最終回 みんなの輪
光が収まると、真っ白な空間が広がっていた。
「ここがクリスタルの中なのか?」
「ふふ、そうだよ。あそこにちっちゃい亀がいるだろう?」
ムグルディの指差すほうへと目を向けると、そこには、拳ほどの大きさの亀がいた。
近寄ってみると、
「えーん、えーん、痛いよぅ。重いよぅ」
亀が泣いていた。
「あなたたちはだあれ?」
声は幼い子どものようだ。
亀の世界には箱庭のような世界が乗っている。これが俺達の世界なのか。
「ベネットだ」
「ベネット君ていうんだね。君からはリゼの匂いがする」
「母さんを知っているのかい?」
「知ってるよ。あの人はもともと神様だもん。神の世界を捨てて人界に行ったんだ。本人ももう覚えてないだろうけど」
「なんだって……、」
「リゼが守ってきたこの世界、僕も好きだけど、頑張ってきたけど、もう限界だよ。とっても痛いんだ」
「どうしたら亀さんを助けられる?」
「僕の背中に乗ってる人が半分いなくなって欲しい。人の命は重くて、耐えきれないよ」
「すまないがそれは出来ない」
「もしくは、リゼの血を半分引いてるベネット君の命があれば、永らえることが出来ると思う」
「そんなことさせられるか!」
父さんが亀に詰め寄る。
「……、少し考えさせてくれ」
「持ってる聖剣で胸を貫けば、簡単だよ」
ここでも聖剣なのか。
そうか。俺の命一つでなんとかなるならいいかもしれない。
「わかった。亀さんに命を捧げるよ」
「ベネット! まて! そんな方法で納得できるわけないだろう!」
「いいんだ、父さん。みんなのため、母さんのためなら、命は惜しくないよ」
俺は聖剣を手に取って胸に突き立てようとした。
「待ってベネット」
「……、!母さん!」
どこからともなく現れた母さんが俺を止めた。
「母さん、どうして?眠ってたんじゃないのか?」
「まだ眠ってるわ。貴方たちがクリスタルの中に来たから、飛んできたのよ」
「母さんは、……、神様なの?」
「そうね、大事なことなのに忘れてたわ」
母さんは亀に向きなおる。
「私も悪かったわ。役割を放り投げていてごめんなさい」
「リゼ。おかえり」
「これ以上、亀さんだけに支えてもらうのは止めましょう。誰かが誰かのために背負うのはよくないわ。誰か一人で支えるんじゃなくて、みんなで支えなきゃ」
「みんなで?リゼ、どうするの?」
「こうするのよ」
母さんは亀の背中に乗った箱庭の世界を優しく持ち上げると、べこべこと折り曲げて、ついには球体にした。
「世界をまあるくすれば、みんなで支え合えるわ」
「僕はもう、世界を支えなくていいの?」
「いいのよ。ほら、丸くなった世界が安定していくわ」
「ホントだ。僕はもう自由だね」
「今までありがとう亀さん」
「こちらこそありがとうリゼ」
「さ、ベネット、帰りましょう。私達の世界に」
「あ、ああ。母さんは最後まで力業だね」
「ふふ、神様パワーよ」
こうして、世界は平面から球体になるのでした。
それから何百年、何千年経つと地球と呼ばれることになりますが、それはまた別のお話。
「母さん、また冒険者パーティから追い出されちゃった」
「もう、ベネットはドジっこね。ちょっと用事があって王都に行くから、ついてきてくれない?」
~Fin~
もう一話、みんなのその後を描きます。
人によっては蛇足といえる内容なので、ここで最終回と書きました。




