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4 王城にて

 さすが王宮。どでかく派手だ。

 母さんは王様に会うと言うが、ホントなのか今でも信じられない。

 今は、近衛騎士さんに案内されて長い廊下を歩いている。


 城の門番に止められたときは『やっちまったか!? 母さんはボケたんだ!やべえ、つかまる!』と思ったが、母さんが名前を告げると、すんなり通してくれた。


「皆さんはじめまして。私は近衛騎士のフィル・グランゼと申します」


「あらヤダ、イケメン。眼福だわぁ。でも、ベネットのほうが可愛いわね」


 銀髪に切れ長の目、ニコリと笑うと白い歯が印象的だ。

 母さんの目がハートになっている。イケメンに弱い。

 それでも俺のほうがいいって、どうかしてるぜ?


 というわけで、その、フィルさんに案内をしてもらってるわけだ。

 うへ、あのツボ、売ったら相当な額になるな。

 高そうな調度品ばかりで目が回るぜ。


「ごろにゃーん」


 廊下の道すがら転がるパンサー。

 やめなさい。

 カーペットに毛がつくでしょ!

 ほら、衛兵さんもこっち見てる!ひィ、ごめんなさい!すぐやめさせます!


「では、こちらの部屋でお待ちください」


 案内された一室のソファーに座らせられる。


「か、母さん、大丈夫なのか? ここまで来て未だに信じられないぜ」


「ふふ、大丈夫よ。安心なさい」


 メイドさんからお茶を出され飲んでいると、しばらくして、フィルさんが入ってきた。

 一人の老人を連れて。


「おおぉ、リーゼロッテ。久しいな。いつぶりか」


「ガン坊、久しぶりね。貴方のおしめを取り換えたところまでは覚えているわ」


「ふはははは。最後に別れたときはとっくに成人しとったわい」


 ガン坊と呼ばれた老人は、それはもう威厳のある髭をたくわえたお方で、王冠に豪華なマントまでしていた。

 ちょ、明らかに王様じゃないか。それがなんでこんなにフランクに接してくるんだ?

 俺達のテーブルを挟んで正面のソファーに座る王様。


「紹介するわね。こちらベネット。私の一人息子よ」


「おお、ベネット君。私の名はガンシャンドラ・オクトーヌス7世じゃ。よろしくな」


「は、はい!よろしくお願いします」


「はっはっはっはっ。そう固くならなくてよい。君のお母さんは私の恩師なのだ。宮廷魔術師兼家庭教師であった。このとおり頭が上がらん。ガン坊か、懐かしい呼ばれ方だわい」


「そうだったんですか! まったく知りませんでした!」


「ふふふ、それだけじゃないけどねっ」


 それだけじゃない? どういうことだ? まだほかに何かあるのか?


「息子がいるということは、旦那もいたのか?私が知らない間にどんな素敵な男性と出会ったのかな? 」


「とっても可愛い方ですよ。料理を作れば必ず『君の作ったごはんはとてもおいしいね。だからリゼ、御小遣いちょうだい』って。うふふ、つい嬉しくて渡しちゃうんですよね。ベネットが産まれる直前に『ちょっと酒屋に酒買ってくるわ』って出ていったまま、まだ帰ってきてないの。どこまで買いに行ったのかしらね。」


 母さんは笑顔で語っているが、父さんのことは初めて聞いた。クズだな父さん。


「そ、そうか、早く帰ってくるといいな」


 王様もどう反応していいのか迷っている。


「私にはベネットがいるからいいんです。ベネットを育てることが生きがいですわ」


 母さん、恥ずかしいからやめてくれ。


 パンサーはソファーの上で丸くなって寝ている。母さんは寝ているパンサーを撫でながら、


「で、今回呼んだのは、どういったご用件なのかしら? 」


「……そうだな。会ってみてからがいいだろう。入ってきなさい」


 部屋の扉が開いて、一人の女性が入ってくる。

 黒髪で目の色は茶色。肌は雪のように白い。青白いと表現したほうが近いかもしれない。


「娘のエリーだ」


「わあ、綺麗な娘さんですわね」


 確かに綺麗だが、なんとなく影があるように見える。


「単刀直入に言おう。娘にかけられた呪いを解いてほしい」


「エリーです。はじめましてみなさま。私は何者かに20歳まで生きられないという呪いをかけられてしまいました」


「なぜ、呪いがかけられたと分かったんですか? 」

 俺は思わず聞いてしまった。


「はい、ある日、胸に刻印が浮かびあがったのです。その刻印が、宮廷魔術師がいうには、その、呪いであると。今いる魔術師たちでは治すことが出来ないといわれました」


「今はおいくつなんですか? 」


「もうすぐ19になります」


 ふむ、もう時間がないわけか……。


「母さん、呪いの解呪なんてできるの?」


「出来るわよ~」


 え?すごい。話が早くて助かる。


「本当か!? ぜひとも頼む! この通りだ」


 王様は深々と頭を下げた。


「そ~れ、消えろ!」


 母さんは、そんな呑気な声を出したが、周囲にはバリバリバリ! と黒い衝撃波が発生していた。

 衝撃波がおさまり、胸にあった刻印は消え去っていた。


「すごい! いろんな魔術師が挑戦してダメだったのに!」

 エリー様は歓喜した。


 俺も自分のことのように嬉しい。まさか母さんはこんなことまで出来るだなんて。


「ふふ、朝飯前よ」


『ふらっ』


 おととと、倒れ込む母さんをなんとか抱き留める。

 さすがに疲れているのだろう。まったく朝飯前ではないが。

 城にある客間に案内してもらいベットに寝かす。

 母さんはすごい人だったんだな。俺は何も知らなかった。

 そんな自分が恥ずかしい。起きたらもっと母さんのことを聞こうと思った。

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