11話 城
城
上層に着くと、日本の城があった。
「何これ?」
「さあ~」
本当に立派なお城で、門もちゃんとある。その門を上へ上へと昇ると、やっとの思いで、
「あれが天守閣かな?」
「そうだね~」
「門と、石垣で分かりにくかったけど、あんな大きさの物どうやって築いたんだろう?」
「ここのエルピスさんの力かしら~」
「そうエルピスの力~。基本的にあたしたちは先天的能力を持っているよね~? あたしは嘘発見を持っているんだけど~」
「うん、僕だと、居場所探知だね」
「エルピスさんたちは、それにプラス後天的能力、生前能力ってものを持っているんだ~。後天的能力はほかの人でも持ち得るんだけどね~」
どんどんと僕たちは進んでいく。ここには、先に行った二人しかいないだろう。と決めつけている。それにしても、恰好のいい城だなぁ。
「生前能力ってどういう事? ヴィーナスさんたちは死んでいて、幽霊って事?」
「ええ~っとね~、簡単に言うと、世界の調律者ってところかな~。エルピスと呼ばれる七人は~、世界の機械と魔術のはやりを観測、偶に介入して世界の行く末を調整しているんだよ~。それで~、生前能力っていうのは、生前の偉業を基にした、能力らしいんだ~例えば、ヴィーナスさんは~お兄さんを支え、影のように頑張った人だから~自分の痕跡、力を隠す能力を持っているよ~」
そうこうしているうちに、広間に着いた。ヴィーナスさんが上座に座り、そのヴィーナスさんに対して、頭を下げている金髪メイド服の女性がいた。その横で師匠はサターンに頭を押さえつけられている。
「お久しぶりです、ヴィーナス様。助けていただき、恐悦至極でございまする」
ヴィーナスさんは上座から降りて、隣に行くと、
「だから、今は対等なんだから、そんなに頭を下げないでよ。てか、ワームホール使ってまで上座に私を置く?」
「ですが、ヴィーナス様は我が主ですので」
「まあいいわ。って二人とも大丈夫だったのね。良かったわ。けど皐文とさっきの鬼は?」
「あの二人なら少年兵を巻き込んで」
「自爆した?」
「しないよ! どこかに転移したみたいだよ」
「なに、皐文がこっちにいるだと?」
あ、ヴィーナスさんの口調が変わった。
「ああ、あいつは、異界渡航の能力を持っていてな、一日一時間ほどあの世界から出てきているそうだ」
「成程、それならいい。じゃあ脱出しようか」
その言葉と共に畳が下へ下へと下りていく。って、サターンさんはヴィーナスさん以外にはそんな口調なんだ。
「そういえば、飯野。あいつらはちゃんと逃がしてくれたのか?」
「ああ、うまくいったぞ。だが、脱出方法が解らないんだ、どうすればいい?」
「ああ、それなら、簡単だ。エルピスを探せ。サン以外のエルピスが集まればロックは解除できるはずだ」
「成程、どういう仕組みだ?」
「我にもわからんが、多分、サンの力を抑える為だろうな。まあ、あの子たちがこの町に帰ってこれても、いい心地ではないだろうが……っとついたぞ」
そこは狭く暗い空間だった。まさに地下倉庫と呼ぶにふさわしく、苔むしていたり、なんか魚も居たりでけど海水は太股らへんまでしかない。そんな場所だった。
「よしここでいいだろう。道を開くぞ」
目の前に小さい鳥居が現れる。鳥居の向こう側を見てみると、何やら研究所みたい? いや、どうやら、放棄された研究所っぽいかな?
「紀光研究所か? 確かに、あそこなら誰もいないだろう」
「ああそうだ。じゃあ皆中に入ってくれ」
「へ? もしかして、これって空間連結?」
「そうだ。ただ連続使用はできないんだ、だから一番安全そうな場所を選んだ」
「成程ね~。紀光研究所ってよく聞くけど、サターンさんとかかわりがあったんだね~」
「そうだな。我の作戦に乗ってくれた天才の端末がいるはずだ」
「端末?」