35 仲間割れ
父さんは無事なのか!?
魔王ランキングでは父さんがトップなら大丈夫だろうと思うけど、心配だ。
パンサーから受け取った聖剣を掲げると、バリンッという音とともに結界が砕けた。
そこにはボロ雑巾のようになった父さんがいた。
「親父!? なんでそんなにボロボロなんだよ」
「……、へへっ、説得に失敗しちまったよ」
ノーラがすかさず駆け寄って治癒魔法をかける。
「あれー?ムグルディ負けちゃったの?」
「ごめん姉さん、やられちゃった」
「だっさい。こっちはコンクレアスが手を出してこないからいたぶって遊んでたのに~」
「なんて酷いことをするんだ!」
「えー、だって簡単に殺したらつまんないじゃん~」
「こいつがどうなってもいいのか!」
俺はムグルディと呼ばれた少女を人質にした。
「いやー、姉さん助けて~」
「うわ、主人公にあるまじき汚さにゃー!」
パンサーがうるさいがここは悪魔にでもなってやる。
って、主人公ってなんだ!
「ムグルディを離して!」
「離して欲しければ人界を攻めないと誓え!」
「えー、やだー」
緊張感に欠けるな。
治癒が終わった父さんがフラフラとこっちに歩みよってくる。
「親父! 大丈夫か!?」
「……かやろう」
「え?」
「バカヤロー!」
バキッ
父さんのアッパーが俺のあごを直撃した。
脳天がクラクラする。
「な、何するんだ親父!」
「人質をとるなんて卑怯なマネするな! ムグルディを離してやれ!」
ええ……、父さんがピンチだから仕方なく人質にしたのに。
ぽっ
なんだ今の音は。
「なんて男らしい人なの」
ムグルディがホホを赤らめている。
「ムグルディ、どうしちゃったの?」
「姉さん、コンクレアス様の言う事聞こう」
「さま!?」
「僕はコンクレアス様に惚れました。コンクレアス様についていきます」
「え?ちょっと、ムグルディ、そりゃないよ!」
「コンクレアス様、この縄を解いてください。僕が姉さんに言う事を聞かせてくる」
父さんによって縄が解かれる。
「あーあ……、せっかく捕まえたのににゃー」
「姉さん、僕たち間違ってるよ。やめようコンクレアス様のいる世界を滅ぼすの」
「はあ?ムグルディ、めちゃくちゃ言いすぎ。姉妹で神になろうって約束したじゃん」
「僕は神じゃなくてお嫁さんになりたい」
「何バカなこと言ってんの!?」
「バカとはなんだ! 姉さんのアホ!」
「アホじゃないもん!」「バカじゃないもん!」
そこからは子どもの喧嘩だった。
おっと、ミグルディが手を出した!
ムグルディが応戦してポコポコ喧嘩になる。
しばらくして……、
「うえーん、ムグルディのバカぁ」
「僕の愛の勝ちだ。コンクレアス様、僕たちはコンクレアス様に従います」
「そ、壮絶な戦いだったにゃ……」
これでいいのだろうか。
「おう、ありがとうなムグルディ」
父さんがムグルディの頭を撫でると、満足そうに笑顔になった。
「で、親父、これで魔王は全部倒したけど、問題の亀はどうするんだ?」
「ああ、まずは魔王たちを扇動して人界を滅ぼそうとした亀に文句言わなくっちゃな」
「でも、どうやって?」
「クリスタルの中に入れば、亀と直接話が出来る。だが、精神世界に入るための手段が今無い。」
「僕たちなら出来るよ」
ムグルディが嬉々として手を挙げた。
「コンクレアス様、貴方様のお嫁さんにしてくれるなら連れてくけど、どうする?」
「いや……、俺には妻がもういるんだ」
「じゃあ、愛人でもいいよ」
「いや、困ったな」
「親父、ここはうんって言っとけよ!」
「そうにゃそうにゃ、それで解決にゃ」
ボコッボコッ
「いてっ」「痛いにゃ!」
俺とパンサーは殴られた。
「妾くらいよかろう。ベネットにも嫁は二人いる。ここは納得してもらわんとな」
ミーアゴッズが重々しく言うと、父さんはうーんと唸った。
「……、まずはお互いを知ることから始めよう」
よし、折れた!
ムグルディはもじもじしている!
あれ……、これはつまり、俺に母さんが二人目出来るということか。なんか変な感じがするな。
「よし、亀の元に向かおう」
ミグルディ、ムグルディが呪文を唱えると俺達は眩い光に包まれた。




