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気を遣われては(ウルスド視点)

「エルーズ、おはよう」

「ウルスドお兄様、おはようございます」

「調子はどうだ? 昨日こっちから帰って来たばかりだけど、疲れが溜まっていたりしていないか?」

「はい、大丈夫です」


 朝の準備を終えて食堂に向かう道中、俺は弟のエルーズと出会った。

 昨日までは別荘で療養していた弟の顔色は、良いように思える。やはり自然が多いあちらは、健康に良いということだろうか。

 いや、それだけではないかもしれない。あちらには、父上がいる。それもエルーズに良い影響を与えている可能性はあるといえる。


「なるほど、エルーズは元気か」

「……なんだか含みがある言い方ですね?」

「うん? ああ、その、アルーグ兄上と先程会ったんだがな。なんだかいつもと少し様子が違うような気がして」

「アルーグお兄様が?」

「ああいや……」


 エルーズの疑問に対して自然と答えていた俺は、自分の過ちに気付いた。

 アルーグ兄上の不調なんて心配要素を言って、何になるというのか。余計な心配をかけて、エルーズまで体調を崩しかねない。それを考えるべきだった。

 しかし一度口に出したことを取り下げることはできない。ここはなんとか、上手く誤魔化さなければならないだろう。


「まあ、アルーグ兄上は俺達とは比べ物にならないくらいに重圧を背負っている。故に色々と悩むべきことがあるのだろう。それは俺達が気にするようなことではないさ。相談するにしても、母上、イルフェア姉上が選ばれるだろう。俺が三番手……になるかは、微妙な所だが」

「アルーグお兄様は、ウルスドお兄様のことを頼りにしていると思いますよ。僕と二人きりの時に、よくそう言っていますから」

「え? そ、そうなのか……」


 誤魔化すために言ったことに対する返答に、俺は思わずはしゃいでしまった。

 だがすぐに気付く。これはもしかして、エルーズが気を遣ってくれているだけなのではないかと。

 あのアルーグ兄上が、俺のことを頼りにしているなんて口にするだろうか。自分で言うのもなんだが、俺はそんなに頼りになる存在ではないし。


「エルーズはできた弟だな……」

「え? どうしたの? ウルスドお兄様……」

「いや、気を遣わせてしまって悪かったな。まあ、アルーグ兄上のことは、なんとかなると思うぞ? 兄上は強い人間だからな。多少の困難はすぐに乗り越えるさ」

「そうですか? それなら、良いんですけど……」


 結局俺は、アルーグ兄上のことは放っておくことにした。

 兄上を助けたい気持ちはあるが、弟である俺にできることはそう多くない。それが兄上の誇りを傷つける可能性もあるし、少なくとも今は様子を見るべきだ。

 何日か経って問題が解決しないようなら、改めて考えるとしよう。そんなことを考えながら、俺はエルーズとともに食堂に向かうのだった。

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