表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/37

2 街道にて①

俺にとって母さんは偉大な存在だ。ここまで育ててもらった恩もある。

だが、まさか一緒に幌馬車の旅をするだなんて思わなかった。


「ベネット、調子はどう?」


「ああ、体調は万全。むしろ調子がいいくらいだ」


「無理しちゃダメよ~。いつでも御車は交代するからね~」


いくらなんでも母さんにやらせる仕事じゃない。

馬も機嫌がいいし、この調子なら早く王都に着きそうだな。


母さんをみれば目を瞑ってうつらうつら船を漕いでいる。

起こさないようにしてやらないと。


エルフの里から王都までは街道に沿って一週間といったところだ。


ぽつ、ぽつ、


「ん。雨か」


幌付きだから雨に濡れることはないが。

うーん、ちと寒いな。

母さんが風邪ひかなきゃいいけど。


ん……?なんだ?行先に何か見える。

どうやら馬車が止まっているようだ。


「どうしました? 」


俺は馬車を寄せて困っている風の人たちに声をかける。


「ああ、片輪がハマってしまってね」


見れば、確かにミゾにハマっている。

これくらいなら、こっちの馬車にロープで括り付けて引っ張れば脱出できそうだ。


「母さん、手助けしてやってもいいよね」


「いいよ。私もいっちょ、やりますかね」


2人で降りて作業を開始する。

といっても俺一人ですぐおわることだ。

引っ張るタイミングで「せーのっ」と台車を押す。

その瞬間後方で光った気がする。母さんが魔法を使ったのだろう。

ミゾがほぼ何もなかったように埋まっていた。


「ふふっ、私にもこれくらいはできるんだからね」


「ははっ、初めから母さんに任せればよかったね」


2人でひとしきり笑ったあと、馬車の人から挨拶があった。


「このたびは助けて頂きありがとうございます。私どもは王都に向かう途中の商人でございます」


「奇遇ですね!私たちも王都に向かう途中だったんです。なんだったら護衛しちゃいますよ」


「母さん、また、勝手に決めて!」


「いいじゃない、こちらベネット。優秀なシーフだから敵モンスターや罠があってもばっちりよ。私はリゼ。無敵のお母さんよ」


「は、はあ、私の名前はシュペー・ベルドナンドと申します。シュペー商会の会頭をしております。何分急いでいたもので…。その護衛の話、お願いしてもよろしいでしょうか?」


「わかりました。俺が責任をもって護衛を果たしてみせます」


「きゃー、ベネット、カッコイイ!」


ちゃちゃを入れるな!恥ずかしい!

とはいえ、決まった話なので、前衛が俺の馬車で、あとからシュペーさんの馬車がついてくることになった。

母さんは


「お話がしたいから」


と、シュペーさんたちの馬車に同乗した。

旅は道連れとはよく言ったもんだ。母さんが楽しそうならそれでいいと、馬車を動かし始めた。





※※※※


(SIDEリゼ)


最近雨がよく降る。

雨季じゃないんだけどな。

ベネットが馬車を助けると言い出した。

やっぱり優しい子だ。ここは、お母さんもいいとこ見せないとね。

ミゾにはまった車輪を見てピンとひらめいた。

土魔法でミゾをなくしちゃえばいいよね!


ミゾに向かって手をかざし、


「アース」


と唱える。

光と共にミゾがなくなって、平坦になっていく。

それをみていた(あとから名前わかったけど)シュペーさんが驚く。


「え、詠唱なしで魔法を使えるのですか!」


「ええ。これくらいちょちょいのちょいです~」



ベネットには悪いけど、勝手に護衛の件引き受けちゃった。

もしものときは2人でどうとでもなるでしょう。


ベネットを一人にして商人さんの馬車にお邪魔する。


「リゼさんは、魔法がお得意なんですな~。無詠唱なんて初めて見ました」


「そうです!得意なんです。にこっ。もしものときは私がみなさんを守りますから、ご安心ください」


「王都に着いたら、お泊り予定の宿はありますか?もしよろしければ、私のほうでご用意出来ればと思いますがいかがでしょうか?」


「本当ですか?それはありがたいです~」


「助けて頂いたお礼です」


うふふ、儲けたわ。やったね。

ベネットも安心して眠ることが出来そうね。


道中これ以上なにもなきゃいいけど…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ