表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神成りの娘。  作者: みやこ嬢
3章・田舎町の謎
31/97

第30話:夜の神社で

 その日、お兄ちゃんは朝からずっと部屋にこもっていた。出てくるのは食事の時だけ。一緒に遊ぼうと声を掛けたけど部屋に入れてもらえなかった。体調が悪いわけではなさそうなんだけど。


朝陽(あさひ)にも勉強があるんだから、あんまり邪魔しないのよ。あんたは宿題終わったの?」

「うっ……まだ」

「ホラ、さっさと終わらせちゃいなさい!」


 お母さんから怒られちゃった。

 勉強会でほとんど終わらせたから油断してたけど、明日で連休も終わりなんだよね。あーあ、五連休なんかあっという間だよ。八十神(やそがみ)くんは初日に終わらせたって言ってた。超計画的。見習わなきゃ。






 夜、自分の部屋で寝ている時に胸騒ぎがして目を覚ました。


 時間は日付が変わったくらい。いつもはこんな時間に起きることなんかないんだけど、昼間みたいに頭が冴えちゃって二度寝出来そうにない。


 ベッドの上で身体を起こすと、青色の光がパッと現れた。御水振(オミフリ)さんだ。


『起きたか』

「うん、なんか落ち着かなくて」

『……やはり、繋がっているのかもしれぬ』

「え、どういうこと?」


 聞き返すと、御水振さんはあたしの鼻先に寄って来た。近い。


其方(そなた)が目覚めねば、こちらから起こそうと思っていたところだ』

「なんで? 夜中だよ?」

『朝陽が危ない』

「えっ」


 お兄ちゃんが?

 もしかして、また部屋で倒れてるの?


『いや、朝陽が今いる場所は神社だ』


 考えるより先にベッドから飛び降りた。

 パジャマの上に1枚羽織り、そのまま階段を降りる。お父さんもお母さんも寝ているから、階下は真っ暗。御水振さんたちの光を頼りに進み、一応お兄ちゃんの部屋に立ち寄る。


「……ホントにいない」


 お兄ちゃんのベッドはもぬけの殻。

 すぐに玄関に向かい、音を立てないように気を付けながらスニーカーを履いて外に出る。


 道路に出てから、あたしは思いっきり走った。神社まではそんなに遠くない。走れば五分くらいで着く。


 田舎だから、夜に出歩いてる人なんていない。民家もまばらで、街灯も少ない。田んぼに囲まれた細い道を御水振さんたちの光が照らしている。普通の人には見えない光だから、誰にも姿は見られない。


 あれ?

 光の数が足りない。

 でも、今はお兄ちゃんが先だ。


 神社の鳥居をくぐって境内に入る。

 あたしの周りは明るく照らされてるけど、それ以外は真っ暗。夜の神社は昼間とは違ってなんだか背筋が凍りそうなほど不気味で怖い。じわじわと闇が迫ってくる感じがする。


 玉砂利を踏みしめながら奥に進むと、三つ並んだ末社の前で膝をついてる男の人の姿を見つけた。


「お兄ちゃん!!」

「ゆ、夕月(ゆうづき)……?」


 息を切らし、苦しそうな様子でお兄ちゃんが振り向く。あたしの姿を見て驚いたように目を見開き、その後ぱたっと倒れてしまった。


「ホントにいたぁ!」


 お兄ちゃんの身体を起こし、ぎゅっと抱きしめる。喋る元気もないみたいで、耳元に聞こえるのは荒い呼吸の音だけ。発作を起こした時みたいな苦しみ方だ。


『朝陽はこの社に祀られている神を宥めるために来たのだ』


 どういうこと?


『この町は放置された祠や社が多い。それらが堕ちて禍ツ神にならぬよう見つけ、宥めるのが朝陽の役割だ』


 ……聞いても全然わかんない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ