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28 思い出せない

「我の名は、ミーアゴッズ。十大魔王の一人である」


そう名乗った肥溜め魔王は、今や我が家のよく来る客の一人だ。

肥溜めに入ってない姿は、銀髪に紅い目。サラサラヘアーが羨ましいイケメンだった。

今日は天気がいいので、館の屋根の上で日向ぼっこをしている。


「やはりベネットの事は、どこかで見たことがあるんだよなぁ」


事あるごとにそう言ってくるが、思い出せないらしい。


「他人の空似ってこともあるんじゃないのか?」


俺はミーアゴッズに会ったことはないはずだ。

魔王と会って、覚えていないはずがない。


「いや、見たことがある。ずいぶん昔だったからなあ。あれは確か、魔界三丁目のキャバクラだったかな……、綺麗なお姉ちゃんたちに囲まれてシャンパンタワーをした記憶がある」


「そりゃあ、他人の空似でしょう?魔界なんてこの前初めて行ったんだから」


「キャバクラって、なんにゃ? 綺麗なお姉ちゃんたちがいるのかにゃ? わたちも行ってみたいにゃあ」


パンサーは興味津々だが、なぜかグレイに「お前にはまだ早い」と猫パンチをかまされた。

グレイはミーアゴッズに撫でられて上機嫌だ。ゴロゴロ喉が鳴っている。


「ミーアゴッズ、その手に持っている杖はどこで買ったのかにゃ?」


パンサーはミーアゴッズの持つ杖にスリスリ身体をこすりつける。

ツボといい杖といい、パンサーは高級そうな物を見るとスリスリしたがるようだ。


「これか? これは魔界通信販売ヤミゾンのタイムセールで買った安物だよ」


ヤミゾン?なんだそれは。

どうやら魔界はこの世界より文明が進んでいるらしい。


「いいにゃいいにゃ! わたちも杖欲しいにゃ」


「パンサーには凄い剣があるから、杖なんていらないだろう?」


「そんなことないにゃ。リゼのように魔法を唱えたいのにゃ」


「ふーん」


魔法を使える猫か。凄いかもしれない。


「ヤミゾンか……、実はワタシ、カードが焦げ付いてて支払いが止まっているんだよな」


グレイもわけのわからないことを言い出す。


「一回だったら我が立て替えてもいいぞ。その代わりポイントは我に付けるからな」


高度な話をしている。

俺には何のことかわからない。


「ミーアゴッズ! ちょっと手伝って~」


「は~い」


母さんに呼ばれて、すぐ戻ってくるミーアゴッズ。


「ずいぶん馴染んでいるな」


「ああ、グレイ、燭台の上に手が届かないっていうから手伝ったんだ」


「猫の手じゃ届かにゃいから手伝えないにゃ~」


確かにミーアゴッズは背が高い。俺よりも頭一つ分は高いだろう。


「お前はまったく手伝わないな!」


またグレイの猫パンチを受けるパンサー。


「痛いにゃ! パパも手伝ってないのにゃ!」


フシャアアアア!ウギニャアアアアア

二匹は猫団子になって喧嘩している。


「止めなくていいのか?」


ミーアゴッズが心配するが、


「ええ、大丈夫です。いつものことですから」


こっちは慣れたもんだ。

二匹の喧嘩はエスカレートして毛玉が飛び散っている。

このあとボロボロになった二匹が母さんに治療してもらう所までがセットなのだ。


「お前とは、昔もどこかでこうやって語り合った記憶があるのだ」


まだ言っている。

俺は魔界に行ったことなんて無いっての。


そのとき、館の前に馬車が止まり、静かだった一日が終わるのだった。

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