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17 温泉

ある日のことである。


「母さん、やっちゃってー!」


「は~い。いくわよ~!」


井戸を掘るために母さんに地面を削岩してもらおうとしたら、


ブシャー!!!!


見事に一発で水が噴き出た。

あれ、熱い!!

これは、温泉だ!


「母さん! 大当たりだ! あっちち!」


「これで温泉に入れるわね~」


びしゃびしゃに濡れているが楽しそうだ。


「ユルい親子にゃ。井戸を掘るつもりだったのににゃ、温泉が出ちゃったにゃ。これは凄い事にゃよ?」


「いいんだよ、パンサー。これでトラムの街は観光地になれるぞ!」


「町おこしに美人コンテストなどいかがでしょうか?」


商人目線のミカからいい提案があった。これで一儲けしようという魂胆だろう。


というわけで、井戸は井戸として別で掘りだした俺達は、温泉街を作ることにした。

ついでに、美人コンテストもやってしまおう。




「はーい、それでは、第一回、湯けむり美人コンテストを開催いたします!」


パチパチパチパチ。

ミカが司会で始まったコンテスト。

なんと賞金まで出すのだ。とてもたくさんの応募があった。

王様や元徴税官ゼニス何某に貰った金貨をここで還元しようと思ったわけだ。


「それでは、この街の領主、ベネットからご挨拶でーす」


ワ~、パチパチ!

携帯型魔法拡声器「マイク」を顔に近づけて話始める。


「えー、みなさん、今日は集まっていただきありがとうございます。トラムの街も温泉もぜひ楽しんでいってください」


「いいぞ~、勇者様~!」や「かっこいいわ~!」などと歓声が飛び交う。

うう、こういうのは緊張するな。さっきから母さんの姿が無いんだけど、どこ行ったのかな~?


「それでは開始していきます! 出場者ナンバーワン! リーゼロッテ!」


ええええええええ、参加してるぅ!

ダメだろ、母さんは主催者側じゃないのか!?


「えー今回のコンテストですが、公平を期すため、審査員は見にきてくれた人たち全員! 投票で決めていきたいと思います~!」


それならいいのか?

ま、母さんが優勝することなんてないよな。


「リーゼロッテさん、一言お願いします」


「みんな~、集まってくれてありがと~! 私に清き一票をよろしくね~!」


「うお~、リーゼロッテちゃあああん!」とか、「リーゼロッテ様! 今日も可愛らしい!」などの声が飛ぶ。

あれ?結構人気あるのか。母さん。俺は知らなかったぞ。


「続いてナンバーツー! シャルロッテ!」


「あ、あの、こういうのよくわかりませんが、頑張ります!」


いや、頑張っちゃダメー!

貴方、お姫様! そして俺は旦那!

何を勝手に出場してんのー!


「うお~、シャルロッテ様~!」「あどけない姿が可愛らしい!」


そっか、シャルもすっかり街に馴染んでるもんな。人気が出てもおかしくないよな。

旦那としては複雑だよ!


「続いてナンバースリー……、……!……!」


俺は雑踏を抜け、酒場に入る。

最初から身内で疲れちまった。


「よお、にーちゃん、冴えねえ顔してんな。」


「ええ。なんだかドッと疲れが」


「そういうときは酒に限るぜ。……、ところで酒を飲むなら俺のも買ってくれないか?コンテストの予想に賭けたらスッカラカンになっちまってよ。当てたら返すからよ。な、この通り。」


なんだこのオッサン。ダメな人だな。

だけど不思議と人を惹きつける魅力があって、まあ、一杯ならと奢ってしまった。


「にーちゃんは誰に賭けた?」


「俺は賭けてませんよ。貴方は誰に賭けたんですか?」


「へっ。俺はリーゼロッテさ。あの人の魅力に敵うオンナなんていねえよ。」


母さんの魅力ねえ。


「ちょっとわかんないっス」


「ははは、にーちゃんは6番のニーシャちゃん辺りがお似合いだな」


「そうですかね」


「おっと、俺はもう行かなくちゃ。一杯ありがとよ。」


礼を言うとその場から立ち去る。


「元気でやれよベネット。リーゼロッテを任せたぜ」

その声は雑踏に紛れベネットには届かなかった。



美人コンテストは佳境を迎える。

「最終審査は~、水着審査だ~!セクシーな水着で会場をトリコに出来るのか!」


「出場者ナンバーワン! リーゼロッテは白のビキニ!会場からの歓声が止まりません!」



その時、事件は起きた。



※※※※※※


私の名前はヘキサ。ある組織から雇われた暗殺者だ。

前回の蛇使いでは失敗に終わった。三度目の正直だ。今回で決める!

私は今、美人コンテストに出場者として紛れている。

水着審査なんて聞いてないぞ。

肌を晒すなんてはしたない!違った、武器を持てない。

え?壇上に上がれ?は、恥ずかしい。

だが、任務の為なら仕方ない。

胸と下を隠しながら壇上に上がる。


ふと、その拍子につまづいてしまったのがいけなかった。


どてーん


ん?なんだこのふわふわしたものは。


はっ!私は瞬時に気づいてしまった。

暗殺対象の胸の中にコケてしまったのだ。


「だ、だいじょうぶ?」


あわわわわ、リーゼロッテに話しかけられてしまった。

そして私の右手にある布切れに気づく。


リーゼロッテのブラを取ってしまっていた。


「きゃ、きゃあああああああ」


バシ


あーれー



※※※※※※


「今回はヘキサが悪いだろ」


「完全にヘキサがやらかしましたね」


「また仕留められなかったか。もうヘキサでは無理なのではないか?」


「そうかもしれませんね」


「次はもっといい手を考えよう」


謎の集団は勝手なことを言って解散していった。


※※※※※※

(SIDEベネット)


「きゃ、きゃあああああああ」


バシ


吹っ飛ぶ8番の人。


露わになる母さんのたわわな果実。


この事件で投票はリーゼロッテに殺到。

優勝は母さんになった。




「ふふふ、やっぱり私が優勝したわね。賞金はまたみんなで還元していきましょー! とりあえずお夕飯から!」


「またみんなの範囲せまっ」


「6番のニーシャちゃん、可愛かったわね」


あれ、昼間のオッサンにも言われたな。


「旦那様、シャルの水着、いかがでしたか?」


「うん、可愛かったよ」


「やりましたですの! ローザに作ってもらった甲斐があったのです!」


ああ、ローザに作ってもらったのか。


「ローザも出ればよかったのに」


「いいえ、私は結構です。皆様にお見せ出来る身体ではないので……」


「そうかな? 綺麗だと思うけど?」


「だ、旦那様、おたわむれを」


スタスタと逃げられてしまった。


「ベネットー、褒めて~」


「はいはい、母さんは美人だね~」


「でへへ~」


もう酒で酔ってんじゃないか。

仕方ない、寝かせてきますかね。

ベッドに寝かせてやると、すぐに寝息を立て始めた。


「むにゃ……、ピエール……、どこいったの?」


はっきりした寝言だな!

ピエール。父さんの名前だ。

ダメ親父め、一体どこでなにしてるんだ。まったく。

そういや、あのオッサン、予想的中したんだから酒代返せよな。また会えるかわかんねぇけど。


こうして夜も更けていく……。

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