表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/37

31 起きない母さん

母さんが眠って一週間。寝顔は穏やかでまるっきり起きる気配はない。


「魔界のクリスタルは安定している。リゼのおかげだ」


母さんが寝てすぐにクリスタルを見てくると出て行った父さんは、三日ほどで戻って来てそう言った。


「けど、母さんは寝たままだ。魔界のクリスタルとやらのために母さんを犠牲にするのか? だいたいなんで酔っぱらってるんだアンタ!」


「……。」


そうなのだ。父さんは帰ってきたと思ったら飲んだくれている。

帰ってきたときも持っていたのはキャバクラのマッチが五箱。

どんだけハシゴしてんだ。母さんが寝てるってのに。


「だいたいなんで俺が産まれたとき、家を出てったりなんてしたんだ?」


「俺はな、産まれたお前に嫉妬したんだ」


「え……?」


「リゼの愛を一身に受けるお前に。ちっちゃい手でさ。今にも壊れそうで、俺はいないほうがいいかなって」


「なんだよそれ、どんだけ母さんが寂しい思いをしたと思ってんだよ」


「ああ。すまないとも思っている」


「……、親父。クリスタルの崩壊の原因はなんなんだ?」


「お前も知ってるだろう? この世界は巨大な亀が背負ってるんだ。その亀が、増えすぎた人口に耐え切れなくなってきている。支えきれなくなってしまうんだ」


「な、なんだって」


「解決するには増えた人口をなんとか減らすしかない。だが、お前に言えるか? 死ねと」


「そんなこと……言えるわけない」


「人が頑張って築いてきた幸せを壊せなんて誰が言える。だが、十大魔王にその使命が課せられた。魔界の住人が殺せないなら『人界を滅ぼせ』ってな。こんな使命、くそったれだ。」


「我は今初めて知ったぞ、使命の本当の理由を。人を滅せよという理由はそんなところにあったのか」


ミーアゴッズが愕然としている。


「ワタシも初めて知った。リゼやパンサーたちに止められなければ、使命を全うしていたかもしれん」


グレイも驚いている。

そうか、二人とも、使命を受けて行動していたんだな。


「リゼは今、寝ながらにしてこの世界の亀を支えている。これはリゼ以外には出来ない芸当だ」


父さんの言う事は突拍子もないが信じるしかない。


「ど、どうすりゃいいんだ? どうすりゃ俺達はこの危機を救える? 母さんを目覚めさせられる?」


「リゼは時間を稼いでくれている。その間に考えなきゃならない」


「そんな……、考えるたってどんだけ時間がかかるかわからねえじゃないか!」


「お前もクリスタルを見たらわかる。もう今にも割れそうなんだ」


「わかった、見に行こう。みんなで」





魔界の中心部、クリスタルが安置されている城へとゲートで移動した。


「これが、クリスタル」


血のように赤く脈動している正六面体。

人が丸々入りそうなサイズのクリスタルにはたくさんのヒビが入り、今にも割れそうだ。


「す、すごい力にゃ。ビリビリするにゃ~」


パンサーが小刻みに、それでいて超スピードで震えている。


「ヒビの進行はリゼが寝てから止まっている。」


父さんは脈動するクリスタルを撫でながら、


「崩壊を止める封印には、聖剣が五本必要なんだ。それさえあれば、進行は遅らせられる。リゼの負担は少しは和らぐだろう」


「本当か!? 聖剣は今三本ある! あと二本あればいいんだな?」


「ああ、だが、息子よ、あるのか? 聖剣がそんなにたくさん。この世界に。無いだろうから俺は絶望してるんだ」


「方法はある!」


「なんだと?」


俺はパンサーの持っている剣二本を抜き放つ。


「な、なんでにゃ~! なにするにゃ!」


聖剣の間にパンサーの剣を挟む。


「リバーシだ!これで聖剣になる!」


激しく輝きだすパンサーの剣。

聖剣の輝きだ。


「なんと!本当に聖剣になっている!」


父さんは驚いた。


「これでクリスタルを封印できる!」


聖剣を五本かざすと、クリスタルに吸い込まれていく。

すると眩い光が辺りを包んだ。



辺りの光が消えると、クリスタルのヒビが消えていた。


「おお、ベネット!やった!やったぞ!クリスタルは復活した!」


まさか聖剣のリバーシ効果がこんなところで生きるなんて!

母さんはこれを見越していたのかな?


「親父、これでなんとかなったのか?」


「安心するのはまだ早い。いったん治ったとしても、増えた人口をなんとかしなければまたヒビが入りだすだろう」


「母さんは、まだ眠りについたままってわけか」


俺達はこれからのことを考えつつ、館に戻った。

母さんの寝顔は、少し笑顔になっている気がする。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ