。大事な話だからって、ルネリアを独り占めするなんて」
「それに関しては、許してあげても良いのではないかしら? そもそもオルティナは、昨日から一晩ルネリアを独り占めしていた訳でしょう?」
「それは……そうですけど」
アルーグお兄様のことを考えながら、私はオルティナの言葉に答えた。
本当に、オルティナはルネリアのことが大好きだ。元々弟や妹が欲しかったということもあるが、どうやら気が合うようである。
弟のエルーズもそうだが、オルティナもルネリアも素直で優しい性格だ。故に波長が合うということなのだろう。それに関しては、いつも微笑ましく思っている。
「それにアルーグお兄様は、重圧を背負っているから、いつも疲れ気味でしょう? だから、ルネリアと接して癒されることは必要だと思うのよ」
「……それは確かにそうかもしれませんね」
私の言葉に、オルティナはすごく同意してくれた。
自分で言っておいてなんだが、彼女の中でアルーグお兄様はそういう印象であるらしい。実際の所、間違っているという訳でもないのだが、なんだか少し物悲しいような気もしてくる。
「アルーグお兄様、しっかりと癒されてくれると良いですね……」
「え、ええ、そうね……」