27 肥溜めの魔王
「とうとう見つけたぞ! 出て来い人間ども!」
大音声が館の外から聞こえてきた。
なんだなんだと表に出てみれば、そこにはとっても臭い人がいた。
「な、なんて臭さなの。まるで肥溜めみたい」
「か、母さん、失礼だよ。た、確かに臭いけど……。」
なんて臭さだ。鼻が曲がりそうだ。
「貴方、ここに何の用?」
つっけんどんに聞く母さん。
「我の城から奪ったモノの数々、返してもらうぞ!」
「こ、こいつ、これまでの奴等とは格が違うにゃー!」
いつになくブルブル震えるパンサー。超高速で震えている。
こいつも魔王かっ。
「魔王の中でも上位五人は雲の上の存在!こやつ、五位以内の魔王だ!」
グレイが恐れ慄いている。
そんなに強い奴なのかっ。
「は? 返す? いやよ! 貴方、肥溜め臭いもの!」
「母さん、臭さは関係ないと思うよ!」
すると魔王と目が合った。
「む? お前、どこかで見たことがあるな」
「え? 俺ですか?」
「うむ。どこだったかな~、思い出せん」
「うちのベネットは有名ですもの!どこかで見ていてもおかしくないわ!肥溜め魔王!」
「さっきから肥溜め肥溜めうるさいわ! 空飛ぶ絨毯を追っていたら肥溜めに落ちたんじゃ! むしろ哀れめ!」
「可哀そうに! 肥溜め魔王!」
あちゃー、ついに肥溜め魔王って名前になっちゃった。
「さっきから失礼な女だ! だがお前も見たことがあるな! 名をなんという?」
「リーゼロッテよ!」
「ふむ、リーゼロッテ……、どこかで聞いたことがあるな」
母さんの悪名は魔界にも伝わっているのか!
「悪名ってなによ!」
母さん! 地の文に突っ込まないで!
「ええい、もうどうでもいいわ! さっさと宝を返すのだ!」
「いやよ! どうしてもっていうなら力づくでどうぞ!」
「なんという言い草だ! まるで我が悪者ではないか!」
「今はウチの物だもの!」
「あーいえばこういうな! 仕方ない! 穏便に事を済ませたかったが、ここは力づくで行くしか無いか」
ゴゴゴゴゴゴゴ
立ち込める禍々しいオーラ。
あっという間に筋骨隆々になってゆく魔王。
「フハハハハハ、我に怯えろ! 生意気な口を利いた事、後悔させてやるわ」
「ならこっちも晩御飯前だから本気を出すわ!コメット・シュート!」
母さんが魔法を唱えると、上空から隕石が降ってきた!
待って!そんなの衝突したら家が壊れる!
ドッゴーン
結論から言うと、家は無事だった。
着弾の瞬間、母さんが魔法で障壁を張ったのが見えた。
家の前に大クレーターが出来た。
その中心に魔王はボロボロで倒れている。
「肥溜め魔王、熱消毒完了! あと、臭いままでは可哀そうね。ウォッシュ!」
ボロボロの魔王はみるみる綺麗になっていく。
「な、なんて優しい魔法なんだ……、完敗だ。まるで心まで洗われているようだ」
あ、生きてた。さすが魔王、すごい生命力だ。
心まで洗われた(?)魔王は時々ウチに遊びに来るようになった。
「ところで魔王さん、貴方の名前はなんだったかしら?」
「え、いまさら?」




