第6話:御水振《オミフリ》
あたしの声に応じて喋ってくれたのは七つのうちの一つ、青色の光だった。その他の光は点滅したり、部屋の中をぐるぐる飛んだりするだけ。
「あ、あの、どちら様ですか?」
『私の名は御水振。其方に宿る魂の一つ』
「おみふり、さん?」
怒らせないように丁寧に聞いてみたら、凛とした声で答えてくれた。
それにしても変わった名前だなあ。
『これまでずっと見守ってきたが、こうして其方と話せるようになるとは思わなかった』
「いつも?」
『如何にも』
ちょうど目線の高さに合わせて浮かぶ青い光。声は大人の男の人だ。つまり、御水振さんは男ってことだよね。
「……あの、見守るって、二十四時間?」
『当然だ』
あああああああーーーーッ!!?
それって、着替えやお風呂も見られてたってこと?
いやいやいや、ダメでしょそれは。いくらオバケでも、男の人に見られただなんて恥ずかし過ぎる!!
『我らはオバケではないぞ』
「あ、ごめんなさい。…………えっ?」
今、声に出さなかったよね?
心の中まで監視されてるの??
プライバシーの侵害じゃない???
「心は読まないで!」
『今更だと思うが』
「いいから、お願いします!!」
『……わかった』
お、快諾してくれた。
ホントに心を読むのをやめたかどうかは確認しようがないけど、堂々とやられるよりはマシだと思おう。
「あれ? 二十四時間見守ってるはずなのに、なんであたしの部屋に? ずっとくっついてるわけじゃないんですか」
『普段は其方の側にいる。……だが、先程急に弾かれて部屋に飛ばされたのだ』
「はあ……」
どういうことなんだろう。
ていうか、光の塊が喋ってるって不思議。頭の中に直接声が響くみたいな感じ。
「あの、他の六つの光は喋らないんですか」
さっきから、あたしの周りをふわふわと漂う六つの光。赤、黄、橙、紫、緑、そして藍。青色の御水振さんと違って何も喋らない。
『今も語り掛けておるが、其方には聞こえておらぬようだ』
御水振さんの言葉に賛同するように、光がくるくるとあたしの周りを飛び交っている。
そうか、喋ってるけど聞こえてないだけなんだ。
『何故私の声だけが聞こえるようになったのかは分からぬが、……また其方と言葉を交わせるようになって嬉しい』
青い光がフッと笑った気がした。
そんな風に言われちゃうと邪険に出来ないじゃん。お兄ちゃんの言う通り、悪い人(人?)ではなさそう。
「でも、それとこれとは話が別ッ!」
『何故我らを部屋から追い出すのだ』
「あたしは着替えたいの!!」
『其方の裸体など見慣れておるというのに』
「あああああバカバカバカ!! 着替えとお風呂とトイレの時はどっか行って!!!」
見られてると分かって許すわけないでしょ!