第35話:彼女からの謝罪
ゴールデンウィークが終わってしまった。五連休の間になんだか色々なことがあった気がする。
「おはよ、夕月」
「夕月ちゃん、おはよう」
「おはよう千景ちゃん、夢路ちゃん!」
家の近くで合流して、三人揃って登校する。久しぶりの学校は憂鬱だけど、仲のいい友だちとこうして話しながら歩くのは好き。
しばらく進んだ先で、前を歩く八十神くんの姿を見つけた。
彼はこちらに気付くと、にこっと笑って手を振ってきた。笑顔で返したのはあたしだけで、千景ちゃんも夢路ちゃんもプイと顔を背けた。まだ彼を警戒してるっぽい。
「夕月ぃ、アイツに絡まれたりしてない?」
「し、してない」
「絶対に二人きりになっちゃダメよ」
「な、ならない」
どういう警戒の仕方???
教室内に入ると、なんだかザワザワしていた。叶恵ちゃんが十日ぶりくらいに登校してきたからだ。最後に見た時はやつれてたけど、すっかり顔色も良くなって元気そう。
でも、笑顔は見られない。
夜中に山の麓で倒れていたり、その山から壊れた祠が見つかった件で色々な噂が流れている。ちらちら見ながらクラスメイトたちが何かを囁き合っていて、叶恵ちゃんは居心地が悪そうにしていた。
「ちょっとアンタたち、言いたいことがあるなら堂々と言いなさいよ!」
肩身の狭い思いをしている叶恵ちゃんを庇うように、歩香ちゃんが大きな声を出した。隣にいる深雪ちゃんも仁王立ちで教室内を睨みつけている。その剣幕に、噂話をしていた子たちはピタッと黙った。
「あ、ありがとう。二人とも……」
「いいのよ。友だちでしょ」
おお~、友情だ……!
と、キラキラした目で見ていたら、あたしまで睨まれた。ああ、やっぱりまだ嫌われてる。叶恵ちゃんと一度目が合ったけど、すぐに逸らされてしまった。縁結びの祠に行く前の記憶はあるんだもんね。仕方ないか。
少し心配だったけど、叶恵ちゃんには歩香ちゃんたちがついてるし、これなら安心。
放課後、帰る前にトイレに寄ったら叶恵ちゃんと鉢合わせた。お互い気まずい表情で軽く頭を下げる。
「あの、体、もう大丈夫?」
「う、うん」
「ええと、無理しないでね」
「……ありがと」
もう少し気の利いたことが言えたら良かったんだけど、とにかく体調を気遣う言葉しか出なかった。
手を洗って先に教室に戻ろうとしたら、
「……ごめんなさい」
と、小さな声で謝られた。
それが以前空き教室で突き飛ばしたことなのか、それとも縁結びの祠にあたしの排除を願ったことなのかは分からない。
でも、叶恵ちゃんは勇気を出して話し掛けてくれた。それが嬉しくて「ううん、気にしないで!」とだけ返した。




