22 ゲート
「そもそも、なんで十大魔王の一人がこんな街中にいたんだ?」
ヘキサが倒してくれたからよかったものの、発見が遅れていたらどうなっていたことか。
「むう。ワタシが察するに、この街のどこかに魔界に繋がるゲートがある。シャベレゲブレもそこを通ってきたのだろう」
グレイが言ってることが本当なら、これは大変なことだ。
「えー、何か問題あるのー?」
あっけらかんとした母さんがグレイに問う。
「リゼ殿には問題はないかもしれませんなー」
そうだねー。母さんなら、どんなヤツでも倒せそうだもんねー。
「そうではなくて、一般人には危険ですわ! 魔界からのゲートなんて!」
シャルが言うことは最もだ。
俺達はゲートなるものを捜索するために街にでた。
「そもそもゲートってどんな形なんだ?」
「人が通れるくらいの穴だ。形はゲートによって違うからなんともいえん」
グレイでもよくわかってなさそうだ。
これは捜索が難航しそうだぞ。
日中、しらみ潰しに街中を探したが、日も暮れて一旦館に帰ってくる。
「ふうー、見つからないな。ホントにゲートなんてあるのかな」
つい愚痴ってしまう。
「必ずある。ワタシはそれを探して毎日街に出かけていたのだ」
確かにここ最近毎日、グレイは出かけてたな。
うーん。困ったな。これ以上探すとなると、一軒一軒聞いて歩かなきゃいけなくなってくる。
元は村だったトラムが、街になってどれだけ家が増えたか考えるだけで途方もない。
「あの……、ベネット様、もしかしたらなのですが、そのゲートなるものが見つかったかもしれません」
ローザが恐る恐る言い出した。
「え、どこに?」
「我が家のダストシュートです」
ん?ダストシュート?聞いたことないぞ?
「我が伯爵館は前の伯爵夫人の代からゴミをその……、穴に投げ込んでいるのです。おかしいなとは思っていたんですけどね」
「ふむ、見に行こう」
裏庭に出てダストシュートなるものを見た途端、グレイが声を上げた!
「これだ! これこそがゲートだ!」
「こんなところにあったの!? そして、ダストシュートにしてたの!? 魔界にゴミ捨ててたんだ!?」
「えー、私、この穴なら女子用のお風呂場でも見たなー。よくゴミ入れにしてた~」
母さんの爆弾発言である。
「早く言って! なにその怪しい穴!」
「なんだか覗かれてる気がしたのよね~。そう~、ゲートだったの~」
「待って、なんでゲートなんてものがウチにあるの?」
「ベネット様の前の主人である伯爵のお母さまの趣味がガーデニングで、ある日突然、穴が開いたそうです」
「ガーデニングのアイテム置く場所がうまいこと魔法が発生してしまったんだにゃ」
「ローザ、よくこんなわけのわからない穴を使ってたね!?」
「いくらでもモノを吸い込むため、ゴミ捨てに使っておりました。申し訳ございません」
「ええ……、ここ、魔界に繋がってるんでしょ? だ、誰か手を突っ込んでみる?」
周囲にいるメンバーは一斉に目をそらす。
「ここはパンサー、中を覗いてみてくれ?」
「い、いやにゃ。怖いにゃ、パパ、お願いしますにゃ」
「ワタシは遠慮する。何が出てくるかわからんからな」
「あ、じゃあ私がやるよー」
「「どうぞどうぞ」」
この場で最も強い母さんが代表になって、ゲートに手を突っ込む。
「ん? あれ? なんかあるよ?」
ゴクリ、何があるの?
「さっきお昼に食べたバナナの皮だわ」
「ゲートの向こうはウチのゴミ捨て場になってるんだ!」
「ふむ、このゴミ問題を調査するためにシャベレゲブレは来たのかもしれないな」
「え? なんで魔王が?」
「魔界も人手不足なんだろう」
「そういう問題か?」
母さんは思い切って顔を突っ込んでみる。
「だ、大丈夫? 母さん」
「大丈夫よー。向こうは魔界ってやつなのね。なんだか禍々しいわ。あと、ウチのゴミがいっぱいよ」
ゴミはこの際見なかったことにしよう。
「ゲートの成り立ちは理解出来たわ。これで私もゲートの魔法、使えるわよ」
「え? 今覗いただけで?」
「一度行った場所ならゲートを使って移動できるわ」
すげえな母さん。
「何か怪しいものはなかった?」
「怪しいものね~。なんか向こう側にツンツンとした塔がいっぱいある城ならあったよ」
「それ、あからさまに魔王とか住んでそうじゃない?」
「いく? いっちゃう? ぶっ潰しちゃう?」
母さんがシャドーボクシングしてる。やる気だ。
俺達は出かける準備をして、誰のものとも知れない魔王の城(仮)へと向かうのであった。