10話 悲しみと怒りと懐かしさ
悲しみと怒りと懐かしさ
な……んで、奈波ちゃんの足が切断された?
「あたしが、あたしが狙いじゃないの!! なんで奈波ちゃんが!」
「足の一つや二つで騒ぐな。すぐ再生させる。それより」
「……許さない」
「君はもう心配する必要はない。何故なら……」
「許さない!!」
奈波ちゃんの足を斬った、スゴンドに接近する。しかし、その間に、真美が立ちはだかり、
「えい!」
鎌で斬り付けられた。しかしすんでの所で回避……できない。これは終わったね。
何時間寝ていた!? いや、此処はさっきの戦場。そして、スゴンド、アームもいる。と言う事は数秒程度。って、真美ちゃんが光ちゃんを斬り付けようとしている。このままじゃ、光ちゃんもやられちゃう。なら、此処はもう腹をくくるしかないかな、風のサモンエッグを飲み込む。苦しい。マズイ、えずいてしまう。でも飲み込んだ。これで、これで! 羽が生えた、これなら、
何かが胴体に、いや見えていた。見えていたのに、脳が理解を拒否する。どうして、あたしを救うの? どうして、どうして、そのまま鎌を振り下ろすの? どうして、どうして、奈波ちゃんが倒れているの? どうして、奈波ちゃんは血まみれなの!?
「う、うああああああああああああ!!!」
「うる、さい、よ」
奈波ちゃんの声がする、奈波ちゃんまだ生きている!
「喋らないで! 今すぐ治療を!」
周りを見渡す。いつの間にかスゴンドとアームがどこかに消えていた。真美は混乱していて、使い物にならない。どうすれば、どうすれば!
「もう、僕は、駄目、だか、ら、だから、こそ」
「そんなことないよ! まだ、まだ何か手がある筈! はずなんだよ!」
いきなり、奈波ちゃんが、おでこにキスをした。そして、そこから記憶記録が流れ込んでくるのが分かる。
「そん……な!」
奈波ちゃんの手が力なく落ちる、奈波ちゃんの頭が、ダメージを気にせずに地面に落ちる。
「分かったよ。奈波ちゃん。ならあたしは、珠樹さんたちを助けるよ」
入ってきた記憶が告げる。もし、僕が死んだら、珠樹さんたちを助けて、11年前の異世界侵略戦争時に世界が上書きされるはずだから、そこに居る、奈波ちゃんに会う。そこでキスすると、記憶が引き継がれる。そういう記憶が、頭を巡る。だけど、これは保険中の保険。本当は、真美ちゃんとあたし、奈波ちゃんで仲良く旅がしたかったみたい。でもあたしには、あいつとは仲良くなれない!
「奈波ちゃんの仇!」
「そんな私じゃない、私じゃない! 私は奈波ちゃんを殺してない!!」
自分を言い聞かせるためか、その言葉を連呼している。でも知ったこっちゃない。このまま首を!
「こ、此処で死ぬわけには!」
杉谷は、なんとか巨鎌を構え、此方を見据える。
「エンドレスウエポンサモン!」
もうどうなったって良い。そう思って、木に火をつけてそれを木と風と火、音と光のサモンエッグにぶつける。そしてそこから武器が一個ずつ召喚され、さらに、鉄に毒薬をかけて、そこに、毒と金、土と電気、水のサモンエッグをぶつける。それからも各一種類ずつの武器が召喚された。それらの武器を全て攻撃に使う。さあ、いなくなれ! 杉谷は避けたり、防御しようとしているけど、それでも、武器は当たり続ける。腕に切り傷を、膝に打撲、そして、首を取れそうなところで、
「はい、そこまでだよ」
何者かが間に入る。首に迫っていたナイフは地面に叩き落とされて、すべての武器は魔力弾によって落とされ、サモンエッグへと戻っていた。
「なんで邪魔する!」
「まあ、落ち着いて、私は、両方に生き残ってほしいんだ。あの子が蘇った時のために、あなたも魔力切れが近いよ、だから攻撃を止めたんだ」
「誰なんだよ!」
「私は、世界への反逆者、珠樹。飯野珠樹だよ」
ようやくあたしは顔を上げた。そこには昔と変わらない、追い求めていた英雄。珠樹さんがいた。
「うわあああああああん!」
あたしは泣き崩れる、どうしたらいいのかわからず、でも憧れの人に会えて、だけど、一番会いたかっただろう、奈波ちゃんを会わせてあげられなくて、もう感情がぐちゃぐちゃだった。




