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16 苦手なもの

 ※※※※※※


 一方そのころ、とある組織。


「リーゼロッテを止めることは出来んのか? このままでは我が組織が潰されるのは時間の問題だぞ」


「あの悪魔めっ! 次こそは仕留めてやる!」


「ヤツに弱点はないのか!? そこを突けば、あるいはやれるかもしれん」


「フッフッフ、もう情報は掴んでいます」


「なに? それは本当か?」


「悪魔リーゼロッテ。ヤツの弱点は……、」


 ※※※※※※


(SIDEベネット)


 街は順調に大きくなっている。

 今日は母さんと散歩がてら街の中央広場の市場に来ているのだが、こりゃすごいもんだ。

 人の賑わい。商品の流通。王都にも引けを取らないんじゃないか?


「勇者様! こいつをどうぞ!」


 店の店員からヒョイッと投げられたモノをパシッと掴む。

 それは真っ赤なリンゴだった。


「シャクッ。ありがとう。美味しいよ」


 勇者ではないんだがな。

 笑顔で店をあとにする。


「母さんにもちょーだい。あーん」


「あーん、じゃないよまったく」


 俺が食べた反対側を差し出して口に突っ込む。


「もがっ、乱暴ね!もう!むしゃむしゃ、美味しいわ~」


 ふと、気になることを聞いてみた


「母さんは何が好き?」


「ベネットが大、大好きよ!」


 めっちゃ目がマジだ。キラキラしてる。


「じゃ、じゃあ、嫌いなものは何?」


 くそっ、照れちまった。恥ずかしい。


「えー、口に出すのもおぞましいわ」


「へー、母さんにも弱点があったんだ?」


「そうねー、アレを見ると、全身が総毛だつわ」


「いったい何なの?」


「それはね……、」


 ドンッと子どもがぶつかって来て母さんがよろける


「あ、ごめんなさい!」


「いいのよ~、危ないから走らないのよー!」


「おーい! 早くこいよ! 面白いぜ!」


「うーん、いまいく!」


 駆けていく子ども。

 どうやら人だかりが出来ているところで見世物をやってるらしい。


「母さん、俺達も見に行こう!」


 母さんの手を引き、人だかりに混じる。

 そこには三匹の蛇を自在に操る蛇使いが座っていた。

 蛇使いが吹く笛の音に合わせて、にょきにょきと踊る大蛇。

 すっげぇ、よく手なずけてるなぁ。


「母さん、すごいなコレ!」


 母さんのほうを見ると、


 ゴゴゴゴゴゴゴ


 え、なんか禍々しいオーラが。


「いやああああああああああああああああああああああああああ!」


 ドゴッ


 吹き飛ぶ蛇と蛇使い。


「わーん、ベネットぉ、蛇はダメなの~、あのヌメヌメしてるのがぁ!思わず吹き飛ばしたくなるくらい嫌いなのよ~!」


 ガチ怒りしてる!

 周囲は唖然としている。

 とりあえず逃げよう!


 ※※※※※※


 私の名前はヘキサ。とある組織に雇われた暗殺者だ。

 リーゼロッテはさすがは悪魔といわれるだけある。前回は完全に失敗した。その失敗を取り返すためトラムの街に潜入している。

 組織より情報がもたらされ、リーゼロッテは蛇が苦手とのことで蛇使いの変装をしてきた。

 蛇は猛毒を持っている。噛まれればイチコロだ。


「おにーたん、へびたん可愛いね」


 興行をしていると小さいお子さままで寄ってくる。

 ヘビのディアンサは目標以外は噛まない。

 私の音色に合わせてダンスする姿に人々は魅了され足を止める。

 いいぞディアンサ!私たちは最高のパートナーだ!

 なんだか楽しくなってきたぞ!

 暗殺者など止めてディアンサと各地を回るのもいいかもしれん。

 そのときだった。


『母さん、俺達も見に行こう!』


 ヤツだ。私たちの興行もこれでおしまいだ。

 なんだか少し、しんみりする。

 だが、全てはリーゼロッテを仕留めるために。

 見ろ!リーゼロッテが固まっている!

 チャンスだ!

 いくぞディアンサ。最後の仕事だ!

 噛めと指示する。


 その瞬間だった


 ドゴッ


 あーれー



 ※※※※※※


「またヘキサがやられた!」


「なに!? 今度は弱点を突いたんじゃなかったのかっ!」


「それが……、一撃で吹き飛ばされました」


「それは本当に弱点といえるのか!」


「ええい、倒せないなら意味がないわ!」


「また逃げる羽目になるのか!」


「逃げろ! 逃げろ!」


「逆探知されてるかもしれん」


 バタバタと逃げ出す集団。



 こうしてまたもやリーゼロッテは刺客を気づかずに退けたのであった。

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