聖女*3
ん、んん………
気づくと俺は、何やら柔らかい場所にいた。頭はなんとなく湿っぽい場所におり、手を伸ばすとむに、むに、と何やら柔らかいお餅のような感触があり、適度な温かみもあってずっと触っていられそうだ。
(ってあれ?俺ってさっき気を失って…………俺はいったいどうなったんだ?というかここはどこなんだ?)
目を開くと真っ暗で、手を伸ばすとむにむに………本当によく分からない場所にいた。
(というかこの感触、若干違うけどどこかで………)
そう思いながらむにむにし続けていると、上から「んっ、あっ、んんっ♪」という艶めかしい声が聞こえてくる。
思わず「ん"っ?!」という変な声を出して顔を思いっきり上げてしまう。
すると唇に柔らかく弾力のあるものが当たり、そこから口の中に何かが入ってくる。
粘りけがあり、温かい液体……………もしかして唾液?!
「くじjgwd#"※⇢tp1や:+そa@p'w々^?!?!」
そう考えた俺は驚きすぎて、声にならない悲鳴を上げながらゴロゴロと勢いよく転がっていき、そのままガンッ!と何かから転げ落ちる。
そして目を開けると、そこにはいつもの自分のベットと部屋、そして何故か、ベットの上には半裸の少女がいた。
えっ?え"え"?
驚きすぎて思考停止していると、半裸の少女が目を擦りながらこちらを向く。
そしてその目に俺が映った瞬間、少女が「目がさめたの!だいじょうぶ!?」といって飛びついてくる。
急なことだったのと思考停止してたため対応が遅れた俺は、少女の飛びつきに耐えられず後ろに倒れ込み、先ほどよりも高い音でガンッ!と頭をぶつけ、俺はまたもや意識を失ったのだった…………
ーーー
サワサワ……サワサワ……
そんな音が耳に届き、俺は目を覚ました。
「んん………ここは……………って母さん?!」
目を擦りながら上を向くと、そこには大きな谷と母の顔があった。思わぬ事態に赤面していると、俺の頭を撫でていた母の手が止まる。
「あ、ナノくん!起きたのね!お母さん、すごく心配したんだからね!」といって突然顔をマシュマロに埋められる。
息が吸えずにモガモガしていると、何故か更に押し付けて来る。
お胸様地獄から解放されたのは、俺がぐったりし始めた数分後だった。
「それで母さん…………さっきはなんであんなことしたの?結構苦しかったんだけど………」という。
体は心なしか、少しぐったりしている。
「あれはね、お母さんを心配させた罰よ!急にナノくんを担いだ人たちが来たと思ったら色々あったことを聞いて、それにまるっきり1日寝ててお母さんすっっっごく心配したんだからね!どう?苦しかったでしょ?」といってくる。
まぁ確かに苦しかったかな…………色んな意味で。
それはそうと、丸一日寝てたとはどういうことだ?
「ねぇ母さん、一日ずっと寝てたってどういうこと?俺、違う村にいたはずなんだけど………」と聞いてみる。というより、さっきの少女は一体……?
「ん?ナノくん知らなかったの?マリクスさんとサターシャさん、それとリアちゃんだったかな?その人たちが急に夜訪れてね?お母さんたちナノくんが中々帰って来ないから心配してたんだけどその人たちが連れてきてびっくりしちゃって…………それで、ナノくんがその人たちを助けたことと聖光騎士と戦って勝ったことを聞いてとりあえずうちに招いたの。
ナノくん強いことは知ってるけどすごい心配だったんだよ?
それからずっとナノくん寝てて、その間はリアちゃんって子がナノくんの看病してたんだよ?」という。
というか、マリクス?サターシャ?それにリア?一体誰のことだ?
リア…………リア?確か聖女の名前がソフィーリアだったはず…………………ってことは状況的に考えてマリクスが彼女の父親でサターシャが母親、そしてリアがソフィーリアのことか?
それにしてもなんで俺の家が分かったんだ?俺は確か家の場所なんて教えてないはずだしなぁ………………まぁ多分、名前で大体分かったのだろう。確かあの村も一応うちの領地だったはずだしね。
「なるほどね…………それで、リアちゃんたちはどこにいるの?とりあえずお礼を言いたいんだけど」
そう言った瞬間、タイミングを見計らったようにドアが開き、リアが笑顔で俺に抱きついてくる。可愛いすぎかよ。
そして先ほどは思考停止してたため抵抗出来なかったが、今は身体強化や聖魔法のフィジカルブーストを使っているため、ギリギリ受け止められた。というか身体強化とフィジカルブースト使っててギリギリってなんだよ!なに?この子常時で聖魔法のバフ系ついてるの?無意識に?流石聖女…………
それはそうと、なんでこの子俺に抱きついてるのかな?さっきも抱きつかれたし当然かのように抱きつかれたから気づかなかったけどこれおかしいよね?まさか俺何かしたの?!これは逃さねぇからなコノヤロウ!貴様に引導を渡したる!的な感じの拘束なの?こんなゆるっゆるの拘束だけどね……………でも出られない!逃げられない!こんな小さい子を泣かせる趣味は俺にはないんだよ……………そして我が母よ。その孫はいつ出来るのかしら。みたいな視線で見るのはやめろ。ニヤニヤするな!
俺がモテてるみたいで悲しくなるからやめて!この子、絶対お礼とかその辺りだろうから!
まぁいいや、なんか疲れた。自問自答してただけだけど。
とりあえず話を進めよう。
「それで母さん、この子のことは今おいとくとして、この子と両親の扱いってどうなるの?自分的には、難民扱いでこの領地に住ませてあげたいんだけど………」と自分の考えを言う。
実際、いくら聖光教会といえど流石に公爵領の首都には手を出せないだろう。まぁそれは多分でしかないから、本当はこの家に住ませてあげたいんだけど流石に無理だろうからね。
そう考えていたのだが、母さんの口から出たのは予想の斜め上を行った。
「とりあえず、リアちゃんの両親は家の執事、メイドとして働いてもらうことにしたわ。この家、すごく大きいのにメイドがほとんどいないでしょう?それで、ちょうどいい機会かと思って。」と、俺の考えにはなかったことを言った。しかし、それは俺にとって……………いや、彼らの安全にとって最もいいだろう。まぁ個人的には、リアを育成してダンジョン攻略の手伝いをしてもらいたいんだけどね。
「それで、リアちゃんの扱いなんだけどね…………」ついに来たか…………流石に両親と離れ離れになることはないだろうけど。そんな考えだった俺の、数億倍はぶっ飛んだ言葉が来るのだった。
「ナノくんの妾にすることになったからよろしくね?流石に貴族じゃないから正妻は無理だけど、ナノくんも将来何人か必要だからね!リアちゃんもいいって言ってるし!」と言われる。
……………は?
はあああぁぁぁぁあっっ?!
嘘だろ?!俺はいつフラグを立てたんだ?!いや嬉しいけど!嬉しいけれどねっ!
可愛いし、将来はたわわになるのはエロゲやってたから知ってるけどね!でもさ?なんで…………なんで俺にフラグが立ったんだよおおぉぉぉ!!
もしかしたらドッキリかもしれないな…………うん!多分そうだ!母さん、かなりお茶目なところあるしね!
そう思いながら、今も抱きついているリアを見る。
すると顔を真っ赤にしながらも小さくコクリ、と頷く。
それってつまり…………………
「俺の平穏どこにいったんだああぁぁぁぁ!!!」
「ナノちゃん!俺、なんて可愛くない!」
そういう問題じゃない!…………………はぁぁ、ほんと、俺の平穏な生活はどこいったんだかなぁぁぁ……………
ふと窓から外を見ると、俺の平穏を壊しそうな不吉さを誇る、この世界では普通の真っ赤な月でちょいうざい顔のうさぎが輝いていた。
これにて『聖女』編は終わります。次は閑話いくつか挟んでから進みますのでよろしくです!
明日からストック祭り始めます。一応毎日投稿します。
あとタイトルガンガン変えてすいません。いい感じのタイトルに定着するまではちょくちょく変わるかもしれませんがよろしくお願いします。
他作品の投稿に関しては出来次第投稿します。
これからもどぞよろしくお願いします!
若干編集しました。