14 遺跡
トラム村は、四方を山に囲まれた盆地のようなところにある。
村民の数はさほど多くなく、小麦を作って生計を立てている。
うーん、トラム村を大きくするのは難しそうだなあ。
「トラム村を大きくするの? そしたら、山を一つ消し飛ばそうか」
母さんは優雅に紅茶を飲みながら凄いことを言う。
「え、出来るの?」
「私を誰だと思ってるの? お母さんは凄いんだゾ☆」
凄いのは知ってるけども。
母さんは早速、準備運動をして、館の外へ出ていく。
「ようし、いってみよー! アース・エクスプロージョン☆」
ゴゴゴゴゴゴゴッ
うわああ、地震だぁ!
窓がビリビリ鳴っている。
地震が収まって窓を開けて外を見る。
うわあ、目の前にあった山が無くなってるよ。
ん?山の跡に何かあるぞ……?
なにかの遺跡かな?
「すっごーい、ベネット。なんか見つけちゃったね!」
嬉しそうに手を叩く母さん。
「凄いのは母さんだよ。地形まで変えられるんだね」
「うふふ、ベネットの為ならなんでも出来る気がするわ」
その後、館で探索の準備をして、遺跡の前へとやってきた。
今日はこのまま遺跡に潜ってみようと思う。
メンバーは母さんと俺とパンサーだ。
危険なのでシャルとローザは館に置いてきた。
ローザは身のこなしが普通ではなかったので、戦えるのだろうが、未知数なので留守番だ。
「うう、嫌な予感がするにゃー。わたちは行きたくないにゃー」
なんだがパンサーがぷるぷるしていたが、強引に連れてきた。
遺跡は地下に続いている。
山の中にあったとは思えない存在感だ。
「ホーリーライト!」
母さんの手のひらからまばゆい光が発せられる。
地下なのに、外にいるような明るさになった。
カタカタカタ
剣を持った骸骨が大量に歩いてくる。
この遺跡、まだ生きてる!
「骸骨きっしょーい。私こういうの苦手なのよ~!ええい、ホーリー!」
苦手といいつつ、骸骨の端から端までを聖魔法で浄化していく。
「え~ん、ベネット、気持ち悪いよ~」
ひっついてくる母さん。
母さんにも苦手なモノがあったんだな。
今のところ母さんのほうが怖いけどね。
「我の封印を解いたものは誰だ……」
ん?どこからか声がするぞ。
誰か俺に話しかけた?
「「フルフル」」
二人とも首を横に振った。
「我の封印を解いた者よ……、褒美に滅してやろう」
なんか怖いこと言い出したぞ。
ゴゴゴゴゴゴゴ
なんだ!? また地震かっ!
「フハハハハハ、我の名は魔王アスモデウス! 千年の眠りから解放してくれたこと、感謝するぞ!」
虚空から急にどでかい悪魔っぽいのが出てきた!
ぼろ衣を被って鎌を持ってる!
くっ!とてつもない魔力量だ。立っていられないほどの圧がある。
「ぎにゃー!アスモデウスにゃ! ヤツは千年前に勇者によって封印されたはずにゃ! なんで復活してるのにゃ~!」
パンサーは柱に隠れてブルブルしている。
ごめんな、原因は母さんだ。山を消し飛ばして復活させてしまったようだ。
まずいぞ、勇者でさえ封印に留めたのに俺達で勝てるのか?
「ここで死ぬがよい! デスグラビティ!」
アスモデウスの魔法が発動する。
ぐああ、すごい圧力で潰されそうだ。
「ふ、やるわね、私に膝をつかせるなんて」
いまのところ無敵の母さんが膝をついた。
それだけ厄介な敵なのか!
「私の本気見せてあげるわ! ホーリーランス!」
複数の光の槍がアスモデウスに突き刺さる。
「な、なに、我に傷をつけるだと?」
明らかに動揺している。
いける! この後きっと、どでかい魔法をぶっ放すんだ! 俺は身構える。
「いっくよ~!ホーリーパ~ンチ!」
なんだって?パンチ?効くのか、そんなんで。
ドゴッ
ゆるいテンションに似合わず大きい衝撃音が広がる。
「ぐわああああああああ、我が、浄化されていく……」
すごい、みるみるアスモデウスさんが消えてゆく。
思わずさん付けをしてしまうほど、無惨に消えてゆく。
「ふははは、やるな、名も知らぬ勇者よ。だが、我は十大魔王の中でも最弱。我を倒したからには他の魔王も動き出すであろう。この世界は破滅に向かうであろう……」
消えながら重大なことを言い残していくアスモデウスさん。
ヒュン
あ、全部消えた。
「十大魔王……、ベネットの生きる世界のためにも始末しなくちゃね」
え、母さんやる気なの?
俺ら勇者でもなんでもないよ?
「ベネットの幸せを守るためよ。やるしかないわ!」
母さんが燃えてる!
ゴゴゴゴゴゴゴ
また揺れてる!
今日はよく揺れる日だ。
「まずいにゃ!アスモデウスを倒したことでこの遺跡が不安定になってるのにゃ!」
「ど、どうすればいい!」
「ちょうどここに祭壇があるにゃ。ここに聖剣を捧げなければ、大崩壊にゃ!」
「三本もあるからな。一本くらい惜しくない!」
祭壇に普通の聖剣を置くと揺れは収まった。
「あぶなかったにゃ」
「これでこの遺跡は安定するんだな?」
「そのはずにゃ。んにゃ!? 祭壇の裏に宝箱があるにゃ」
「宝箱鑑定! 開錠! ようし、安全なようだぞ。パンサー、開けても大丈夫だ」
久しぶりにシーフの仕事をした気がする。
パカッ
「おお! これはすごいにゃ!」
「何が入ってたんだ」
「わたちが持てるサイズの剣だにゃ」
「おお、よかったな」
それにしても十大魔王か。あと九人?
全部倒さなきゃいけないのか?
あれ?この駄猫も魔王って自分で言ってなかったか?
「おい、パンサー。お前以外に魔王はあと九人いるのか?」
「んー、たぶんいるにゃ。新参のわたちを除いてあと九人。なんとかしないと世界は混沌の海にゃ」
気軽に言ってくれちゃって。
俺達は今後どうなっていくのか……。
わからないが、ひとまず館に帰るのであった。
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