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十歳の春に

 平凡な村娘だった私が、公爵家の隠し子だと判明したのは、つい最近のことである。

 早逝した母の葬儀が終わり、悲しみに明け暮れる私の元に、公爵家の使いを名乗るものがやって来て、その事実が伝えられたのだ。


 私が、公爵家の人間であるということは、未だに信じられない。

 ただ、当の公爵が母と浮気していたことを打ち明け、その結果できたのが私と言っているのだから、それは間違いないことなのだろう。


 私は、ラーデイン公爵家で暮らすことになった。血筋の人間を、保護するという名目で、私はここに連れて来られたのだ。

 しかし、隠し子という立場で、公爵家に連れて来られるなんて、私にとっては恐怖でしかなかった。どう考えても、疎まれる存在だとそう思っていたからだ。


 それが、どうしてこうなっているのだろうか。私は、自分の現状に対して、そのような感想を抱いている。

 というのも、実の所、私の公爵家での立場は想像していた通りのものではなかった。もっと、別の扱い方をされているのだ。


「あら? ルネリア? どうかしたの?」

「お腹でも痛いの?」

「いえ、大丈夫です。なんでもありません……」

「そうなの? それなら、いいのだけれど……」


 色々と考えて悩んでいる私を、二人の姉は心配してくれていた。

 その視線は、慈愛に満ちている。どうして、こんな視線を向けてくれるのだろうか。


「何か悩みでもあるなら、相談するんだぞ?」

「うん、僕もそれがいいと思うな……」

「一人で抱え込んでいても、いいことなどはないからな……」

「は、はい……」


 三人の兄も、二人の姉と同じように私を思ってくれている。どうして、ここまで気遣ってくれるのだろうか。


「ルネリア、遠慮はいらないのよ。私達は、家族なのだから……」

「え、えっと……」


 さらには、公爵の妻、つまりは私の義母も私にそのようなことを言ってくれる。

 それが、私にはわからない。一体、どうしてそこまで言えるのだろうか。


 公爵家の人達は、私にとても優しかった。いびられたりする所か、私はとても丁重に扱われているのだ。

 それに、私はただただ困惑するばかりである。どうして、私がそんな風に扱われるのか、まったく理解できない。


 隠し子である私に、そんな優しくできるものなのだろうか。簡単に兄弟として受け入れられるものなのだろうか。

 そんな思いが、私にある考えを思いつかせていた。もしかして、公爵家の人々には何か裏があるのではないかと。


「調べてみる価値は……あるのかも」


 私は、小さな声でゆっくりとそんなことを呟いた。

 こうして、私は公爵家の人々の実態を調べると決めたのである。

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